海外にいる人材を雇用をして日本で仕事(報酬を得る活動)をさせるためには、就労ビザを取得する必要があります。海外にいる人材の場合、雇用をする企業が「代理人」として招聘する手続きを行うことができます。これを「在留資格認定証明書交付申請」と言います。本編では、「在留資格認定証明書交付申請」について解説をします。
就労ビザにはどんな種類がある?
日本には「就労ビザ」という在留資格(ビザ)はありません。外国人が日本で働くためには、「就労が認められる在留資格」を取得する必要がありますが、活動目的に合わせて詳細に取得するべき在留資格が決められています。
在留資格(ビザ)とは
「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2021年10月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。
在留資格は下記の一覧表にもあるように、就労ビザだけでも19種類あります。活動内容が変わる場合は、在留資格の変更が必要になります。言い換えると以下に当てはまらない職業には日本では働けないということになります。(※身分系の在留資格があれば在留は可能です)
就労ビザとは
ここまでで、外国籍の方が活動内容に合った在留資格を持っている必要があることを説明しました。とはいえ、19種類も在留資格が列挙されていてどのように判断すればよいか、なかなか分かりにくいと思います。
ここでは、特に混乱しがちな代表的な就労ビザについての説明と、その在留資格で就業可能な業務内容について触れたいと思います。
代表的な就労ビザの例
- 技術・人文知識・国際業務
- 高度専門職
- 特定活動(46号・本邦大学卒業者)
- 特定技能
この他にも「技能」「介護」「興行」といった専門的な在留資格もありますが、ここでは特に似ていて判別の難しい在留資格について説明します。これらの在留資格は、一般的な「サラリーマン」に与えられる在留資格になります。
在留資格毎に活動可能な範囲が異なるだけでなく、それぞれの在留資格を取得するための要件もそれぞれ異なります。以下は、在留資格毎の比較になります。活動内容だけでなく、必要な要件も異なります。
就労ビザの大事なポイントは「誰が」「どこで」「どんな業務内容をするか」の3点が揃っていることになります。これは、ひとつの在留資格の要件を満たしている(在留カードを持っている)からと言って、どんな活動でもできるという意味ではありません。
就労ビザ取得までの流れ
海外にいる人材を招聘するために行う申請は「在留資格認定証明書交付申請」になりますが、そもそも「在留資格認定証明書交付申請」が何なのか、それを取得してどのように日本に入国するのか解説します。
「在留資格認定証明書」とは
日本に適法に在留するためには2つの許可が必要です。
- 日本に入国をさせても良いのかの許可(上陸許可)
- 上陸後の活動内容や身分が適法であるかのステータス(在留資格)の許可
これらの審査を事前に行い問題が無いと認められた申請に対して交付されるのが「在留資格認定証明書」となります。実際の入国は、さらに有効な旅券(パスポート)を所持し、その旅券に査証を受けていることが条件になります。「在留資格認定証明書」が交付されたら、申請人(外国人)の母国にある日本大使館でそれを以て査証の発給を受けます。
ビザ申請~就労開始までの流れ
在留資格の申請を行うタイミングは内定出しをしてから入社(入国)までの間になります。
例えば、短期滞在(いわゆる観光ビザ)で入国し、審査の結果が出る前に就労をさせると資格外活動違反になるため気を付けてください。また、審査期間も3週間~数カ月に及ぶ場合もあるため、申請は計画的に行わなければなりません。
上記の通り、就労ビザの場合は、就労場所や条件が確定し労働契約を締結してから「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
▶参考:出入国在留管理庁『入国・帰国手続き<査証・在留資格認定証明書>』
海外の人材を招聘するための手続き「在留資格認定証明書交付申請」
「在留資格認定証明書交付申請」の具体的な手続き方法について解説致します。
誰がどこで行う申請なのか?
外国人を招聘する場合は、申請人(外国人)本人か雇用をしようとしている機関の職員が申請人の居住予定地、受入機関の所在地を管轄する入管に申請に行きます。
なお、届け出を行っている「取次者」についても、申請を代わって行うことができます。
「取次者」の例として、国人の円滑な受入れを図ることを目的とする公益法人の職員、行政書士、弁護士がなることができますが、一定の研修を受けて登録された人のみになります。
▶出入国在留管理庁:管轄について
いつまでに行うものなのか?
就労ビザの場合の在留資格認定証明書交付申請は、内定が決まったら速やかにかつ入社日までに行います。ただし、実際の入国・就業開始については在留カードの交付を受けてからになります。審査期間は業務内容や企業規模にもより、早いと2週間、時間のかかる申請の場合には半年かかる場合もあります。(申請書に記載する入国予定日までに必ずしも結果が出るとは限りません。)このため、速やかに申請することをお勧めします。ただし、認定証明書には有効期限があります。通常は交付日から3ヶ月以内に入国しなければなりません(※新型コロナウィルス感染症の影響で2022年1月31日発行分までは特例あり)。かなり先に就業開始予定の場合は、すぐに申請をしないほうがよい場合もあります。
当然、不許可が出る場合もあります。この場合は不許可の内容次第では再申請が可能な場合には再申請を行うこともできます。想定以上に時間がかかるため、計画的にかつ早めに準備を進めましょう。
「在留資格認定証明書交付申請」で審査されるポイントは?
就労ビザにおける「在留資格認定証明書交付申請」で審査されるポイントで特に重要な部分は、「活動(業務)内容」「雇用契約内容」「上陸拒否事由該当の有無」になります。
「在留資格認定証明書交付申請」の審査ポイント
入管の審査は「専ら法務大臣の自由な裁量に委ねられ、申請者の行おうとする活動、在留の必要性等を総合的に勘案」して行われるものになります。
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
3 申請内容の信ぴょう性
就労系の在留資格における「在留資格認定証明書交付申請」は、それぞれの在留資格の要件を満たしているかに加え、過去に日本での在留歴のある人であれば、過去の在留状況や申請書類の確認が行われます。在留資格の要件で特に審査されるのが、「業務内容」と「雇用契約の内容(日本人と同等以上の報酬であるか)」になり、不許可の理由として多いものにもこの2項目が挙げられます。
こんな場合は不許可のリスクが高い
就労ビザにおいて不許可の理由に多い事例を挙げます。
不許可のリスクがある事例①:業務内容が在留資格で認められた活動の範囲内ではない
就労ビザには、それぞれ特徴があり働ける業務内容はそれぞれ決まっています。サラリーマンの代表的な在留資格である「技術・人文知識・国際業務」「高度専門職」「特定活動(46号・本邦の大学卒業者)」「特定技能」ではそれぞれ活動可能な範囲が異なってきます。
よくある不許可の例として在留資格『技術・人文知識・国際業務』では在留資格『特定技能』で挙げられる技能的な業務はできません。例えば、レストランでの配膳や調理は原則認められていません。また、工場での単純作業も『技術・人文知識・国際業務』の在留資格で行うことはできませんし、『特定技能』であれば、どんな工場であっても単純作業ができるという訳ではありません。就業できる工場・従事できる作業が決められています。
各在留資格で従事できる業務内容の範囲の例は以下を参考にして下さい。
不許可のリスクがある事例②:雇用契約の内容
明らかに労働基準法を逸脱しているような雇用条件での就労は不許可になります。特に確認がされるのは「日本人と同等以上の報酬」であるかどうかです。不当に安く外国人を雇用することはできません。
「日本人が従事する場合にに受ける報酬と同等額以降の報酬を受けること」の判断は、外国人が就労する日本の機関において同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬を受けるか否かで決まります。他の企業の同種の職種に従事する日本人の平均賃金よりも明らかに低い報酬で就労している場合はこの条件に適合しないものとみなされます。
審査要領で説明されているのはこの程度の内容になりますが、そもそも「労働基準法」などの法律は国籍問わず適用されることになります。労働基準法では国籍を理由にして賃金などの待遇を差別してはならないことが定められています。
下記のポイントを守らなければ、不法就労に該当して罰せられる可能性があります。本当によく注意してください。 その場しのぎで研修計画を作成しても、後に困るのは会社と外国人材です。
- 現場作業を行うことを、正直に申請書に記載する
⇒その際に、「どのくらいの期間」行うのかを明確に「キャリアアッププラン」等で示す。
日本人も同様に行う計画であることをきちんと示す - どのくらいの期間認められるかは、業種や企業規模によって違う
⇒隣の企業で認められても、同じ計画を提出したところで認められない場合もある - 実態通りに申請をする
⇒実際のところよく考えたら「現場作業員」が欲しいのであれば、「総合職採用」をやめて「特定技能」の人員を採用することも検討しましょう。無理して申請をしたところで、採用側も配属先も本人もよいことはない
不許可のリスクがある事例③:過去の在留歴での問題
過去に日本に在留していて、その在留歴がよくない場合には不許可の可能性が高くなります。中でも「申請内容の信ぴょう性」に関わる理由が多くなっています。
以下は過去の在留歴に問題があった場合の不許可の一例です。
- 過去の入国時・在留時に申請した内容と矛盾がある
- 過去の在留状況から「申請内容の信ぴょう性」が感じられない
例えば、在留資格『技能実習』を申請時に「大学在学歴」や「就職歴」が事実とは異なった内容で記載され、その後の他の就労ビザ(例えば在留資格『技術・人文知識・国際業務』や『特定技能』)を申請した際に、記載内容が異なる場合にその理由の説明をしなかった場合、不許可になる可能性が非常に高くなります。
また、何かの理由(在留資格の取消処分、出国命令等)で日本から出国することが求められた場合に、再度申請する際には、過去の在留歴の説明を行うことになります。そもそもの次の在留は問題が無い事の証明を積極的に行わなければ、「申請内容の信ぴょう性」を疑われ続け許可を得られない可能性が高くなります。
「在留資格認定証明書交付申請申請」で必要な書類は?~『技術・人文知識・国際業務』編~
具体的に「在留資格認定証明書交付申請」に必要になる書類について確認してみましょう。
必要書類について ~『技術・人文知識・国際業務』編~
いわゆる高度人材・ホワイトワーカーや翻訳通訳の人材を招聘するためには在留資格『技術・人文知識・国際業務』の申請を行います。海外から招聘する際の必要書類は下記の通りです。
※下記の書類は一例になります。
必要書類 |
---|
・在留資格認定証明書交付申請書 ・写真(4cm×3cm) ・パスポートの写し ・カテゴリーを証明する書類 →前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計票等 ・登記事項証明書 ・直近年度の決算文書の写し ・申請人の学歴・職歴を示す書類(履歴書、学校の卒業証明書、成績証明書等) ・労働条件通知書 ・履歴書 ・採用理由書(業務内容を説明した書類) ・返信用封筒(404円の切手(簡易書留用)を貼付) |
▶出入国在留管理庁『日本での活動内容に応じた資料【在留資格認定証明書交付申請】』
理由書には何を書けばよい?
在留資格『技術・人文知識・国際業務』の場合、業務内容の説明を「理由書」内で説明することになりますが、要件の中でも特に審査官に伝わりにくいと言われているのが下記のポイントです。
No | 審査官に伝えにくいポイント |
---|---|
1 | 学術的素養を背景した業務であるか |
2 | 業務内容が十分にあるか |
3 | 勉強内容と業務の関連性があるか |
4 | 申請人を採用した背景について(業務を遂行するだけの能力、語学力等を持っているか) |
5 | 再申請の場合、前回の不許可理由は払拭されたか |
在留資格の審査は書面審査が原則であり、上記の内容を出された書類から判断します。
例えば、「内定通知書」や「雇用条件書」などを見て、申請人が従事する業務が「学術的素養を背景にした業務」に該当するかどうか、判断できるかというと困難な場合が多いです。このような場合には、何か補足する資料が必要になります。
「理由書」では疎明資料だけでは伝えにくいポイントを説明していくイメージになります。そして、そのポイントこそが審査官が知りたい内容になります。可能であれば、理由書の他に別途疎明資料などを添付する場合はその細く説明を書くことでより説得力が増します。
No | 理由書に書く内容 | 審査官に伝えにくいポイント |
---|---|---|
1 | 申請人について | ・どういう経歴を経たのか(学歴の説明) ・学校でどのようなことを専攻したのか(業務内容との関連性) ・保有しているスキルについて ・日本語能力について (業務内容に日本語能力が必要な場合は、従事可能であることをアピール) |
2 | 業務内容について | ・具体的にどのような業務を行うのか -1日、1週間、1年単位等の軸で分析 ・学術的素養とした業務内容がどの程度あるか ・研修計画やキャリアアップ計画について |
3 | 再申請の場合、前回の申請について | ・再申請の場合、前回の不許可理由は払拭されたか -何を指摘され、どのように解決したのか |
『理由書』は長く書けばよいものではありません。文章の上手い下手というよりも、審査官が知りたいと思うポイントを伝えることが大事です。
その他の代表的な就労が可能な在留資格について
在留資格『技術・人文知識・国際業務』以外については、下記の記事を参考してください。
▶在留資格『特定活動(46号・本邦の大学卒業者)』
▶在留資格『高度専門職』
▶在留資格『特定技能1号』
まとめ
以上、「在留資格認定証明書交付申請」について説明しました。
「在留資格認定証明書交付申請」は海外にいる外国人を招聘するために行う申請になります。就労系の在留資格の場合は内定出し・承諾を経てから、(主に)会社が代理人となって申請を行います。審査のポイントは、業務内容や契約内容になってきます。過去に在留歴がある人の場合は、その時に問題がある在留をしている場合には審査をされる場合もあります。
【行政書士からのアドバイス】
在留資格認定証明書交付申請は、雇用をする受入機関の規模や業務内容などによって審査の期間が約2週間~半年と大きく変わってきます。また、そもそも外国にいる人材を採用するための方法が分からず不安なことも多いかと思います。当事務所では外国人雇用を採用~ビザ申請までサポートしています。ご不明なことはお問合せ下さい。