在留資格『技術・人文知識・国際業務』はどんなビザ?~抑えるべき3つのポイント~

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外国籍サラリーマンの方が取得する就労ビザのなかで『技術・人文知識・国際業務』という在留資格は最も割合が大きいものになります。日本に在留している外国人の約10%の方がこの在留資格を持たれています。では、この在留資格ではどのような方が取得できるビザなのかを解説したいと思います。

在留資格とは

「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2021年10月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。

在留資格の切替のイメージ

例えば、上記の方の場合、日本語学校の学生の間は「留学」ビザで活動します。その後、料理しになった場合は「技能」というビザに切り替えなければなりません。また、独立開業してレストランの経営者になった場合は「経営・管理」ビザを取得します。もし、将来、日本への永住を決意し一定の要件を満たしているようであれば、「永住者」ビザを取得することもできます。

在留資格の一覧は下記になりますが、言い換えると以下に当てはまるものがない場合は、日本での滞在はできないということになります。

在留資格の一覧

在留資格は、大きく3つのポイントから構成されています。

就労ビザのポイント
  • 誰が
  • どこで
  • どのような業務内容をおこなうのか

では、『技術・人文知識・国際業務』がどのような在留資格であるかをこの3つのポイントから説明していきます。

在留資格『技術・人文知識・国際業務』とは


『技術・人文知識・国際業務』で認められる活動範囲は下記のように定められております。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学、その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務部又は外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動

もっとざっくりに説明をすると、『技術・人文知識・国際業務』はこのような在留資格になります。

会社等において 学校等で学んだこと/実務経験を活かした 知識や国際的な背景(言語や外国の感性等)を要する(「単純作業」、「訓練で習得する業務」、「マニュアルがあれば遂行可能務」等を除く)仕事をすることを目的とした在留資格(ビザ)

『技術・人文知識・国際業務』という少し長い在留資格名ですが、もともとは『技術』と『人文知識・国際業務』と分かれていました。日本の企業では部門をまたぐ配置転換も多々想定されることもあり、今では『技術・人文知識・国際業務』とひとつの在留資格になっています。(例えば、研究者→マーケティング部への異動や、エンジニア→セールスエンジニア(法人営業)などの異動です。)

『技術・人文知識・国際業務』の在留期間は5年、3年、1年、3か月で、更新が認められれば継続して日本に在留することができます。

また、要件を満たせば家族の帯同も認められます。

それでは、詳しく解説をしていきます。

ポイント①「誰が」:どのような人が申請できるのか

『技術・人文知識・国際業務』が認められる外国人は、以下を満たしている人になります。

<strong><「技術」・「人文知識」の業務を行う場合></strong>
  • 従事しようとする業務について次のいずれかに該当し、必要な知識を修得していること
    • 当該知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと
    • 当該知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該終了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと
    • 10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
<strong><「国際業務」の業務を行う場合></strong>
  • 申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は、感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれかに該当していること
    • 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。
    • 翻訳、通訳又は語学の指導にかかる業務に従事する場合は、大学を卒業しているもの

翻訳通訳業務の場合は、3年の実務経験もしくは大学卒業者になります通訳技法を専攻していない専門卒による未経験の翻訳通訳業務は原則NGです。

上記を見ていただければ分かるように、外国人に必要な要件は「大学を卒業している」・「日本の専門学校を卒業している」・「10年の実務経験がある」方になります。翻訳通訳業務でない場合、勉強したことと業務内容がリンクしている必要があります。大卒以上の場合は比較的緩やかに見られますが、専門学校卒業の場合は厳しく関連性を審査されることになります()。

「専修学校の専門課程における外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定に関する規程(令和5年文部科学省告示第53号)」第2条に定める文部科学大臣による認定を受けた専修学校の専門課程の学科を修了した者(以下「認定専修学校専門課程修了者」という。)については、企業等と連携して実習等の授業を行っていることや、日本社会に関する理解を促進する環境が整備されていることなどを
認定要件とする専門課程を修了し、質の高い教育を受けたことにより、修得した知識を応用できると考えられることから、専攻科目と従事しようとする業務の関連性について、柔軟に判断することとしています。

出所:出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」

翻訳通訳業務の場合は、その実務経験が「3年以上」もしくは「大学卒業」以上になります。専門卒の方を「うっかり」翻訳通訳業務で申請することはよくあることなので注意が必要です。

上記は『技術・人文知識・国際業務』の直接の要件(上陸許可基準)になりますが、要件以外のところでの注意すべき点もあります。留学生から就職のために在留資格を変更する人はさらに注意が必要です。
例えば、「出席率が著しく低い(だいたい80%を下回っている)」「アルバイトを週28時間以上している」場合は、上記の要件を満たしていても留学生の時が「在留不良」であったとみられて不許可になってしまう場合もあります。

ポイント②「どこで」:どのような場所で働くのか

『技術・人文知識・国際業務』の在留資格では、働く場所を「本邦の公私の機関」と示しています。さらに、この「本邦の公私の機関」と「契約」を結んでいる必要があります。
「本邦の公私の機関」には、一般の法人のほか、国、地方公共団体、独立行政法人、会社公益法人、任意の団体も含まれます。また、日本に事務所、事業所等を有する外国の区に、地方公共団体(地方政府を含む)、外国の法人等も含まれます(出所:『入管法の実務』山脇康嗣)
また、個人事業主に雇われることも含みます。

「契約」には雇用契約のほか、業務委託、委任、属託等が含まれます。複数の機関との契約でもよいですが、いずれの場合も「継続的な契約」であることが必要です。つまり、複数社と契約をするフリーランスであっても、契約内容が継続的なものであれば許可され得るということになります。また、派遣会社と雇用契約を結び、派遣先で勤務することも可能です。

『技術・人文知識・国際業務』は、企業との継続的安定的な契約に基づき労働することが前提のため、雇用する企業は必要なライセンスを取得して合法的に営んでいる必要があり、またビジネスが安定していることが求められます。業績が不振(特に債務超過)の場合、申請時に審査の過程で業績が改善する見込みを問われることもあります。

ポイント③「何をするのか」:どのような業務ができるのか

『技術・人文知識・国際業務』の在留資格で最も判断が難しいのはこの部分になります。この在留資格で可能な活動は『自然科学の分野若しくは人文科学の分野い属する技術もしくは知識を必要とする業務』または『外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動』とされていますが、非常に抽象的な表現をしています。
分かりやすく表現すると「単純作業」のようなマニュアルを読み訓練をすれば習得できる業務はできません。例えば、工場で生産ラインに入って行うような単純作業、飲食店での配膳・接客・調理の業務、伝票整理などの事務作業や農作業はできません。また、一見すると高度な業務内容に見えるものでも「技能」に位置づけられる業務(訓練によって習得できる業務)で、例えば自動車整備(自動車整備士3級レベル)や、フライス盤の操作による金属加工、精密機器の保守メンテナンスも該当しない場合があります。

できる業務としては、以下のようなものが代表的な例になります。

<strong><技術></strong>
  • システムエンジニア
  • 精密機械器具や土木・建設機械等の設計・開発
  • 生産管理
  • CADオペレーター
  • 研究者
<strong><人文知識></strong>
  • 法人営業
  • マーケティング
  • 企画・広報
  • 経理や金融、会計などの紺たる譚と業務
  • 組織のマネージャー
<strong><国際業務></strong>
  • 翻訳通訳
  • 語学の指導
  • 海外取引業務
  • 海外の感性を活かしたデザイン
  • 商品開発

ただし、上記の業務を修得する場合に研修期間に現場で労働を行うことは十分に想定されます。その場合は、出入国在留管理庁においてもガイドライン「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格で許容される実務研修について」として、同期となる日本人も同様にキャリアステップの一環として研修に入る場合は、一時的な実務研修を行うことを認めると発表しています。
当然ですが期間限定である必要があるということと、(実務上)どの程度まで研修期間として認められるかは、業種・企業規模によってまちまちですので一概には言えません。実際に1年を超える実務研修の内容で申請した場合でも許可は出ていますが、長期にわたる研修期間の場合、立証が不十分な場合は不許可になりやすいのも事実ですので、企業として対応をが必要な場合は申請前に専門家に相談されることをお勧めいたします。

そして、最も大事なこととしてはこれらの業務内容を『日本人と同等以上の報酬で行うこと』です。これは労働基準法に定められています。

業務内容を一歩掘り下げてみましょう

在留資格『技術・人文知識・国際業務』について「誰が」・「どこで」・「何をするのか」の3つのポイントから説明してきました。実際の審査における「許可」・「不許可」の事例からイメージを膨らませてみましょう。
許可・不許可の事例は出入国在留管理庁HPに掲載されています。

許可事例(ガイドラインより抜粋)

本国において電気通信工学を専攻して大学を卒業し、同国にある日本の電気通信設備工事業を行う会社の子会社に雇用された後、本邦にある親会社との契約に基づき、月額約24万円の報酬を受けて、コンピュータ・プログラマーとして、開発に係るソフトウェアについて顧客との仕様の調整及び仕様書の作成等の業務に従事するもの。

本国において電気力学、工学等を専攻して大学を卒業し、輸送用機械器具製造会社に勤務した後、本邦の航空機整備会社との契約に基づき、月額約30万円の報酬を受けて、CAD及びCAEのシステム解析、テクニカルサポート及び開発業務に従事するもの。

本国において経営学を専攻して大学を卒業した後、本邦の食料品・雑貨等輸入・販売会社との契約に基づき、月額約30万円の報酬を受けて、本国との取引業務における通訳・翻訳業務に従事するもの

観光・レジャーサービス学科において、観光地理、旅行業務、セールスマーケティング、プレゼンテーション、ホスピタリティ論等を履修した者が、大型リゾートホテルにおいて、総合職として採用され、フロント業務、レストラン業務、客室業務等についてもシフトにより担当するとして申請があったため、ぎょうむないようの詳細を求めたところ、一部にレストランにおける接客、客室備品オーダー対応等「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当しない業務が含まれていたが、申請人は総合職として雇用されており、主としてフロントでの翻訳・通訳業務、予約管理、ロビーにおけるコンシェルジュ業務、顧客満足度分析等を行う者であり、また、ほかの総合職採用の日本人従業員と同様の業務であることが判明したもの。

不許可事例

経済学部を卒業した者から、会計事務所との契約に基づき、会計事務に従事するとして申請があったが、当該事務所の所在地には会計事務所ではなく料理店があったことから、そのことについて説明を求めたものの、明確な説明がなされなかったため、当該事務所が実態のあるものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動を行うものとは認められないことから不許可となったもの。

⇒(不許可理由)料理屋では許可されないからと言って、許可されそうな業種を装って申請することは絶対にNGです理由はともあれ、虚偽申請はしてはいけません。

教育学部を卒業した者から、弁当の製造・販売業務を行っている企業との契約に基づき現場作業員として採用され、弁当加工工場において弁当の箱詰め作業に従事するとして申請があったが、当該業務は人文科学の分野に属する知識を必要とするものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」の該当性が認められないため不許可となったもの。

⇒(不許可理由)弁当の箱詰め作業は「学術的素養を背景にした業務」と言えません。単純労働は「技術・人文知識・国際業務」では認められません。

工学部を卒業した者から、コンピューター関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき、月額13万5千円の報酬を受けて,エンジニア業務に従事するとして申請があったが、申請人と同時に採用され、同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額18万円であることが判明したことから、報酬について日本人と同等額以上であると認められず不許可となったもの。

⇒(不許可理由)月額13万5千円は、最低賃金を下回っている可能性があるうえに、そもそも「日本人と同等以上」の報酬である必要があります。

まとめ

以上、在留資格『技術・人文知識・国際業務』について説明致しました。
この在留資格は、大学等で学んだ経験をもとにした業務内容(≠単純作業)を企業等と契約して、日本人と同等以上の報酬を受けて行う活動内容の場合に認められるものになります。
業務内容に対しての定義が非常にあいまいなため、その業務が専門性のあるものかどうかを判断するのに難しい場合があります。サラリーマンであればどんな業務にでも認められるわけではないので注意が必要です。

【行政書士からのアドバイス】
『技術・人文知識・国際業務』の在留資格は、どんな業務内容でよければ許可が出るのか非常に分かりずらいですよね。
単純労働はダメなのは分かるけれども、技能と技術の見分けはなかなか判断は難しいです。
当事務所では過去の許可事例からアドバイスをすることもできます。不安な場合はご相談下さい。

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