【本当は教えたくない!?】『技術・人文知識・国際業務』のビザ申請の難易度を決める要素について

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在留資格の審査は、「許可」・「不許可」の結果がついてきます。要件を満たしていると思って申請をしても「不許可」になることは多いにあります。許可を得るためのポイントはブラックボックスとなっており、明確な基準は分かりません。そのため、「製造業は不許可になりやすい」「ITエンジニアだと許可が出やすい」「飲食店はダメと聞いた」など、根も葉もない噂が蔓延しています。
しかし、公式に発表されている「ガイドライン」開示請求をすることで入手が可能な「審査要領」を読み込むことで審査傾向が見えてきます。本編では、『技術・人文知識・国際業務』の難易度を左右しているポイントについて解説致します。

在留資格『技術・人文知識・国際業務』とは

『技術・人文知識・国際業務』という少し長い在留資格名ですが、もともとは『技術』と『人文知識・国際業務』と分かれていました。日本の企業では部門をまたぐ配置転換も多々想定されることもあり、今では『技術・人文知識・国際業務』とひとつの在留資格になっています。(例えば、研究者→マーケティング部への異動や、エンジニア→セールスエンジニア(法人営業)などの異動でも一つの在留資格で対応ができるようになりました。)

そもそも在留資格とは

「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2022年2月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。

在留資格の切替のイメージ

在留資格『技術・人文知識・国際業務』は、29種類の在留資格のうちの1つです。以下のように、在留資格は「活動に係るもの(就労が認められるものとそうでないものがあります)」、「身分や地位に基づくもの」に大別できます。『技術・人文知識・国際業務』は就労が認められる活動内容に係る在留資格になります。そして、これらの在留資格はどれでも自由に選ぶことはできず、要件を満たしていなければ申請することはできません。
特に活動にかかる在留資格の場合、この要件は「誰が」「どこで」「どのような活動をするのか」の3つの要素に分解されます。

『技術・人文知識・国際業務』の要件について

在留資格『技術・人文知識・国際業務』はそもそもどんな在留資格なのかというと、出入国在留管理及び難民認定法では以下のように定められています。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野もしくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動

出入国在留管理及び難民認定法

そして、この在留資格を取得できる人については、以下に該当する人になります。

<「技術」・「人文知識」の業務を行う場合>
  • 従事しようとする業務について次のいずれかに該当し、必要な知識を修得していること
    • 当該知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと
    • 当該知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該終了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと
    • 10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
<「国際業務」の業務を行う場合>
  • 申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は、感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれかに該当していること
    • 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。
    • 翻訳、通訳又は語学の指導にかかる業務に従事する場合は、大学を卒業しているもの

翻訳通訳業務の場合は、3年の実務経験もしくは大学卒業者になります通訳技法を専攻していない専門卒による未経験の翻訳通訳業務は原則NGです。

つまり、『技術・人文知識・国際業務』の在留資格はざっくりと解説するこのような在留資格と言えます。

会社等において 学校等で学んだこと/実務経験を活かした 知識や国際的な背景(言語や外国の感性等)を要する(「単純作業」、「訓練で習得する業務」、「マニュアルがあれば遂行可能務」等を除く)仕事をすることを目的とした在留資格(ビザ)

『技術・人文知識・国際業務』ビザの難易度を左右するチェックポイントについて

まずはじめに、チェックポイントは公表されていないものも含み、日ごろの活動の中で体感で感じている内容も含まれます。
実際の審査で用いられるチェックポイントではないことを予めご了承ください。

まずは大枠の大前提の考え方

就労ビザの大事なポイントは「誰が」「どこで」「どんな業務内容をするか」の3点が揃っていなければなりません。そして、これらのポイントは「同じレベル」で審査結果に影響してくると言えます。つまり、この3つの要素に差はなく等しく重要ということになります。そして、当然ですがどれか一つの要素でも欠けると不許可となります。

また、これらの3つのポイントはさらに要素によって細分化することができますが、その細かい要素のなかでも絶対に満たしていなければならないポイントもあります。例えば「法令順守」のポイントについては、1つでも欠くことがあるとその他の要素を満たしいたとしてもやはり「不許可」となり得ます。

まずは、「誰が」「どこで」「どんな業務内容をするか」を等しく気を付けなければならないということ、「これを満たさなければ他がどんなによくてもダメ」というポイントがあるということを理解してください。

ビザの難易度を左右するチェックポイントについて

No不許可率を上げる要素ランク
1企業規模カテゴリー1,2:◎
カテゴリー3,4:○
2学術的素養を背景した業務の在留期間中に占める割合
※研修期間なども考慮
81%以上が該当:○
61~80%が該当:△
60%以下が該当:×
3既に同一ポジションの外国人がいる
4一度不許可になった該当する場合:△
該当しない場合:○
5学歴母国の大卒以上:○
専門卒以上:△
10年の実務経験:△
6勉強内容と業務の関連性合っている:○
合っていない(大卒):△
合っていない(専門卒):×
7日本語能力N1~N3:○
N4,5:△※業務内容次第
8過去に難民認定申請をしたことがある
※今はしていないことが前提
1年以上前にした:△
最近した:×
該当しない場合:○
9素行不良(出席率が低い、成績不良、オーバーワーク)該当する場合:×
該当しない場合:○
10経歴詐称該当する場合:×
該当しない場合:○

◎=難易度を下げる要素、○=問題なし、△=難易度を上げる要素、×=一つでもあると不許可

上記のポイント表をチェックし、まず一つでも「×」がつくと不許可となります。全て「○」以上であれば、添付書類がきちんと整っていれば概ね不許可になることは無いのではないでしょうか。
注意が必要なポイントとして、黄色の太文字部分「学術的素養を背景した業務の在留期間中に占める割合」と「勉強内容と業務の関連性」は審査官の裁量権で左右される部分になります。提出した書類からこれらがのポイントを満たしていることが認められなければ許可を得られる可能性が高くなりますし、逆に読み取れない場合には不許可となる可能性があります。

チェックポイント① 企業規模

カテゴリー1,2,3,4とあるように、カテゴリー1が最も企業規模が大きくまた経営もより安定していると入管は捉えています。カテゴリー1や2の場合、審査は簡略化されます。一方で、カテゴリー3,4は細かく審査がされる傾向があります。
カテゴリーによって提出する書類の数が異なります。このことからも、カテゴリー3,4では審査がより厳しくなることがうかがえます。

チェックポイント② 学術的素養を背景した業務の在留期間中に占める割合

『技術・人文知識・国際業務』で認められない業務内容としては「技能」に該当する業務(在留資格「技能」「技能実習」「特定技能」「介護」)に該当するような業務は『技術・人文知識・国際業務』では行うことはできません。このほか、単純作業や繰り返し訓練することで習得できる業務、マニュアルを見ながら作業することで習得できる業務は認められない業務となります。大学や専門学校で勉強しなければ業務が務まらないことが前提となります。

新卒採用の場合、上記の業務に当てはまらないような「現場研修」などがある場合もあります。キャリアアップのための一定期間の研修はガイドラインで発表されているように認められます。ただし、在留期間の一部の期間であり、その研修計画やキャリアアッププランについて入管が認めなければ、ビザも不許可となります。

また、スキルアップした管理職クラスやベテランであっても、付随業務で学術的素養を背景とした業務を行うことは十分にあると思います。そのような場合でも、日本人も含め国籍問わず同様のポジションの人たちがその業務に付随的に関わる場合には認められる場合があります。
ただ、この判断のさじ加減が繊細で難しいポイントとなります。

チェックポイント③ 既に同一ポジションの外国人がいる

この場合、業務内容(チェックポイント②)は既に入管から許可を得ているためクリアしていることになります。そのため、その業務内容を行う人員を増やす必要があることを説明できれば問題ありません。例えば業務量が増えている背景(売上が上がっている)や異動や退職による欠員補充といった根拠を説明するだけになります。
業務内容が審査の結果認められているというのは非常に強いポイントです。

チェックポイント④ 一度不許可になった

一度不許可となった場合、審査が厳しくなるため難易度は上がります。不許可となった際の理由をきちんとつぶしたうえで再申請を行います。審査官に指摘された事項を一つでも解決できていない場合は許可を得られません。

チェックポイント⑤ 学歴

チェックポイント⑥にも関係する内容になりますが、大学卒以上の場合は勉強内容と業務内容の関連性を比較的緩やかに審査されるのに対し、専門卒の場合は厳密に勉強内容と業務内容の関連性が審査されます。これはガイドラインでも公表されている内容になります。(参考:出入国在留管理庁『「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について』

※日本の大卒の場合、他の在留資格の検討も可能な場合もあります。

チェックポイント⑥ 勉強内容と業務の関連性

基本的には従事しようとする業務に必要な技術又は知識に係る科目を専攻していることが必要であり、そのためには、大学・専修学校において専攻した科目と従事しようとする業務が関連していることが必要です。しかし、大学や一部の認定を受けた専門学校については比較的緩やかに審査されますが、それ以外の専門卒の場合学んだことの半分以上の科目で関連する業務内容に従事していることが求められます。1,2科目程度しか関連していない場合には、不許可のリスクはかなり高くなります。

※2024年2月末に専門学校で学んだ内容と業務内容の関連性について変更がありました。特別な認定を受けた専門学校を卒業した留学生については、大卒者同様に勉強内容と業務内容の関連性については柔軟に判断されることになりました。

ただし、これについては「関連性があるかどうか」について判断するのはあくまで入管の審査官です。科目名だけでは関連性を判断してもらえない場合もあり、その場合にはどのようなことを学んだのかをしっかりとアピールする必要があります。

チェックポイント⑦ 日本語能力

これは業務内容次第にもなりますが、業務内容に「翻訳通訳」の要素がある場合には、日本語能力があることを説明をする必要があります。一つの指標として日本語能力検定があります。翻訳通訳でなくても、日本人とのコミュニケーションを要する業務内容(例えば営業など)である場合に、日本語が十分に話せないとなると申告している業務内容が本当に行われるのかどうかを疑われてしまいます。
また、実際の日本語能力があっても日本語能力検定などの指標がない場合、「業務を遂行するだけの日本語能力を有している」ということを説明する必要がある場合もあります。

もちろん、日本語を必要としない職場環境や業務内容である場合には日本語能力が原因で不許可となることはありません。

チェックポイント⑧ 過去に難民認定申請をしたことがある

これは申請時点で申請中でないことが前提になります。
現在申請中の場合は『技術・人文知識・国際業務』への変更はまず認められません。また、過去にしたことがあるというケースのほとんどが現在は母国にいるケースが主になりますが、1年以内に申請をしていた場合(帰国してすぐの申請)なども不許可となります。

一年経過後の場合、難民認定申請が明らかな虚偽申請だった場合は反省していることを入管に伝える必要があり、この分だけ申請は難しくなると言えるでしょう。

チェックポイント⑨ 素行不良(出席率が低い、成績不良、オーバーワーク)

これは留学生からの切替の場合は注意すべき点になります。
留学生は「教育機関で勉強する」ために来日しています。そのため本来の目的である学業がおろそかになっている場合は在留不良として、新しい在留資格の取得ができません。出席率が低い場合、病気等の理由があれば認められる場合もありますが、オーバーワークの場合についてはどんな事情があってどんなに反省をしても認められることはありません。

チェックポイント⑩ 経歴詐称

入管はそもそも申請書類の「信ぴょう性」を疑っています。記載内容が疑わしい申請書類については内容の審査をするまでもなく「不許可」となります。
これは特に過去に技能実習として入国する際に経歴が間違っていて、『技術・人文知識・国際業務』として再入国する際にそれが発覚して「不許可」となる場合がよくみられるケースになります。

経歴詐称の場合、かなり入念な準備を行うことで許可を得られる事例もありますが、かなり厳しい申請になることには違いありません。

“難しい申請”はどのように対応すべき!?

もしこれから申請しようとしている内容が「難しい申請」にあたってくる場合、なるべく不許可になることを避けるためにも難易度を避けるためにも予めの対応が必要です。

どのような申請が難しいのか

「難しい申請」というのは、上記のチェックポイントにおいて「△」が一つでも入ってくる場合を指します。「×」が一つでもある場合はほとんどのケースで「不許可」になると思ったほうがよいです。「難しい申請」というのは、不許可のリスクが高い申請となり、不許可を減らすために対策が必要となります。例えば、「△」項目を「○」になるように改善をします。改善できない場合は、要件を満たしていることを積極的にアピールするために多くの疎明資料を準備するなどの対策が必要です。その代表的な書類が「理由書」になります。

また、不許可を1回でももらってしまうと不許可の理由次第では再申請は可能ですが、申請の難易度が上がります。また、在留資格の審査は数カ月に及ぶこともあり時間もかかります。「難しい申請」の場合は無理せず専門家に相談されることをお勧め致します。

“理由書”を書く際に意識することとは

「理由書」では疎明資料だけでは伝わりにくいポイントを説明していきます。前に挙げた審査官に伝わりにくいポイント」について説明していくイメージになります。その際に、文章の構成として下記を意識すると自然の流れになります。文章量の目安は読む人のことを考えるとA41枚~長くても3枚程度に収める必要がありますが、最も大事なことは伝えたいことが視覚的に伝わって、かつすべてに目を通してもらえる文字数が望ましいと思います。

文章力は必要なく、以下のような内容を盛り込むように意識するだけでも審査官が知りたい内容になるはずです。また、説明に別途疎明資料などを添付する場合はその資料について説明を書くことでより説得力が増します。

No理由書に書く内容審査官に伝わりにくいポイント
1申請人について・どういう経歴の人物なのか(学歴・職歴の説明)
・学校でどのようなことを専攻したのか(業務内容との関連性)
・保有しているスキルについて
・日本語能力について
(業務内容に日本語能力が必要な場合は、従事可能であることをアピール)
2業務内容について・具体的にどのような業務を行うのか
 -1日、1週間、1年単位等の軸で分析
・学術的素養とした業務内容がどの程度あるか
・研修計画やキャリアアップ計画について
3再申請の場合、前回の申請について・再申請の場合、前回の不許可理由は払拭されたか
 -何を指摘され、どのように解決したのか

『理由書』は長く書けばよいものではありません。文章の上手い下手というよりも、審査官が知りたいと思うポイントを伝えることが大事です。

それと最も大事なことは、虚偽の申請は絶対にしてはいけません。一度起こした矛盾を回収することは、はじめから正しい申請をして得ることの量力の何倍も大変なことになります。

まとめ

以上、在留資格『技術・人文知識・国際業務』のビザ申請における難易度・不許可リスクについて解説致しました。今までに聞いてきた噂が間違っていたこと、お気づきになりましたでしょうか。”明確”とまではいかないですが、ビザの考え方やポイントはきちんとあります。この解説が少しでもお役に立てると幸いです。

【行政書士からのアドバイス】
不許可のリスクが高い申請の場合、入管のHPに書かれている必要書類以外にも、疎明資料や理由書を準備しなければならない場合も多くあります。もし、このままでは不許可になるのではないかと不安に思われる場合には、事前にご相談いただくことで解決策を導けるかもしれません。お気軽にご相談下さい。

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