【特定技能・宿泊業】ホテル・旅館で特定技能人材を雇用するためのビザ申請について

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宿泊業(ホテル・旅館)では、在留資格『特定技能1号』を持つ人材を雇用することができます。宿泊分野は政府の目標である訪日外国人旅行者増加に向けて人手不足が生じることが予測されています。以前より、通訳翻訳が可能な高度人材の雇用も行われていた分野でしたが、高度人材よりもより幅広く柔軟に現場業務に従事できるのが特定技能の特徴です。本編では、特定技能人材を雇用するまでの流れと在留資格(ビザ)の申請について説明します。

宿泊業で特定技能人材を雇用する

まずは、在留資格や特定技能について、また採用活動~就業開始までの流れを確認してみましょう。

在留資格『特定技能1号』とは

特定技能とは
  • 特定技能1号:特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けと在留資格
  • 特定技能2号:特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

特定産業分野(12分野):介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食
※特定技能2号は下線部の2分野のみ受入可

特定技能は、冒頭にも説明したように一定水準以上の技能や知識を持ち、最低限生活や業務に必要な日本語能力を持った外国人を対象に、決められた産業で限定された業務内容を行うことができる在留資格です。

よく比較をされる在留資格『技能実習』での実績や反省をもとに、様々な工夫がされた制度になっています。そのため、他の在留資格よりも求められる要件は細かく、当然、すべてを満たさなければなりません。
特に他の在留資格と異なる部分として、『特定技能』では受入前に特定技能人材の公私の生活を支える「支援計画」を作成し、それをもとにサポートを行うことが挙げられます。「支援計画」では、具体的には入国から就業までの私生活のサポートや、また日本語学習の機会や日本文化になじむための補助、定期的な面談や相談・苦情の対応などを行います。このため、自社でできないと判断した場合は「支援計画」を行うための別機関である「登録支援機関」(全国にある民間企業)に実行を委託することもできます。

「特定技能」が複雑と言われる理由で「支援計画」以外の部分としては、入管に関する法令(出入国管理及び難民認定法)以外にも、労働関係法令、租税関係の法令など遵守できているか確認すべき法令の範囲が広く、そのため申請時の提出書類が多いことも挙げられます。
具体的には、以下の大枠4点の基準から審査がされることになります。

特定技能人材を雇用するために満たすべき基準
  • 特定技能外国人が満たすべき基準
  • 受入機関自体が満たすべき基準
  • 特定技能雇用契約が満たすべき基準
  • 支援計画が満たすべき基準

在留期間は、『特定技能1号』の場合は「4か月」「6ヶ月」「1年」で通算で上限5年の在留となります。一方、『特定技能2号』は「6ヶ月」「1年」「3年」が与えられ、更新をし続ければ「永住者」ビザの申請も将来的には可能です。

また、家族の帯同は『特定技能2号』の場合は認められます。『特定技能1号』はもともと『家族滞在』ビザなどで在留していたご家族がいるような場合を除き、基本的には認められません。

在留資格『特定技能1号』を申請するまでの流れ

『特定技能』人材を雇用するまでの流れ、また雇用後の流れは下記の通りになります。他の在留資格と異なり『特定技能』特有のステップもあります。

やること説明
①業務内容の要件確認「特定技能」で認められる業務内容であるかを確認
②事業所の要件確認就業場所が①で確認した業務内容を行うことができることを確認
③人材の要件確認「特定技能」人材に必要になる資格などを確認
④求人票の作成①~③で確認した要件を満たすように求人票を作成
⑤内定内定出し・内定承諾を行い、雇入れる人材を確定
⑥支援計画書の作成特定技能人材の公私の生活をサポートするための計画を策定
⑦事前ガイダンス特定技能人材に対し、就業前のガイダンスを実施
⑧協議会入会ビザ申請前に分野別に設けられた協議会に入会
⑨ビザ申請必要書類を収集、申請書の作成、入管へ申請
⑩雇用後の届け出日本人と同様に、雇用保険・社会保険等の手続き
⑪四半期毎の報告入管に対し、四半期ごとに特定技能人材に関する報告
⑫ビザの更新在留期限前にビザの更新手続き
⑬支援計画の実施
※随時
「支援計画」に則って、特定技能人材をサポートを行う

特定技能の場合、他の在留資格(特に就労ビザ)と異なる点としては、「業務内容」「働く場所」「人材」の要件をきちんと満たしていることが確認するだけでなく、「支援計画書の作成」・「事前ガイダンス」を行いこれから特定技能人材として日本で生活するためのフォローを含めた準備を行います。ビザ申請後も、協議会の入会や定期・随時報告を行わなければならないのも特徴です。

宿泊業分野で特定技能人材を雇用するためのポイント

特定技能人材を雇用するためには、様々な要件を満たす必要があります。特定技能の場合、満たすべき要件は「受入企業」「業務内容」「人材」「雇用契約」などでそれぞれ定められています。ここでは、大きなポイントについて説明します。

受入企業側のポイント

宿泊業で特定技能人材を受け入れることができる事業所は、細かく定められたルール(要件)を全て満たしている事業所になります。

受入企業が満たす必要のある要件

宿泊業の一番のポイントは、 旅館業法に規定された「旅館・ホテル営業」の許可を受けている事業所になります。また、雇用契約の内容法令順守の体制が整っていること、特定技能人材の私生活を含めたサポート体制(支援計画の遂行)なども求められます。

さらに、雇用契約の内容や労働関係法令・社会保険関係法令・租税関係法令など法令順守の体制が整っていること、特定技能人材の私生活を含めたサポート体制(支援計画の遂行)なども求められます。この他にも特定技能は受入ができない事業者について、欠格要件が定められています。特に特定技能で特徴的なものに、過去1年以内に非自発的離職者(解雇やリストラ等)を行っていないことや、特定技能人材・技能実習生の行方不明者を会社の責任で発生させている場合は受け入れることができません。

また、宿泊業に限っては直雇用に限定されます。

項目ポイント
受入機関の条件旅館・ホテル営業の形態かつ以下の条件を満たすこと
・ 旅館業法に規定する「旅館・ホテル営業」の許可を受けていること
・ 風俗営業法に規定する「施設」(ラブホテル等)に該当しないこと
・ 特定技能外国人に対して風俗営業法に規定する「接待」を行わせな
いこと
待遇・日本人と同等以上の給与
・希望があった場合の休暇取得許可
・雇用契約終了時の帰国費用の支弁(特定技能外国人が負担できない場合) 等
法令順守・労働、社保、租税ほか関係法令順守
・1年以内に非自発的離職や行方不明者を発生させていないこと
・過去5年以内に出入国管理及び難民認定法や労働関係法令に違反していないこと(行政処分の有無を問わない)
・過去5年以内に 禁錮以上の刑に処せられていないこと
・過去5年以内に、暴力団関係法令、刑法等に違反し、罰金刑に処せられていないこと
・過去5年以内に 社会保険各法及び労働保険各法において事業主としての義務に違反し、罰金刑に処せられていないこと
・入国前/在留中に関して不当な費用徴収や財産管理に関する契約を特定技能人材と交わしていないこと
・支援体制の整備(登録支援機関へ委託も可)等
協議会国土交通省が組織する「協議・連絡会」への加入
※詳細については後で解説
雇用形態直接雇用(フルタイム)のみ
※受入れ上限人数 53,000人

宿泊業(旅館・ホテル)の場合、「旅館・ホテル営業」許可を取得している事業所のうち、風俗営業報に規定する「施設」(ラブホテル等)に該当しない施設で受入れが可能です。申請する際には、旅館業許可証(旅館・ホテル営業許可書)の写しを入管に提出をします。

外国人側のポイント

特定技能人材になるためには、技能水準は日本語レベル及び定められた技能試験に合格するなど技能レベルが一定以上である必要があります。宿泊業で決められた範囲内の業務を行う必要があります。また、特定技能人材の健康状態や年齢、国籍、特定技能人材になるために社会通念上合理的な手数料を支払っているような場合には特定技能は許可されません。

項目ポイント
業務・宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務
・当該業務に従事する日本人が通常従事している関連業務に付随的に従事することは差し支えない
状態について・健康で18歳以上
・イラン・イスラム共和国籍は申請不可
渡航まで/滞在期間中の契約内容について・「保証金」の徴収や財産の管理、違約金の契約をさせられていないこと
・渡航費用や滞在中の費用を徴収される場合には、内訳や理由を知っていること
・二国間の取り決めがある場合にはその内容を遵守していること
技能水準日本語試験及び宿泊業技能測定試験の合格者であること
(技能実習2号修了者は、その修得した技能と関連性が認められる業務区分の試験及び日本語試験が免除)

業務内容について

特定技能は試験に合格し技能を有することが確認され人材が取得できる在留資格です。その際に試験で確認された技能や知識を要する業務に従事することになります。
その業務内容は、 宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務 になります。

加えて、同じポジションの日本人も通常従事する関連業務時従事する場合は差支えありません。その場合は例えば次のものが想定されます。運用要領には下記のように書かれています。

(1)旅館、ホテルの施設内の土産物等売店における販売業務
(2)旅館、ホテルの施設内の備品の点検・交換業務
※(注)専ら関連業務に従事することは認められません

運用要領

業務内容についての注意点

宿泊業分野では、宿泊業全般(フロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等)に幅広く従事する必要があります。ただし、許可された在留期間全体の一部の期間においてフロント担当に配属されるなど、職場の状況に応じて特定の業務にのみ従事することも差し支えありません。

宿泊業では、第2条6項4号に規定する施設(ラブホテル等)に就労させてはならず、加えて風俗営業法第2条第3項に規定する「接待」を行わせることもできません。

▶参考:観光庁『宿泊分野における新たな外国人材受入れ(在留資格「特定技能」)』

技能水準について

●技能レベルについて

宿泊業で必要な技能レベルは「相当程度の知識又は経験を必要とする技術」を有していることになります。
このことを証明する方法は以下の2点です。1or2のいずれかを満たしていなければなりません。

  1. 宿泊業分野の「宿泊業技能測定試験」に合格していること(国内試験は年に2~3回実施されています。)
  2. 技能実習2号「宿泊」を良好に修了している場合

●日本語能力について

日本語能力は日常生活レベル以上を持っている必要があり、それを判断するための方法は以下の3点です

  1. 日本語能力試験のN4以上に合格
  2. 国際交流基金日本語基礎テスト
  3. 技能実習2号を良好に修了している場合(職種・作業の種類に問わず)

▶参考:一般社団法人宿泊業技能試験センター『宿泊業技能試験センター

『技能実習』からの移行について

在留資格『技能実習2号』を良好に修了した人材は、試験は免除となり在留資格『特定技能』に移行可能です。
ただし、どんな職種でも対象になるわけではありません。以下の職種・作業名の場合は特定技能の外食業へ移行可能です。

職種名作業名
宿泊接客・衛生管理

※「宿泊」の技能実習2号は、2020年2月に職種追加されました。2021年10月現在では、第2号の実習修了者はいません。

「技能実習2号を良好に修了した」の良好の判断方法について

「技能実習2号を良好に修了したか」どうかの判断については下記の通りです。

「技能実習2号を良好に修了している者」とは、技能実習を2年10か月1以上終了した者であって、技能検定3級もしくはこれに相当する技能実習評価試験(専門級)の実技試験の合格者又は実習実施者等が作成した技能実習実施中の出勤状況や技能の習得状況等を総合的に考慮し、欠勤がないなど、良好に実習を終了した者をいう

特定技能審査要領より

もし、技能実習評価試験の実技試験に不合格であった場合でも、評価調書の記載から勤務状況などが良好であった場合には、良好に技能実習を修了したものとされます。

※技能実習法施行前の技能実習2号修了者や在留資格『特定活動」(技能実習)をもって在留していた技能実習生(「研修」及び「特定活動」で在留した期間が2年10ヵ月以上の者)も含みます。
技能実習3号の実習中の特定技能への変更は原則として認められません。

『特定技能1号』ビザの申請準備 ~支援体制を整える~

在留資格『特定技能1号』が他の就労ビザと異なる特徴の一つに、特定技能外国人の日本での生活をサポートをする必要があることが挙げられます。これを『支援計画』と呼びます、

『支援計画』とは

『特定技能』人材を雇用する際には、特定技能人材の日本での生活をサポートするために法令で定められた支援を行わなければなりません。これを「1号特定技能外国人支援計画」といい、特定技能人材が活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上、社会生活上においてサポートをするものです。この「支援計画」の実行は、「支援責任者」「支援担当者」によって行います。

出入国在留管理庁『新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組』より抜粋

支援計画で策定することは以下の10項目です。これらの内容を決め「支援計画書」を作成します。

  1. 事前ガイダンス
  2. 出入国する際の送迎
  3. 住居確保・生活に必要な契約支援
  4. 生活オリエンテーション
  5. 公的手続等への同行
  6. 日本語学習の機会の提供
  7. 相談・苦情への対応
  8. 日本人との交流促進
  9. 転職支援
  10. 定期的な面談・行政機関への通報

これらの支援計画は受入企業が主導で作成し、特定技能外国人毎に調整しすることになります。場合によっては、日本での生活が長く支援は必要ないと感じられる場合もあるかもしれませんが、『特定技能1号』人材を雇用する場合には必ず策定する必要があります。

支援責任者と支援担当者について

『支援計画』は支援責任者支援担当者が中心となって特定技能人材のサポートをすることになります。

支援責任者とは

「支援責任者」とは、受入機関の役員または職員で、『支援計画』の実施に関する責任者著して、支援担当者を監督する立場にある人のことを言います。
常勤である必要はありません。または、支援担当者を兼任しても問題ありません。

支援担当者とは

「支援担当者」とは、受入機関の役員または職員で、『支援計画』に基づく支援を担当する人のことを言います。
常勤であることが求められ、複数人の特定技能人材のサポートをすることができます。
支援担当者は、特定技能人材が就業する事業所ごとに1名以上選任される必要があります。

※支援担当者、支援責任者ともに特定技能基準省令2条1項4号イないしルにある欠格事由に該当しないことが前提です。

支援を行うための体制・要件について

策定した支援計画は自社もしくは登録支援機関が実施をします。実行は要件を満たせば自社で行うことも可能ですし、要件を満たしている場合でも自社で支援することが難しい場合やそもそも要件を満たしていない場合には、「登録支援機関」に支援を委託をすることができます。

自社で支援を行える場合の条件について

前章の内容を読んで、「こんな支援、自社でできるかな?」と不安に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、特定技能外国人の公私をサポートすることになる『支援計画』は当然に誰でもが行えるものではありません。『支援計画』を行うことができる事業所には一定の要件があります。

績がある
②十分に理解できる言語による支援体制が可能
③支援の実施状況に係る文書の作成が可能
④支援の中立性等に関するもの
⑤支援実施義務の不履行に関するもの
⑥定期面談の実施に関するもの
⑦分野に特有の事情にかんがみて定められた基準に関するもの [/su_box]

特に自社支援ができない要因となり得るのが「①中長期在留者の受入実績がある」「②十分に理解できる言語による支援体制が可能」「④支援の中立性等に関するもの」ではないでしょうか。『支援計画』は申請時に申告した「支援責任者」「支援担当者」が実施をすることになりますが、誰でもなれるということではなく一定の条件があります。
次章より『支援計画』を実施できる条件について説明をします。
また5年以内に、支援計画の支援を怠ったような場合には支援体制があるとは言えず、要件を満たさないことになります。

※補足
自社で支援ができる体制(要件を満たしている)場合は、支援の一部を外部に委託することも可能です。全部を委託する場合には登録支援機関に委託しますが、一部の場合は登録支援機関でなくてもその専門の業者に委託することができるということになります。

自社での支援が難しい場合 ~登録支援機関とは~

特定技能1号人材に対する義務的支援を受入企業から委託を受けて実施する機関です。技能実習制度の監理団体や、人材紹介会社、行政書士が登録を受けています。2021年10月現在、約6500事業者の登録があります。

▶参考:出入国在留管理庁『登録支援機関登録簿

※繰り返しになりますが、必ず利用をしなければならない機関であるという訳ではありません。

協議会への入会

在留資格の申請の前に宿泊分野特定技能協議会への入会申請を行います。

協議会では、構成員の連携の緊密化を図り、各地域の事業者が必要な特定技能外国人を受け入れられるよう、制度や情報の周知、法令遵守の啓発のほか地域ごとの人手不足の状況を把握し、必要な対応等を行うことが目的です。

在留資格の申請について

在留資格『特定技能1号』を取得するための手続きについて説明します。

在留資格の申請の流れ

特定技能の場合、申請準備は主に4つのパート「支援計画書作成・事前ガイダンスの実行」「必要書類の収集」「書類作成」「申請」に分かれます。 「支援計画書作成・事前ガイダンスの実行」 については前章で説明済みですので、 それ以降について説明します。

申請準備が整ったら、いよいよ在留資格(ビザ)の申請の準備を行います。

海外から人材を招聘する場合は「在留資格認定証明書交付申請」を行います。一方、留学生からの新卒採用や転職人材の雇用や技能実習生からの切替の場合には「在留資格変更許可申請」を行います。
どちらも就業開示時点には許可を得て、在留カードを受け取った後から就業可能です。

やること説明
⑥ 支援計画の作成特定技能人材の公私の生活をサポートするための計画を策定
⑦ 事前ガイダンス特定技能人材に対し、就業前のガイダンスを実施
⑧-1 書類収集入管のHPに記載されている必要書類を収取する
⑧-2 申請書類の作成 入管のHPからフォーマットをダウンロードして書類を作成する
⑧-3 申請書類への押印対応不備がないか確認し押印対応
⑧-4 入管へ申請管轄の入管へ出向き、申請を行う
⑧-5 結果の受取(国内・変更の場合)在留カードを受け取る
(海外・認定の場合)在留資格認定証明書を受け取る

必要書類・申請書類について

在留資格の申請は、申請書類だけでなく添付する必要書類を集めなければなりません。特定技能では、他の就労ビザと比較して申請書類の数も多いのが特徴です。

必要書類について

必要書類は、特定技能1号共通の書類と12分野それぞれで定められた分野別必要書類があります。
主に、企業に係る書類、申請人本人に係る書類の2種類があります。内容としては、会社の情報、雇用条件について、社会保険や税金の支払いについて、本人が特定技能人材としての要件を満たしていることを示す書類などになります。

分野ごとの必要書類も合わせて、こちらのページから必要書類を確認することができます。

▶海外人材:在留資格認定証明書交付申請「特定技能」(これから日本に入国される外国人の方)
▶国内の留学生・転職人材:在留資格変更許可申請「特定技能」(すでに日本に在留している外国人の方で,特定技能への移行を希望している方)

申請書類について

申請書類についても、特定技能の場合は他の就労ビザと比較してボリュームは多めになっています。
雇用条件についてや、受入企業の状況について、給料から天引きされる内容や雇用の経緯などの書類を作成しなければなりません。特に注意が必要な点、書類によっては申請人が十分で理解できる言語での作成が必要です(ただし、母国語には限られません)。
また、必要書類と同様に分野ごとに別途作成が必要な書類もあります。

入管のHPに外国語のテンプレートもあります。こちらを利用すると便利です。
※外国語のフォーマットは、英語、ベトナム語、タガログ語、インドネシア語、タイ語、ミャンマー語、カンボジア語、モンゴル語、ネパール語、中国語があります。

在留資格「特定技能」に関する参考様式(新様式)

申請について

申請は誰でもどこでもできるわけではなく、一定のルールがあります。

どこで申請するのか

基本的に申請は申請人の居所を管轄する入管、もしくは受入れ予定の企業の所在地を管轄する入管で行います。

申請先については下記の通り 決まりがあります。

【原則】申請先の決まり
【在留資格認定証明書交付申請】※外国人が海外にいる場合
居住予定地もしくは受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署

【在留資格変更許可申請 or 在留期間更新許可申請】
住居地を管轄する地方出入国在留管理官署

地方出入国在留管理官署管轄する区域
札幌出入国在留管理局北海道
仙台出入国在留管理局宮城県、福島県、山形県、岩手県、秋田県、青森県
東京出入国在留管理局東京都、神奈川県(横浜支局が管轄)、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、
群馬県、山梨県、長野県、新潟県
名古屋出入国在留管理局愛知県、三重県、静岡県、岐阜県、福井県、富山県、石川県
大阪出入国在留管理局大阪府、京都府、兵庫県(神戸支局が管轄)、奈良県、滋賀県、和歌山県
広島出入国在留管理局広島県、山口県、岡山県、鳥取県、島根県
福岡出入国在留管理局福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、
沖縄県(那覇支局が管轄)

分局が近くにない場合には、最寄りの支局や出張所での申請も可能です。ただし、支局や出張所次第では在留資格の申請を受け付けていない場合もあるため確認が必要です。

▶出入国在留管理庁:管轄について

誰が申請をするのか

基本的には、申請人(外国人)本人が申請人の住居地を管轄する入管に申請に行きます。
申請人が16歳未満の子どもの場合は、法定代理人(父母等)が代理人として申請することができます。
また、申請人が海外にいる場合には、申請人(外国人)を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者が、代理人として申請を行うことができます。
この場合、代理人は申請書に名前を記載する代表取締役などに限らず、受け入れる機関の「職員」であれば問題ありません。また、グループ会社の人事関連業務を行う会社の職員も含みます。

一方、届け出を行っている「取次者」であれば、申請を代わって行うことができます。
「取次者」の例として、雇用されている・所属している機関の職員、行政書士、弁護士がなることができますが、一定の研修を受けて登録された人のみになります。

【取次の人が申請する場合~ルールが変わりました~】

今までは、原則「申請人の居住地を管轄する住所を管轄する入管」でしか申請は認められていませんでした。
しかし、ルールが変更となり申請人(外国人)が受け入れられている又は受け入れられようとしている機関の所在地を管轄又は分担する出入国在留管理官署においても認められるようになりました。

例えば、福岡に住む留学生が東京の会社に内定をもらった場合、以前は、福岡入管(もしくは管轄する出張所)のみでしか申請できませんでしたが、今後は内定先のある東京出入国在留管理局での申請も認められます。

※このルールは取次者証明書が交付された人(公益法人の職員や弁護士や行政書士等)についても認められます。

雇用後の手続きの流れ

特定技能人材の雇用後には、「国籍問わず必要な手続き」「外国人従業員特有の手続き」「特定技能特有の手続き」の手続きが発生します。

国籍問わず必要な手続き

特定技能人材は基本的にはフルタイムでの就業になるため、適用事業所である場合は「社会保険」「労働保険」の加入は必須となります。

社会保険(厚生年金・健康保険)について

社会保険(厚生年金・健康保険)は、宿泊業の場合は1人以上の従業員を使用する法人と、常時5人以上の従業員を雇用する事業主(個人事業主)は加入は必須となります。
ただし、家族経営の旅館などでは適用事業所ではない場合もあるため、事業所によっては非適用の場合もあります。

労働保険(雇用保険・労災保険)について

労働保険(雇用保険、労災保険)は、宿泊業の場合は1人以上の従業員を使用する場合は加入は必須となります。

外国人従業員特有の手続き

外国人従業員の場合、在留期限が到来する前に「在留期間更新許可申請」を行わなければなりません。
在留カード記載の「在留期限」の日の3ヶ月前から申請することが可能で、在留期限の満了日までに申請を行います。例えば、2021年9月1日在留期限の方の場合、2021年9月1日までに申請を行わなければなりません。

また、2021年6月15日に申請を行い2021年7月15日に「1年」延長の許可が出て新しい在留カードの交付を受けた場合、在留期限は「2022年9月1日」になります(2022年7月15にではありません)。つまり、早めに申請をして在留期限到来前に許可が出た場合でも、在留期限が短くなって損をするということはありません。余裕を持った対応が可能ですし、損をすることは無いため余裕を持った申請をお勧めします。

なお、申請中に在留期限が到来した場合、自動的に「特例期間」に入ります。特例期間中は今まで通りの在留が可能です。この期間内に審査の結果は出ます。

特定技能特有の手続き

外国人従業員の雇用の中でも、特定技能人材は受入後にも特有の手続きが発生します。

入管に対する定期報告・随時報告

特定技能人材を受け入れている場合、支援計画の実行状況の定期報告や雇用契約や支援体制に変更があった場合などに随時報告を行うことが義務付けられています。定期報告は4半期に一度、随時報告はその都度、それぞれ期日から14日以内に入管に対して報告書を提出します。

在留期限までに在留資格の申請手続きが完了しない場合の対応方法

もし、準備を始めたタイミングで内定者・移行予定の技能実習生の在留期限が迫っている場合には、「特定活動(特定技能移行準備)」に変更をするという方法もあります。
この在留資格は4か月与えられ、特定技能人材と同様の業務内容に従事しながら並行して特定技能の移行準備を行うことができます。

この「特定活動(特定技能移行準備)」に変更するための条件は以下の通りです。

・申請人の在留期間の満了日までに「特定技能1号」への在留資格変更許可申請を行うことが困難である合理的な理由があること
・申請に係る受入れ機関において特定技能外国人として在留資格「特定技能1号」に該当する業務に従事するために同在留資格への在留資格変更許可申請を予定していること
・申請人が特定技能外国人として就労する場合に支払われる予定の報酬と同額であり、かつ、日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を受けること
・申請人が特定技能外国人として業務に従事するために必要な技能試験及び日本語試験に合格していること
 ※技能実習2号良好修了者等として試験免除となる場合も含む。
・申請に係る受入れ機関又は支援委託予定先が申請人の在留中の日常生活等に係る支援を適切に行うことが見込まれること
・申請に係る受入れ機関が、申請人を適正に受け入れることが見込まれること

出入国在留管理庁『「特定技能1号」に移行予定の方に関する特例措置について』

在留期間満了日までに在留資格の申請手続きが完了しそうにない場合には、こちらの在留資格「特定活動」に変更した上で、働きながら準備を整えることも検討されてください。
※基本的には在留期限日当日までに特定技能の申請が完了していれば在留状況的には問題ありません。

▶参考:出入国在留管理庁『「特定技能1号」に移行予定の方に関する特例措置について

まとめ

以上、宿泊業分野の特定技能人材の在留資格(ビザ)の取得までの流れについて説明しました。宿泊業では特定技能人材に、フロントからレストランサービス、接客、企画・広報など幅広く従事させることができます。高度人材と比較してフロントや企画などの業務に限定されがちですが、それ以上に柔軟な働き方が可能です。
特定技能人材になるための技能試験は年に2~3回開催されています。試験の難易度は高めですが、宿泊業は外国籍人材の中では人気の職種ということもあり、希望者が多くいる分野でもあります。

【行政書士からのアドバイス】
宿泊業の場合、高度人材・『技術・人文知識・国際業務』か『特定技能1号』の雇用かで悩まれる場合もあるかと思います。この2つの在留資格を正しく選択し、外国籍人材が活躍できる体制を構築することが外国人雇用の成功の秘訣となります。当事務所では組織作りの段階からサポートをすることが可能です。お気軽にお問合せ下さい。

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