【行政書士が解説】外国人留学生をアルバイト採用する際の注意点

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外国人を採用する際には、やはり気になるのが在留資格(ビザ)のことだと思います。留学生アルバイトの場合適法に雇うためにはルールがあります。留学生アルバイトには、就業場所や就業時間に制限があります。また、雇用する側も「知らなかった」ではすまされない確認すべき事項がいくつかあります。本編では、外国人留学生を採用する際のルールについて解説します。

一番気になる!在留資格(ビザ)について

在留資格とは

「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2021年7月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。

在留資格の切替のイメージ

例えば、上記の方の場合、日本語学校の学生の間は「留学」ビザで活動します。その後、料理人になった場合は「技能」とい在留資格に切り替えなければなりません。また、独立開業してレストランの経営者になった場合は「経営・管理」ビザを取得します。もし、将来、日本への永住を決意し一定の要件を満たしているようであれば、「永住者」ビザを取得することもできます。

在留資格の一覧は下記になりますが、言い換えると以下に当てはまるものがない場合は、日本での滞在はできないということになります。

在留資格『留学』とは

外国人留学生は、在留資格『留学』を持って滞在しています。この在留資格はその名前の通り「日本で勉強するために滞在する外国人に与えられる在留資格」になります。

入管法においても在留資格『留学』における活動内容は、下記のとおり定められています。

本邦の大学,高等専門学校,高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)若しくは特別支援学校の高等部,中学校(中等教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の中学部,小学校若しくは特別支援学校の小学部,専修学校若しくは各種学校又は設備及び編制に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動。

アルバイトで来る場合には、大学生や専門学校生、日本語学校生がほとんどです。

在留資格『留学』は“勉強”が目的の在留資格であるため、本来であれば働くことはできません。アルバイトをするということは「資格外活動」を行うこととなり、不法就労に該当し、退去強制に該当することになります。
では何故、アルバイトをすることができるのかというと「資格外活動許可」を得ることでアルバイトは可能になります。

資格外活動とは

活動制限のある「在留資格」で定められた範囲外の活動を行うことを「資格外活動」と言い、特に報酬を得るような資格外の活動は原則禁止されています。そのため、収入や報酬を得る活動を行うためには予め「資格外活動許可」を取得しておく必要があります。

「資格外活動許可」には「包括許可」と「個別許可」があります。「週28時間」まで就労可能な留学生アルバイトについては「包括許可」に分類されます。これが、基本的にタイムカードで管理できる仕事(アルバイトやパート)で働くことができ、一部の風営法で規制される業種を除き、他の在留資格では認められない単純労働やレジなどの接客業務でも就業は可能です。
一方で、「包括許可」をとっている場合でも、就業の内容がタイムカードで管理されない場合には「個別許可」を取得しなければなりません。留学生の場合で個別許可が必要な代表的な仕事を挙げると、語学教師や通訳・翻訳、家庭教師などが挙げられます。この他にもインターンシップで週28時間以上報酬を受ける活動をする場合や、業務委託契約による場合(最近話題のウーバーイーツも業務委託契約に該当します。)が該当します。

ちなみに、「包括許可」と「個別許可」は学業に支障が出ないことが確かであれば両方取ることも可能です(実際取得するとなると、その説明は相当大変です)。

「主格外活動許可」の取得の有無は裏面を見ることで分かります。表面が「就労不可」となっている場合でも、裏面の「資格外活動許可欄」を確認するとことで判断は可能です。

【資格外活動許可欄】
この欄には下記のような文言がかかれているので確認しましょう。

①「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く。)」
②「許可(資格外活動許可所に記載された範囲内の活動)」
※②については、資格外活動許可所を確認してください。

面接に来たらまずは在留カードを確認しましょう

在留カードは、基本的に3か月を超えて日本に滞在することが許された外国人に対して、法務省出入国在留管理庁により発行されされるものになります。在留カードには、氏名、生年月日、性別、国籍、地域、住居地、在留資格、在留期間といった基本情報が記載されています。

「3月」未満の在留期間が交付された人や「短期滞在」の在留資格が交付された人、そもそも在留資格を有していない人も交付されません。
また、特別永住者の方には「特別永住者証明書」が交付されます。

外国人留学生であれば、在留資格は『留学』となっているはずです(身分系の在留資格を持っている場合を除く)。在留カードは、16歳未満の子どもや特別永住者を除き携帯義務があり、大前提、在留カードを所持していない人を働かせるわけにはいきません。

在留カードの主な記載内容

在留カードのみるべきポイント ~留学生編~

①本人であるかどうか

16歳以上の方の在留カードには「顔写真」があります。
まずはその在留カードの持ち主であるかを確認しましょう。在留カードを貸し借りして「不法就労」をすることは起こり得ますし、実際にそれが原因で雇い主が「不法就労助長罪」に問われるケースも発生しています。

②在留期限

在留期限は1日でも超えてはいけません。また、永住者の場合でも在留カードには有効期限があります。必ず確認するようにしましょう。もし在留期限当日に、在留期限に気がついたらとにかく手ぶらでも入管に行って相談・申請をしなくてはなりません。

在留期限の更新は、在留期限当日までに行います(実際は前もって申請するようにしましょう)。
申請日から翌日以降どうなるのかというと2か月間の「特例期間」に入ります。特例期間中は、引き続き申請前の在留資格の活動を行うことができます。

在留資格の申請を行ったかどうかは、在留カードの裏面を見ればわかります。右下に「在留資格変更許可申請中」や「在留期間更新許可申請中」の記載があれば、表面の在留期限が到来していても、特例期間に入っているためオーバーステイではありません。

③就労制限の有無

在留資格『留学』の場合は、表面には「就労不可」と記載されています。アルバイトをさせてよいかどうかの判断は裏面の「資格外活動許可欄」を確認します。

タイムカードで管理できる仕事の場合は、「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く。)」(包括許可)と記載されていれば働くことができます。一方で、タイムカードで管理できない業務の場合は個別許可を取得し、在留カードに「許可(資格外活動許可所に記載された範囲内の活動)」と記載されてから働くことになります。

④偽装在留カードでないか確認

出入国在留管理庁の公式アプリ「在留カード等読取アプリケーション」を使用すれば、スマートフォンにアプリをダウンロードするだけで偽装在留カードかどうかの確認を取ることができます。
偽装在留カードは出回っているため、うっかり不法就労助長罪になってしまわないためにも必ずアプリで確認を行いましょう。

留学生アルバイトの注意点

就業場所に注意 ~風営法の規制がある業種は不可~

資格外活動許可欄にも記載されているように、「風俗営業許可」が必要な店舗での勤務は業務内容がどんなものであれ認められません。代表的な業種は、クラブ、スナック、パチンコ店、ゲームセンターなどが該当します。掃除やキッチンなども行うことはできません。

一方で、その他の在留資格では働くことのできない単純労働やレジ接客などを行うことは問題ありません。

就業時間に注意 ~原則週28時間まで~

留学生のアルバイト(資格外活動・包括許可)は、週28時間まで、学校の長期休業期間中は週40時間まで働くことができます。
これは、月間を通しての平均でもなく、「年収÷時給÷12か月÷4週」で算出した結果でもありません。「どこを切り取っても週28時間」である必要があります。
学生の長期休業中のアルバイトについても同様に、学則で定められた期間に限り「1日あたり上限8時間」(+労基法の遵守が必要です)まで働いてよいことになります。

次にこの時間制限は、1人の労働時間で見て「週28時間」であり1つの就業先で「週28時間」ではありません。雇用側としては、自社のシフトだけ見て時間を厳守しているつもりでも、気づかず内に「不法就労」を助長している可能性もあります。
「不法就労助長罪」は知らなかった・気づかなかったではすまされないため、外国籍従業員を雇用する場合にはしっかりとコミュニケーションをとり、シフトを管理する必要があります。

「高校生以下」のアルバイトの場合、原則「個別許可」を取得が必要です。この個別許可は”御社”で働くことを前提に取得するものになるため、「既に持っている」場合などは特に注意が必要です。(同じ高校生でも『永住者』や『定住者』の場合はアルバイトに制限はないため問題ありません。)

加えてこれは留学生次第にもなりますが、週28時間以内であっても学校の成績が悪かったり出席率が低いと、「資格外活動許可」が更新されない場合もあります。つまり、絶対に週28時間まで働いてもよいというわけでもありません。

雇入れの手続きについて~社会保険・税金~

基本的には日本人を雇用した際と同じ手続きが必要です。税金も保険も同様に払います。加えて、留学生の場合は『雇用状況届出書』をハローワークに届出をしなければなりません。

税金について

住民税や所得税も留学生は支払わなければなりません。
源泉徴収が必要な金額以上のアルバイトをする場合は源泉調整が必要です。この場合は、年末調整も行います。複数店舗でアルバイトをした場合には、確定申告も行います。

労災保険について

アルバイトや社員など雇用形態に問わず、従業員を1名でも雇った場合は労災保険に加入しなければなりません。
このため、留学生(資格外活動許可によるアルバイト)の場合は労災保険は被保険者となります。

雇用保険について

一方、学生の場合には雇用保険については被保険者となりません(原則。特に就業時間の上限のある留学生の場合)。

ただし、ハローワークに対して、「外国人雇用状況届出」についてはしなければなりません(通常は雇用保険の加入と同時に行います)。こちらは、インターネットできる手続きです。
罰則の対象にもなるため漏らさず行うようにしましょう。

まとめ

以上、留学生アルバイトを採用する場合の注意点について説明致しました。
就業可能な時間は原則週28時間で、これはアルバイト1箇所あたりではなく1人当たりになります。また風営法の営業許可が必要な業種でのアルバイトはどのような仕事であってもできません(身分系の在留資格を除く)。留学生アルバイトの採用面接する際には、在留カードを確認し「資格外活動許可」が取得できているか、偽装在留カードでないかをチェックしましょう。

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