【加入していますか?】労働保険は国籍を問わずの共通ルールです

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外国人を社員として雇用した場合には、適用事業の場合には外国人従業の方も労働保険(労災保険・雇用保険)の被保険者になります。外国人雇用と言えども、手続きは基本的には日本人と同じです。適用事業所で雇用する場合には加入の手続きをしなければなりません。また、雇用保険の被保険者とならない場合な『外国人雇用状況届出書』の提出が必要です。本編では、外国人が労働保険に加入が必要な場合について解説致します。

労働保険とは

労働保険とは労災保険雇用保険の総称です。

労働保険に「加入する/加入しない」ということは、就業先が「適用事業所」かどうか、また「被保険者」に該当しうるかどうかで判断をします。「適用事業所」であるかどうかは事業の内容や規模によって決まり、「被保険者」であるかどうかは雇用の形態などによって決まります。
雇用者が適用事業の場合、事業主や労働者の意思に関係なく、事業が行われている限り法律上当然に労働保険の保険関係が成立します。

大前提として、労働保険は国籍問わず共通のルールであり、国籍によって加入するか否かが決まるものではありません。

労働保険制度についてはこちら(厚生労働省HP)を参照ください。

労災保険とは

労災保険は、事業の業務を要因とする事由や通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするために必要な保険給付をおこなうこと、また、社会復帰促進事業を行うことを目的とされた保険です。
労災保険は事業主が保険料を全額負担するものになります。

適用事業所について

原則、労働者を1人でも雇用していれば適用事業所となります。
これは事業者や労働者の希望は関係なく当然に適用事業となります。ただし、国の直営事業や官公署の事業(労働基準法別表第1に掲げる時用を除く。)については適用されません。

ただし当分の間、労災保険の適用を任意とされている事業があります。「農林水産業を営む個人経営で常時使用労働者数が常時5人未満の事業」が該当します。
農林水産業を営む事業の中でも、都道府県、市町村などの事業の場合、法人である場合、船員法1条に規定する船員を使用して行う船舶所有者の事業の場合、業務災害の発生の恐れが多い事業で厚生労働大臣が定める事業の場合、農業(畜産及び養蚕の事業を含む)で事業主が特別加入している場合は労災保険の適用事業となります。

よって、労災保険は国の事業や「農林水産業を営む個人経営で従業員5人未満」の場合を除き、強制適用事業となります。

適用労働者について

労災保険の適用労働者は原則として「労災保険の適用事業に使用される者で、賃金を支払われる者(使用従属関係にある者)」になります。
基本的には後述する「適用労働者にならない」ケースを除き適用者となるため、下記のような人でも労災保険に加入することになります。

適用労働者になる人の例

労災保険に加入になるのは、いわゆる「社員」だけでなく下記のような方も該当します。

  • 短時間労働者・期間雇用者(パート、アルバイト、日雇い労働者
  • 不法就労者を含む外国人労働者(在留資格を持たない人も含む)
  • 派遣労働者(派遣元で加入)
  • 在籍型出向労働者(就労の実態に合わせて出向元・出向先どちらかで加入)
  • 2つ以上の事業に使用される人
    →副業など複数の事業者で働く場合、それぞれの事業において適用労働者となる。

一方で、「適用労働者」にならない人もいます。基本的には「使用従属関係」の無い場合は適用されません。例えば請負・委任・共同経営者などの場合、自営業者の場合(特別加入制度に適用を受けることはできます)、事業主との同居の親族(雇用の実態に「使用従属関係」がある場合を除く)、法人の役員など(事実上の労働者は除く)は労災保険は適用されません。

雇用保険とは

雇用保険は、労働者が失業した場合や雇用の継続が困難となった場合に必要な給付を行ったり、労働者自らが職業に関する教育訓練を受ける場合、労働者が子を養育するための休業をした場合に必要な給付を行ったり、労働者の生活の安定・雇用の安定を図るために就職を促進するなどを目的にした保険です。また、職業の安定のために、失業の予防や雇用状況の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上、福祉の増進を図ることも目的とされています。

適用事業所について

原則、労働者を1人でも雇用していれば適用事業所となります。国や地方公共団体が行う事業も「労働者が雇用される事業」に該当すれば、原則として適用事業となります。

ただし当分の間、雇用保険の適用を任意とされている事業があります(暫定任意適用事業)。「農林・畜産・養蚕・水産事業(船員が雇用される事業を除く)であって、常時5人以上の労働者を雇用する事業以外」が該当します。
これらを営む事業であっても、国、道府県、市町村が運営する事業、法人は適用事業所となります。

被保険者について

雇用保険における「被保険者」とは、「適用事業に雇用されている労働者」が該当します。ただし、適用除外となる人がいます。

適用除外となる例
  • 1週間の所定労働時間が20時間未満である者(日雇労働被保険者に該当することとなるものを除く)
  • 同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者(前2月の各月において18日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者及び日雇い労働者であって日雇い労働被保険者に該当することとなる者を除く)
  • 季節的に雇用される者であって次のいずれかに該当する者(日雇い労働被保険者に該当する者を除く)
    • 4か月以内の期間を定めて雇用される者
    • 1週間の所定労働時間が20時間以上であって厚生労働大臣の定める時間数(30時間)未満である者
  • 学生(卒業を予定している者で卒業後も働く者、休学中の者、定時制過程に在学する者は除く)
  • 船員であって、漁船(政令で定めるものに限る。)に乗り込むために雇用される者(1年を通じて船員として雇用される場合を除く)
  • 国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び終章促進給付の内容を超えると認められる者であって、次のいずれかに該当する者
    • 国又は行政執行法人の事業に雇用される者
    • 都道府県等の事業に雇用される者であって、当該都道府県等の長が雇用保険法を適用しないことについて、厚生労働大臣に申請し、その承認を受けたもの
    • 市町村等の事業に雇用される者であって、当該市町村等の長が雇用保険法を適用しないことについて、都道府県労働局長に申請し、厚生労働大臣の定める基準によって、その承認をうけたもの

『外国人雇用状況届出書』を提出するケースとは

外国人を雇用した際には、労働保険(労災保険・雇用保険)の他にもルールが定められています。そのうちの1つが『外国人雇用状況届出書』になります。

厚生労働省『「外国人雇用状況の届出」は、全ての事業主の義務であり、外国人の雇入れの場合はもちろん、離職の際にも必要です!

外国人を雇用したら必ず届け出が必要

外国人(在留資格「外交」「公用」以外の場合)を雇い入れる場合には、①氏名 ②在留資格 ③在留期間 ④生年月日 ⑤性別 ⑥国籍・地域 ⑦資格外活動許可の有無 ⑧在留カード番号 ⑨雇入れに係る事業所の名前および所在地について届け出を行います。

これらの届け出は、雇用保険の被保険者となる場合は『雇用保険被保険者資格取得届』で、被保険者とならない場合は『外国人雇用状況届出書』をハローワークに提出することになります。

雇用保険の適用事業でない場合(個人経営の5人未満の農林水産業者)や、被保険者とならない場合(学生アルバイトや短時間労働のパート)の場合は、『外国人雇用状況届出書』を提出しなければなりません。

届け出の方法

外国人を雇用したことの届け出は、雇入れ時離職時に行わなければなりません。

  • 雇用保険の被保険者の場合:
    • 雇入れ時:『雇用保険被保険者資格取得届』の提出期限と同じ(雇入れた日の属する月の翌月10日まで)
    • 離職時:『雇用保険被保険者資格喪失届』の提出期限と同じ(離職した日の翌日から起算して10日以内)
  • 雇用保険の被保険者でない場合:雇入れ、離職の場合共に「翌月の末日」まで

『外国人雇用状況届出』はインターネットからでも提出できます。留学生アルバイトを頻繁に雇用する事業所の場合はインターネットで届け出をする仕組みづくりをしてしまうと便利です。

「外国人雇用状況届出システム」についてはこちら

在留資格別に被保険者になり得るかを解説

ここからは在留資格別に、労働保険の加入するケースについて解説していきます。
※該当する在留資格での滞在の在り方から想定される一般的な内容になるため、特殊な事例の場合は各行政に個別にご相談下さい。

繰り返しにはなりますが、労働保険に国籍や個人的な希望は関係なく基本的には加入をしなければなりません。

一般的なサラリーマンの場合

一般的なサラリーマンに多い在留資格:『技術・人文知識・国際業務』、『高度専門職1号(ロ)』、『特定活動46号』、『技能』、『特定技能』、身分系のビザ等

会社に就職している場合は、労働保険(労災保険、雇用保険)に加入する必要があります。
『特定技能』の場合や一部『技術・人文知識・国際業務』の場合で、農林水産業を営む小規模の個人経営に就職する場合は、労働保険は適用されません。

ただし、特に『特定技能』の場合は、労働保険に加入していない場合の場合は民間の保険に加入することが求められています。
また、事業主が労災保険に特別加入している場合は、従業員も同じく労災保険に加入をします。
雇用保険の適用所でない場合は、『外国人雇用状況届出書』をしなければなりません。

実習生の場合

在留資格『技能実習』は将来母国に日本の技術を持ち帰るために来日した「実習生・研修生」の位置づけではありますが、「一般的なサラリーマンの場合」と同様に労働保険(労災保険、雇用保険)に加入する必要があります。

暫定適用任意事業の場合、行政より加入するように指導を受ける場合もあります。
事業主が加入している場合は、従業員も同じく労災への加入が必要です。『外国人雇用状況届出書』をしなければなりません。

経営者・会社役員の場合(『経営・管理』ビザをお持ちの方)

・労災保険の場合
ご自身が経営者の場合は被保険者とはなりません。特別加入をして加入をすることはできますが必須ではありません。ただし、従業員を1人でも雇っている適用事業所の場合は従業員が外国籍であってもその従業員においては適用されます。

共同経営や請負や業務委託の場合、会社役員では使用従属関係がない場合(労働者でない場合)は被保険者とはなりません。

・雇用保険の場合
ご自身が経営者である場合は被保険者とはなりません。役員の場合も原則として雇用保険の被保険者とはなりません。法人役員の場合でも実質的に労働者に該当する場合は被保険者となります。

労災保険同様に、任意適用事業所の場合でも従業員から希望があって適用事業所として認可された場合は、加入の申請をしなければなりません。この場合は、従業員が外国籍であっても被保険者となります。

留学生(アルバイト)の場合

留学生(資格外活動許可によるアルバイト)の場合は、労災保険は被保険者となります。
一方、雇用保険は適用除外となり被保険者とはなりません。

一方、家族滞在などの資格外活動許可によるパートの場合は、就業の状況によっては雇用保険も適用される可能性があるためご注意ください。

まとめ

以上、外国人雇用と労働保険の関係について説明致しました。労働保険(労災保険、雇用保険)は国籍問わず、また適用事業所設置の届け出をしていない場合でも、保険関係は法律上当然に成立しています。基本的には強制加入であり本人の希望は関係がありません。
適用事業所の場合、社員のみならず留学生アルバイトでも適用になる場合もあります。また、労働保険の適用事業所でなくても、外国人を雇用した際には『外国人雇用状況届出書』の提出をハローワークにしなければなりません。

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