日本育ちの外国人の就職活動と在留資格(ビザ)の選び方について

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多くの外国人の方が日本で働くようになった結果、日本育ちの外国人の子どももかなり増えてきました。高校卒業までに日本の教育を受けた方は、自由に職業選択ができるように業務内容に制限がない「定住者」・「特定活動」といった在留資格を選択できるような制度があります。これらを選択することで、「永住者」や「日本人の配偶者等」といった身分系の在留資格でなくても、高卒での就職や自由な職業選択が可能になります。
また、この他にも大卒の方の場合は、在留資格の選択の幅が広がります。それぞれにメリット・デメリットや要件があるため、本編では簡単に比較しながら選択の可能性についてみていきたく思います。

日本育ちの外国人は“自由に”就職活動をして大丈夫?

働く親と一緒に日本に来日して日本で育った外国籍の方は、日本で就労するためには就職する時点で、就労が可能な在留資格を持っている必要があります。活動制限のない身分系の在留資格の場合は変更の必要はありませんが、在留資格『家族滞在』や『留学』の場合には、就労が可能な在留資格に変更をする必要があります。

下記は、その候補となる在留資格の一覧になります。

在留資格在留資格の特徴・選択基準
技術・人文知識・国際業務会社等において学校等で学んだこと/実務経験を活かした知識や国際的な背景(言語や外国の感性等)を要する(「単純作業」、「訓練で習得する業務」、「マニュアルがあれば遂行可能務」等を除く)仕事をすることを目的とした在留資格
高度専門職1号「技術・人文知識・国際業務」などの要件(学歴や業務内容等)を満たした状態で、かつポイント制で70点以上の場合に取得が可能。
日本の大学を卒業し、N1を持っている場合は加点が大きいため、検討が可能な場合がある。
特定活動(46号・本邦の大学卒業者)日本の大学を卒業し(短大、大学、大学院)、日本語能力検定N1レベルである場合に、「技術・人文知識・国際業務」と比較して従事可能な業務の幅が広く、比較的自由に職業を選択することができる。
定住者小学校卒業までに入国した場合に選択可能。
基本的にはどのような業務内容でも従事可能
特定活動高校入学~高校卒業までに入国した場合に選択可能
基本的にはどのような業務内容でも従事可能
※身分系の在留資格活動制限は無いため、どのような業務内容でも従事可能
就職に伴って、その在留資格から変更する必要は基本的には無い

※上記に加えて、在留資格『特定活動1号』も選択が可能だがメリットが無いため今回は省略します。

上記の通り、働く親と一緒に日本に来日して日本育ちの外国人の場合、「高卒」から就職が可能になったり、また職業・業務内容も自由に選択をすることができます。日本育ちの外国人は、17歳までに入国・高卒といった少しの条件さえ満たせば、多くのケースで“自由”に就職活動をして差支えない、と言えます。

日本育ちの外国人“のみ”が選択可能な就労ビザとは?

働く親と一緒に日本に来日して17歳までに入国して、高校を卒業した人には一定の要件が課せられますが、自由に職業選択をすることができる在留資格の制度があります。入管の方針と細かい要件について確認します。

※以下、「働く親と一緒に来日」した文言を省略しますが、本制度は在留資格『家族滞在』の要件を満たしている人が対象となります。

出入国在留管理庁の方針について

就労目的で在留する外国籍の方が増えたことを背景に、日本生まれ、日本育ちの外国籍の子どもが増えてきました。在留資格『家族滞在』や『留学』で滞在する日本育ちの子どもが同級生の日本人と同じように就職活動及び就職をしても問題ないように、就労可能な在留資格が選べる制度があります。

出入国在留管理庁は、日本育ち(17歳までの入国・高校を卒業した)の外国籍の方の就労可能な在留資格について、『「家族滞在」の在留資格をもって在留し、本邦で高等学校卒業後に本邦での就労を希望する方へ』にて「定住者」又は「特定活動」への在留資格の変更を認めています。

この「定住者」・「特定活動」を選択することで、その他の就労可能な在留資格と大きく異なる点は以下の通りです。

・業務内容の制限を気にすることなく就職をすることができる
・(高卒であれば)学歴や職歴がなくても就労可能な在留資格を取得できる

つまり、他の就労可能な在留資格では必ずある「業務内容の制限」や「学歴・職歴要件」が無くても、「定住者・特定活動」を選ぶことによって、日本人の高卒者と同じように就職活動をし、どのような職業にも就くことができます。他の就労ビザでは一定の制限があったり、そもそも当てはまる在留資格がないことがなく就職を断念しなければならないこともありますが、この「定住者・特定活動」の在留資格であれば比較的自由に就職ができます。

▶参考:出入国在留管理庁『「家族滞在」の在留資格をもって在留し、本邦で高等学校卒業後に本邦での就労を希望する方へ

就職に際して「定住者」・「特定活動」を検討できる場合

本制度は、主に高卒の方でもフルタイムに就職することができるようにしたことが想定されています。ただし、無条件に子どものころから日本にいる外国人全員が、この在留資格の選択ができるという訳ではありません。来日時のステータスや就職時点の家族の在留状況によって、要件や選択可能な在留資格(ビザ)は異なってきます。

日本生まれ・小学生までに来日した場合

現在、「家族滞在」で在留する人で、17歳まで(18歳未満)に入国し、日本で小学校・中学校・高校を卒業し、週28時間以上の労働条件での就職が決まっている場合には「定住者」を取得することができます。
小学校・中学校を卒業しているということは、日本の義務教育を修了しているという意味になります。小学校・中学校には特別支援級や夜間中学も含みます。また、高等学校には、定時制や通信制も含みます。

また、「家族滞在」で在留している人以外でも、両親の扶養を受けながら一緒に日本で生活をしている「留学生」などの場合でもこの制度は利用可能です。考え方は「家族滞在」の在留資格の要件を満たしている人であれば、その他の在留資格でも検討の余地があるという見方になります。

もし1週のうち28時間以内でしか働かない場合には、「資格外活動許可(包括許可)」があれば足りるため、「定住者」への在留資格の変更はできません。

中学生から・高校入学時から来日した場合

高校の入学時(中学生の途中)から日本に来た場合には、17歳まで(18歳未満)に入国し、高校を卒業し、週28時間以上の労働条件での就職が決まっている場合で、かつ、引き続き親も日本に在留する場合には「特定活動」を取得することができます。
この場合、親は子どもの身元の保証をすることが条件になります。

高校生の時に来日(高校に編入)した場合

高校生の時(高校に編入)から日本に来た場合には、高校卒業に加えて日本語能力検定N2レベル以上であることが必要です。つまり、17歳まで(18歳未満)に入国、高校を卒業、日本語能力検定N2レベル以上、週28時間以上の労働条件での就職が決まっている場合で、かつ、引き続き親も日本に在留する場合には「特定活動」を取得することができます。
この場合も、親が子どもの身元の保証をすることが条件になります。

上記3パターンに共通している事項で共通の要件として、「住居地の届出等、公的義務を履行していること」が挙げられます。
在留資格の変更をするタイミングは、「就職先に内定」・「高校卒業(見込みでも可能)」の条件が揃った時から申請は可能となり、就労可能な在留資格の許可をもらった日から就労が可能となります。

日本育ちの外国人が選択可能な就労ビザまとめ

上記を踏まえた上で、その他の就労可能な在留資格(就労ビザ)とあわせて比較検討や選択の基準について見ていきます。

そもそも在留資格を変更する必要のない場合:身分系の在留資格

身分系と言われる在留資格は「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4つがあります。これらの在留資格では、活動制限はありません。つまり、どのような業務内容に従事しても在留資格的には問題ありませんし、無職の状態であっても問題が無いことになります。

よって、これらの在留資格の場合には、就職をきっかけに在留資格を変更する必要は基本的には有りません。

高校を卒業して就職をする場合

高校を卒業して就職をする場合には、大卒などの学歴が要件となる在留資格『技術・人文知識・国際業務』などは選択できません。このため、お仕事内容がホワイトカラー/ブルーカラーに関わらずどのような業務内容であったとしても、基本的には「定住者」・「特定活動」を検討することになります。
どちらを選ぶかの比較は、入国時点のステータスによります。

在留資格選択する基準
定住者小学校卒業までに入国した場合
特定活動高校入学~高校卒業までに入国した場合
※親も日本に在留していることが必要

大学・専門学校を卒業して就職をする場合

大学を卒業して就職をする場合には、本制度の「定住者」・「特定活動」に加えて、在留資格『技術・人文知識・国際業務』や『特定活動(46号・本邦の大学卒業者)』や『高度専門職1号』も選択の余地が出てきます。それぞれにメリット・デメリットがあるため選択のせいには比較をしながら選びます。

選択可能な就労ビザ一覧

高度人材系の在留資格には学歴要件がある者が複数あり、一つの目安に「大卒(短大含む)」があり余す。このため。大卒者の場合は選択可能な在留資格は高卒よりも増えます。

在留資格在留資格の特徴・選択基準
技術・人文知識・国際業務会社等において学校等で学んだこと/実務経験を活かした知識や国際的な背景(言語や外国の感性等)を要する(「単純作業」、「訓練で習得する業務」、「マニュアルがあれば遂行可能務」等を除く)仕事をすることを目的とした在留資格
高度専門職1号「技術・人文知識・国際業務」などの要件(学歴や業務内容等)を満たした状態で、かつポイント制で70点以上の場合に取得が可能。
日本の大学を卒業し、N1を持っている場合は加点が大きいため、検討が可能な場合がある。
特定活動(46号・本邦の大学卒業者)日本の大学を卒業し(短大を除く)、日本語能力検定N1レベルである場合に、「技術・人文知識・国際業務」と比較して従事可能な業務の幅が広く、比較的自由に職業を選択することができる。
※高校から来日し、大学卒業時点で親が母国に帰っている場合などで、「技術・人文知識・国際業務」で認められない業務内容に従事する場合などに検討するのがよい
定住者小学校卒業までに入国し日本で高校を卒業した場合に選択可能
特定活動高校卒業までに入国し日本で高校を卒業した場合に選択可能
※親(身元保証人)も日本に在留していることが必要
※大卒者の場合は、「技術・人文知識・国際業務」、「特定活動46号」などとメリット・デメリットを比較しながら決めるのがよいと思います。

要件を満たしていれば、どの在留資格を選択しても基本的には問題ありません。ただし、それぞれメリット・デメリットがあるため、状況に合わせて十分に比較検討されて選択されるのがよいと思います。

どのような基準で就労ビザを選ぶのがよいのか

日本育ちの方で大卒の方の就労ビザへの変更への検討は、実はすごく細かく複雑で、一概に回答するのが難しいです。その中でもいくつか比較検討する際の基準を挙げて見たく思います。

①業務内容を基準に選択をする

これはある意味大原則になります。大卒・専門卒の方の場合、在留資格『技術・人文知識・国際業務』をまずは思い浮かべるのではないでしょうか。業務内容が確実に『技術・人文知識・国際業務』の範囲内と言い切れる場合には、在留資格『技術・人文知識・国際業務』や在留資格『高度専門職1号』を選択しても問題ありません。逆を言えば、在留資格『技術・人文知識・国際業務』で認められる業務内容の範囲内でない場合は、「定住者」や「特定活動」を選択しなければなりません。
また、専門卒の方の場合で『技術・人文知識・国際業務』に変更する場合は、大卒者と比較して申請の難易度が上がるため、審査期間が長くかかってしまい入社式までの在留資格の変更が間に合わなかったり、そもそも不許可になる可能性が高い場合があります。このような場合には、より確実に許可を取るためにも「定住者」や「特定活動」を選択するのがよいと思います。
また、大卒者の場合でも、例えばレストランで調理や接客をするなど、在留資格『技術・人文知識・国際業務』で申請した場合でも、不許可になる可能性が高いことが想定される業務内容の場合には、N1を取得している場合には在留資格『特定活動(46号・本邦の大学卒業者)』や本制度の『特定活動』を検討するのがよいと思います。

②永住許可までの最短ルートを基準に選択をする

例えば小学生のころから日本で生活している場合には、「定住者」の在留資格は非常に魅力的に見えると思います。しかし、もし、在留資格『高度専門職1号』の検討が可能な場合には、高度専門職を選択したほうが永住許可まで近づくと言える場合も有り得ると言えます。
まず、高度専門職の場合は必ず5年の在留期間がもらえます。また、3年以上働くことで永住許可申請の土俵に乗ります。早ければ就職して3年で永住者がもらえる可能性があります。

ただし、永住許可までの最短ルートは人それぞれになるため、上記はあくまで一例でとらえてください。

まとめ

以上、高校生までに来日して日本で育った外国人が就職する際に選択できる在留資格について説明しました。
日本育ちの外国人の場合、就職時に選択可能な在留資格の幅が広がります。また、従事可能な業務内容や学歴要件も柔軟に考慮されているため、比較的自由に職業選択・就職が可能です。この制度を知っている・知っていないで、日本での生き方や考え方が変わってしまうと言えるぐらい重要な制度には違いありません。外国人本人もその方を雇用する企業の方も、本制度を十二分に活用されてください。

【行政書士のアドバイス】
日本育ちの外国人の場合、条件さえそろえば「学歴や職歴」や「就労制限」を気にすることなく就職活動をし、就労可能な在留資格に変更することが可能です。
ビザの選び方・考え方に悩まれた場合にはお気軽に当事務所にご相談下さい。

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