在留資格(ビザ)の申請時の押印が不要になったけれども、その申請本当に大丈夫!?

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政府の方針で行政手続きの多くの書類の「押印」が不要になりつつあります。在留資格(ビザ)の申請手続きも同じで2020年12月に押印が不要となりました。場合によっては、申請人(外国人)本人のみで在留資格の申請が完結することも可能となったわけですが、「押印」不要の注意点について説明致します。

そもそも在留資格(ビザ)の手続きはどのような時に必要?

在留資格(ビザ)の手続きが必要になるシーンは大きく分けて2つです。

在留資格(ビザ)の手続きが必要なシーン
  1. 在留資格(目的)に関する手続き
  2. 在留期間に関する手続き

在留資格(目的)に関する手続きについて

そもそも「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2022年5月現在29種類の在留資格があります。在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。そして、在留資格で定められた範囲内の活動を行うことになります。

例えば、「留学」ビザを持っている人は学校で勉強することがメインの活動内容となります。そのため、学校を卒業し就職するとなると、仕事内容に合わせた在留資格に変更しなければなりません。

在留資格の切替のイメージ

つまり、在留資格(ビザ)の申請が必要になるタイミングとしては、まずは「入国時」そして「活動内容を変更するとき」があります。
今回は「就労ビザ」に限定して説明をすると、「就労ビザ」を取得するタイミングとしては主に下記のタイミングが挙げられます。

まず、外国人が申請時点で「海外在住」の場合は、就労者として入国するために「在留資格認定証明書交付申請」を行わなければなりません。「在留資格認定書」が発行されたら母国の日本大使館で「査証(VISA)」の発給を受けて入国をします。

既に外国人が日本にいる場合は3つのパターンがあります。

  1. 留学生が就職する場合:「在留資格変更許可申請」で「留学」ビザから変更を行う
  2. 既に就労ビザを持っている人が転職をする場合①:活動内容や活動場所が指定されている在留資格の場合(※)の場合や在留資格に定められている活動内容とは異なる職に就く場合は、転職のタイミングで変更申請を行う
  3. 既に就労ビザを持っている人が転職をする場合②:2-①に該当しなければ申請の必要無し
    ※一例:「特定技能」「高度専門職」「特定活動(46号)」を持っている人、またこれらに該当する業務内容に従事する人

以上のような場合は、「在留資格認定証明書交付申請」もしくは「在留資格変更許可申請」を行います。

在留期間に関する手続きについて

在留資格には「永住者」を除いて在留期限が定められます。在留資格や在留状況にもよりますが就労ビザの場合、「1年」「3年」「5年」の期間が与えられることが多いです。この期間を経過後も就労の予定があり、また法律で定められている場合に限り更新を行うことができます。
具体的には、就労ビザの中でも「技術・人文知識・国際業務」「高度専門職1号」「特定活動(46号)」「技能」などはその活動内での在留が続く限り更新が可能です。一方「特定技能」は最大で5年の在留と定められていることから無制限に更新手続きができるわけではありません。

基本的には、「在留期限」が到来する前に「在留期間更新許可申請」を行う必要があります。

どうして申請書類の確認をするべきなのか?

申請書類の確認を行わない場合、「不法就労」に関わってしまう可能性があります。不法就労者を雇用することは「不法就労助長罪」に該当することになり、これは「知らなかった」はではすまされません。

過去に押印が必要だったのはどの書類なのか

過去に押印をしていた書類としては、「申請書」と「在職証明書」「雇用条件書」が該当するのではないでしょうか。
実際に、過去に申請時に押印がなければ入管が受理されなかった押印箇所としては「申請書」の最後のページ(現在は4ページ目、2021年2月以前は6ページ目)になります。
現在では、「特定技能」に関する申請書類(雇用条件書等)を除き押印は原則不要となりました。

つまり、企業の規模が大きい場合などにはほとんど提出書類は不要となり、経営者や人事の方を通すことなしに申請が可能な状況です。

知らず知らずのうちに「不法就労」に関わっているかも!?

「在留資格認定証明書交付申請」「在留資格変更許可申請」「在留期間更新許可申請」全ての申請において「活動内容」を記載する部分があります。

在留資格の申請で許可を得るためのポイントは「誰が」「どこで」「どのような活動をするのか」の3点が要件に当てはまっている必要があります。特に重要なのが「どのような活動をするのか」という部分になり、業務内容次第では要件に当てはまらない場合があります。

もし、「実際の業務内容」とは「異なる業務内容」を申告しているとなると、これは「不法就労」に該当する場合があります。不法就労者を雇用することは「不法就労助長罪」に該当します。

在留資格の申請時の注意点

在留資格の手続きを、絶対に本人や人材会社、行政書士に丸投げにしないでください。
2020年12月の法改正により申請書類の社判が不要になりました。会社の規模によっては在留資格の手続きに必要な書類がほとんど求められないこともあり、また社判押印が不要となたため、外国人留学生や人材会社、行政書士だけで採用担当者が関わることなく申請が可能となりました。
このため、会社で必要な書類を準備したとしても、提出前の確認をしなければ本人がどんな申請をしているか分かりません。

在留資格の手続きにおいて「知らなかった」は通用しません。
許可を受けずに在留資格で認められた活動の範囲外を超えて行う就労は「不法就労」に値します。また、在留資格の許可を得るため嘘の内容を申請することは「虚偽申請」です。留学生は、在留資格を取得できなければ日本にいられません。また、日本にいる同じ国籍のネットワークでは様々な情報が錯そうしています。そうでなくても、日本語能力不足・思い込み・勘違い等で誤った内容の申請をする可能性は十分にあります。つまり、悪気もなく虚偽申請を行ってしまうこともあるということです。押印が不要とは言え、内容を確認してから提出させてください。
残念ながら人材紹介会社、行政書士の中には”許可を得るためだけのテクニック”を駆使して手段を選ばずに許可を得る人もいます。そしてたちが悪いことに悪意もなく「お客様のため」と勘違いをしている人がいるのも事実です。(当然、全員ではないです。)

必ず申請内容は申請前に確認をして下さい。そして実際と違うことが書いてある場合には、疑問に持ち訂正をするように指示しましょう。

<strong>『出入国管理及び難民認定法』の違反について</strong>

【虚偽申請に対する罪名】
不利益な事実を隠したり、嘘の内容の申請をすることは虚偽申請になります。
この場合「在留資格等不正取得罪(入管法70条1項)」「営利目的在留資格等不正取得助長罪(入管法第74条の6)」という刑罰が課され、3年以下の懲役・禁固若しくは3百万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。

【在留資格の範囲外の業務に対する罪名】
不法に入国したり、在留期間を超えて不法に在留したりするなどして、正規の在留資格を持たない外国人を行う就労のこと。また、正規の在留資格を持っている方でも、許可を受けないで在留資格で認められた活動の範囲を超えて行う就労についても不法就労に該当します。
この場合、「不法就労罪(入管法第73条の2)」「不法就労助長罪(入管法第73条の2)」という刑罰が課され、3年以下の懲役・禁固若しくは3百万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。

不法就労についての詳細はこちら→警視庁『外国人の適正雇用について

申請書類の見るべきポイント

入管に提出する申請書類については、基本的に全て確認をして下さい。理由書について、外部の専門家に作成を委任する場合でも必ず記載内容に誤りが無いか一読をしましょう。

ポイント①:申請書について

申請書は、本人のことであっても全て確認しましょう。
外国人本人が記入する場合、日本語の能力の問題で誤る場合も十分にあります。勘違いしている部分などは特にチェックをしてあげてください。

とは言え、本来企業が作成する部分があるため最低限、その部分については確認してください。
申請書類には「申請人等作成用」(前半)というページと「所属機関等作成用」(後半)というページに分かれています。この「所属機関等作成用」のページについては必ず確認し、特に「業務内容」が実際に行う内容であるかを確認してください。「許可が出やすい業務内容」に書き換えがされていないか、もしそうなっていて正しい記載方法が分からない場合は専門家に相談されることをお勧め致します。

ポイント②:理由書について

申請内容によっては、「理由書」を添付する場合もあると思います。そもそも在留資格(ビザ)の申請において、許可を得るためのポイントは以下の2点に集約されると言えます。

  • きちんと要件を満たしているか確認すること
  • きちんと要件を満たしていることをアピールすること

在留資格の審査は書面審査が原則であり、提出された書類から判断します。入管のHPに記載されている必要書類からだけでは、要件を満たしていることをアピールしきれない場合もあります。この場合に補足で提出するものが「理由書」になります。
ここで、許可を得るために内容を捏造をしてしまうと、それは「在留資格等不正取得罪(入管法70条1項2号の2)」に該当してしまいます。もし、このような申請を勝手にされてしまうと企業としては不法就労助長罪に問われかねません。このため、例え専門家が作成した理由書であっても内容を確認しなければなりません。

まとめ

以上、在留資格(ビザ)の申請についての注意点について説明しました。
政府の方針で押印手続きは不要になりましたが、外国人を雇用する企業としては引き続き、しっかりと申請書の確認を行う必要があります。また、行政書士などに申請手続きを依頼する場合も同様です。知らず知らずのうちに違法状態に巻き込まれることがないように、最後は会社の方が確認を行いトラブルを未然に防ぐようにしましょう。

【行政書士からのアドバイス】
申請書類は原則押印不要となりましたが、内容は必ず確認をする必要があります。
特に外国籍従業員にビザのことは一任している場合でも、その申請内容に誤りがある場合は、企業にも影響する場合があります。在留資格の申請や管理について分からないことがある場合は、専門家へ相談されるようにして下さい。

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