コロナで帰国できない人のための「特定活動」や特定技能で就労予定の方のための「特定活動」など、2020年以降、在留資格「特定活動」の種類が増えました。その結果、「特定活動だけど就職できますか?」「特定活動ですが何時間まで働けますか?」といった問い合わせが非常に増えております。本編では特に問合せが多く理解が進んでいない内容を中心に、特定活動の就労可否の見分け方について解説をします。
在留資格「特定活動」について
在留資格「特定活動」は、「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」の場合に決定される在留資格で、平たく言うと「その他」になります。ですので、「特定活動」という在留資格を持つ方々は在留目的は人それぞれで、一言で「○○をするために日本にいる」とは括れません。
在留資格の種類について
「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2022年10月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。
ここに明示されていない活動内容以外でも、個別に許可がもらえる場合があって、そのような場合に決定される在留資格が「特定活動」となります。
典型的な例を挙げると、インターンシップやEPAの介護士、高度専門職の家族などがあります。その他にも、就職活動をするためのものや、コロナで空港閉鎖やフライトが無いために帰国できない状況がある場合には帰国困難者のための特定活動もあります。また最近では、特定技能の申請準備期間のための特定活動もあります。
「告示」と「告示外」について
この特定活動は、さらに「告示特定活動」と「告示外特定活動」に分けることができます。「告示」と「告示外」の分け方としては、あらかじめ活動内容が定められていて、法務大臣が告示をもって定めている活動の場合(活動内容や要件などが決まっている)は「告示特定活動」となり、それに該当しない場合(法務大臣が特別な事情により人道上在留を認める場合など)は「告示外特定活動」となります。
「告示特定活動」の典型例
告示 | 典型的な告示特定活動の例 |
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5号 | ワーキングホリデー |
9号 | インターンシップ |
25号 | 医療滞在 |
26号 | 医療滞在同伴者 |
32号 | 外国人建設就労者 |
33号 | 高度専門職外国人の就労する配偶者 |
34号 | 高度専門職外国人又はその配偶者の親 |
46号 | 本邦の大学卒業者 |
47号 | 本邦大学卒業者の配偶者 |
上記のほかに、EPA(介護士・候補者、看護士・候補者)やその家族も告示特定活動になります。
「告示外特定活動」の典型例
例えば、以下のような活動目的があります。「告示外特定活動」の場合は、日本国内にいる場合に変更して取得するものになり、海外に在住している人が直接申請することはできません。
告示外特定活動の典型例 |
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本邦の大学等を卒業した留学生が就職活動を行う場合 ▶参考:https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities15.html |
大学等の在学中又は卒業後に就職先が内定し採用まで滞在をする場合 ▶参考:https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri07_00013.html |
「特定技能1号」への移行準備 ▶参考:https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/10_00025.html |
卒業後に起業のための準備活動を行う留学生 ▶参考:https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities13.html |
出国準備 |
「特定活動」では就労ができるのか
「特定活動」の場合は、「就労できる場合」と「就労できない場合」があります。
さらに、就労ができる場合には「どこでも就労ができる場合」もあれば、「特定の企業でしか就労ができない場合」もあり、さらに「フルタイムで働いていい場合」と「週28時間までしか働けない場合」に分けられます。
まずは在留カードの確認をしましょう
在留カードは、基本的に3か月を超えて日本に滞在することが許された外国人に対して、法務省出入国在留管理庁により発行されされるものになります。在留カードには、氏名、生年月日、性別、国籍、地域、住居地、在留資格、在留期間といった基本情報が記載されています。
「3月」未満の在留期間が交付された人や「短期滞在」の在留資格が交付された人、そもそも在留資格を有していない人も交付されません。また、特別永住者の方には「特別永住者証明書」が交付されます。
在留カードは、16歳未満の子どもや特別永住者を除き携帯義務があり、大前提、在留カードを所持していない人を働かすわけにはいきません。
在留カードのみるポイント① 本人であるかどうか
16歳以上の方の在留カードには「顔写真」があります。
まずはその在留カードの持ち主であるかを確認しましょう。在留カードを貸し借りして「不法就労」をすることは起こり得ますし、実際にそれが原因で雇い主が「不法就労助長罪」に問われるケースも発生しています。
在留カードのみるポイント② 在留期限
在留期限は1日でも超えてはいけません。また、永住者の場合でも在留カードには有効期限があります。必ず確認するようにしましょう。もし在留期限当日に、在留期限に気がついたらとにかく手ぶらでも入管に行って相談・申請をしなくてはなりません。
在留期限の更新は、在留期限当日までに行います(実際は前もって申請するようにしましょう)。
申請日から翌日以降どうなるのかというと2か月間の「特例期間」に入ります。特例期間中は、引き続き申請前の在留資格の活動を行うことができます。
在留資格の申請を行ったかどうかは、在留カードの裏面を見ればわかります。右下に「在留資格変更許可申請中」や「在留期間更新許可申請中」の記載があれば、表面の在留期限が到来していても、特例期間に入っているためオーバーステイではありません。
在留カードのみるポイント③ 就労が可能かどうか
表面の就労制限の有無は必ず確認します。
「就労制限の有無」の項目には、下記のような文言の記載があります。
- 「在留資格に基づく就労活動のみ可」
- 「指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可」
- 「指定書により指定された就労活動のみ可」
- 「就労制限なし」
- 「就労不可」
1-3の場合は、「在留資格」で定められた範囲内で報酬を得る活動が可能です。また、4の場合は就労制限は無いため仕事は自由にできます。5の場合は、「資格外活動許可」を得ていれば就労ができる場合があります。
なお、2,3に出てくる「指定書」というものはパスポートに貼付されるものになります。
「就労制限の有無」の欄に「指定書」という単語が出てきた場合には、パスポートに貼付されている「指定書」を確認します。
「指定書」で就労が制限されていないことが確認できれば就労は可能になりますが、例えば特定の企業でしか就労できない場合もあり、その場合には「指定書」に指定された企業のみでしか就労することはできません(詳しくは後述)
在留カードのみるポイント④ 偽装在留カードでないか確認
出入国在留管理庁の公式アプリ「在留カード等読取アプリケーション」を使用すれば、スマートフォンにアプリをダウンロードするだけで偽装在留カードかどうかの確認を取ることができます。
偽装在留カードは出回っているため、うっかり不法就労助長罪になってしまわないためにも必ずアプリで確認を行いましょう。
資格外活動許可について
活動制限のある「在留資格」で定められた範囲外の活動を行うことを「資格外活動」と言い、特に報酬を得るような資格外の活動は原則禁止されています。そのため、収入や報酬を得る活動を行うためには予め「資格外活動許可」を取っておく必要があります。
「資格外活動許可」には「包括許可」と「個別許可」があります。「週28時間」まで就労可能な留学生アルバイトについては「包括許可」に分類されます。これが、基本的にタイムカードで管理できる仕事(アルバイトやパート)については(一部の風営法で規制される業種を除き)どのような仕事でも認められます(ほかの在留資格では認められない単純労働やレジなどの接客業務も可能です)。
一方で、既に就労ビザを持っている場合で現在の在留資格で認められない範囲外(資格外)の仕事を行う場合や、留学生の場合でもタイムカードで管理できないような業務を行い場合は、多くの場合は「個別許可」を取得することになります。「個別許可」の場合は時間制限はありませんが「包括許可」とも共通し、大前提、現在もっている「在留資格」の活動に支障が出るほど活動することは許されません。
表面が「就労不可」となっている場合は、裏面の「資格外活動許可欄」を確認するとことで、就労ができるかどうかを確認することができます。
【資格外活動許可欄】
この欄には下記のような文言がかかれているので確認しましょう。
①「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く。)」
②「許可(資格外活動許可所に記載された範囲内の活動)」
※②については、資格外活動許可所を確認してください。
“就労ビザ”の場合でも就労ができない場合がある!?
在留資格「特定活動」の方の場合、就労ができるかできないかの判断は、在留カード裏面の「資格外活動許可欄」と「指定書」で行います。
「資格外活動許可欄」で「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く。)」と書かれている場合は、1週間に28時間までならば就労が可能です。
一方で、「指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可」「指定書により指定された就労活動のみ可」と書かれている場合は、「指定書」を確認し就業先が指定されていないか、また就業先は指定されていない場合でも就労可能時間に制限が無いかを確認します。
就業先が指定されている場合の典型的な特定活動は以下の通りです。この活動目的で在留カードを取得した方の場合は、転職をする場合などには就労前に「在留資格変更許可申請」を行って、あらかじめ許可を得ておく必要があります。
特定活動で就労先が指定されている一例 |
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33号・高度専門職外国人の就労する配偶者 |
46号・本邦の大学卒業者 |
告示外・特定技能1号へ移行準備 |
在留資格「特定活動」の人を雇用する場合に確認すること
前章で見た通り、特定活動は「どこでも就労ができる場合」もあれば、「特定の企業でしか就労ができない場合」もあり、さらに「フルタイムで働いていい場合」と「週28時間までしか働けない場合」に分けられます。しかし、面接に来た外国籍の方はそれを正しく理解できていないという場合もあります。本人の自己申告を鵜呑みにするのではなく、必ず採用者の方がご自身の目で確認を確認をするようにしましょう。
アルバイトの場合
現在、「特定活動」で在留している多くの方が”元学生”です。元学生の場合は、「就職活動のための特定活動」や「出国準備(・帰国困難)」などで在留している方が多くいます。アルバイトで面接に来られる多くの方は、特定活動の中でも「就労不可」と書かれている在留カードをお持ちの方がほとんどです。
この場合には、在留カードの裏面の資格外活動許可の欄を確認しましょう。資格外活動許可欄にスタンプが押してある場合には、週28時間の範囲内でアルバイトをさせることができます。
一方で、「指定書」を見たときに特定の企業名が入っている場合には、その企業でしか働けないのでアルバイトでも雇用することはできません。
※上記は一般的な話しになります。この他にもイレギュラーな状況はありますのでご注意下さい。
社員(フルタイム)の場合
フルタイム雇用をする場合は、多くのケースで就労ビザへの変更が必要になります。「特定活動」で在留している人の場合、現在何をしているかだけでなく、どうしてその在留活動になったのかまで確認をし、就労ビザが許可され得る人材かを事前に確認しておく必要があります。
フルタイム採用をする場合は多くのケースで“在留資格変更許可申請”が必要
在留資格「特定活動」の方を社員(フルタイム)で雇用する前には、指定書で「企業」や「就労時間の制限(週28時間まで)」の指定が無ければ、フルタイムですぐに雇用することができます。
一方で、「就労不可」の在留カードをお持ちの方や、指定書で「企業」や「就労時間の制限(週28時間まで)」の記載が見当たる場合には、就業開始日までに就労が可能な在留資格に変更する必要があります。
よって、就労ビザの場合の在留資格変更許可申請は、内定が決まったら速やかにかつ在留期限満了日までに行います。前述の通り、許可が確定して新しい在留カードを受け取ってからでないと就業は開始できません。審査期間は業務内容や企業規模にもより、早いと2週間、時間のかかる申請の場合には半年かかる場合もあります。このため、速やかに申請することをお勧めします。
新卒の学生の場合は、春の卒業前の12月より在留資格変更許可申請の受付が始まり、卒業後~入社までの間に在留カードを受け取ることになります。(卒業までに結果が出ないこともあります)
※上記は一般的な話しになります。この他にもイレギュラーな状況はありますのでご注意下さい。
内定を出す前に今までの在留状況に問題が無かったかを確認する
ここでポイントになるのが「何故、特定活動になったのか」になります。
在留資格「特定活動」の人をフルタイム採用をする場合には、この問いかけをされることをお勧めします。
よくあるケースとして「留学ビザで在留していたが延長(更新)の申請をしたところ、オーバーワークが理由で不許可になった。それから特定活動(出国準備)で在留している」という方は少なくありません。一概には言えませんが、一度審査の結果、不許可になっている人で帰国を促されているような方の場合、再度申請をしても許可をもらうことが難しいケースが多くあります。理由が過去の在留状況によるものの場合は、何度申請をしても結果は変わらないことが多いです。こういった方を採用されたい場合には、一度専門家の方に許可の見込みを診断されることをお勧めします(※当事務所でもご相談を承っております)。また、そもそも在留資格の性質的に、他の在留資格へ変更することが制度上できないものもあります(例:外国人美容師、インターンシップ)。
まとめ
以上、在留資格「特定活動」について解説しました。
在留資格「特定活動」では様々な活動目的で在留している方がいますが、就労の可否は「在留カード」やパスポートに貼付されている「指定書」を見て判断をすることになります。アルバイトの場合は、「資格外活動許可」や指定書で就労が可能となっている場合には可能です。フルタイムの場合には、多くの場合で事前に就労ビザへの変更が必要です。特定活動の方の中には、そもそも他の在留資格へ変更することが制度上できないものや、過去の在留不良が原因で就労ビザへの変更が難しい場合もあるので注意が必要です。