『特定活動(46号)』ってどんなビザ?『技術・人文知識・国際業務』との違いは何?

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『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』は2019年5月に新設された比較的新しい在留資格です。これは、日本の大学を卒業した高い日本語能力を持つ人が、習得した知識や応用的能力のほか、留学生として経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを要件として、幅広い業務に従事する活動を認める在留資格です。『技術・人文知識・国際業務』よりも幅広い業務に従事する活動を認められます。本編では『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』について解説をしていきたく思います。

在留資格とは

「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2022年3月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」(ここでは便宜上、在留資格のことを“ビザ”と言います)という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。

在留資格の切替のイメージ

例えば、上記の方の場合、日本語学校の学生の間は「留学」ビザで活動します。その後、料理しになった場合は「技能」というビザに切り替えなければなりません。また、独立開業してレストランの経営者になった場合は「経営・管理」ビザを取得します。もし、将来、日本への永住を決意し一定の要件を満たしているようであれば、「永住者」ビザを取得することもできます。

在留資格の一覧は下記になりますが、言い換えると以下に当てはまるものがない場合は、日本での滞在はできないということになります。

在留資格の一覧

在留資格は、大きく3つのポイントから構成されています。

就労ビザの3つのポイント
①誰が
②どこで
③どのような業務内容を行うのか

では、『特定活動( 46号・本邦大学卒業者))』がどのような在留資格であるかをこの3つのポイントから説明していきます。

在留資格『特定活動(46号)』とは

『特定活動 (46号・本邦大学卒業者) 』は、ガイドラインの中で下記のように定められています。

本制度は、本邦大学卒業者が本邦の公私の機関において、本邦の大学等において修得した広い知識、応用的能力等のほか、留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを要件として、幅広い業務に従事する活動を認めるものです。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格においては、一般的なサービス業務や製造業務等が主たる活動となるものは認められませんが、本制度においては、上記諸要件が満たされれば、これらの活動も可能です。ただし、法律上資格を有する方が行うこととされている業務(業務独占資格が必要なもの)及び風俗関係業務に従事することは認められません。

留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン (http://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri07_00038.html

『技術・人文知識・国際業務』の在留資格よりも幅広い業務(例えば、現場作業やサービス業務)に従事することができることが最大の特徴です。

在留期間は、「3か月」「6ヶ月」「1年」「3年」「5年」が与えられ、更新をし続ければ「永住者」ビザの申請も将来的には可能です。
原則として、「留学」の在留資格からの変更許可時や初回の在留期間更新許可時に決定される在留期間は「1年」となります。

また、家族の帯同も認められます。

「誰が」:どのような人が申請できるのか

『技術・人文知識・国際業務』とは異なり、条件がかなり厳しいのが『特定活動(46号)』の特徴です。

以下のいずれも満たしている必要があります。

1.日本の大学(院)、短期大学を卒業している(※1)
または、認定を受けた専門学校を修了し高度専門士の称号を得ている(※2)
2.高い日本語能力を有していること(下記のいずれか)
 a.日本語能力検定N1 or BJTビジネス日本語能力テスト480点以上
 b.大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業した
  ※外国の大学における「日本語」専攻でも問題ありませんが、さらに日本の大学(院)を卒業する必要があります。

※1 2024年2月末に制度の変更がありました。それまでは大卒以上に限られていましたが、短期大学卒業者も対象となりました。
※2 高度専門士とは修業年限が4年以上の専門課程になり、2年制の「専門士」とは異なる制度となります。
また認定とは、「「専修学校の専門課程における外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定に関する規程(令和5年文部科学省告示第53号)」第2条に定める文部科学大臣による認定」を指します。

日本語能力検定1級の取得はかなり難しくハードルが高いと言えます。しかし、日本の大学等に通われている方であれば、十分目指せる能力はあるため在学中に取得されることをお勧めいたします。

「どこで」:どのような場所で働くのか

『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』が就業する場所は以下の要件を満たす必要があります。

日本の公私の機関で働くこと。
ただし、派遣社員として派遣先で働くことはNG。一部法律で制限のある業種や風俗営業関係も認められません。

『特定活動 (46号・本邦大学卒業者) 』の場合、『技術・人文知識・国際業務』と異なる部分もあります。
まず、「本邦の公私の機関との契約に基づいて勤務する」という部分は共通していますが、『特定活動 (46号・本邦大学卒業者) 』の場合は、勤務先を指定されることになります。つまり、在留資格を取得した際に在留カードの交付に加えて、パスポートに「指定書」が貼付され「勤務先」まで明記されることになります。
勤務先が指定されることから、派遣社員としての勤務はできません

また、ガイドラインの記載の通り、法律上資格を有する方が行うとされている業務風俗営業関係業務(スナック、キャバクラ、パチンコ、ゲームセンター等)に従事することはできません。風俗営業関係の業務の場合、接客だけがNGという訳ではなく掃除なども含めて認められません。

また、転職をして勤務する会社が変更となる場合には「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。

「何をするのか」:どのような業務ができるのか

特定活動 (46号・本邦大学卒業者) で求められる業務のポイントは以下の2つです。

  • 「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」に従事すること
  • 本邦の大学又は大学院において習得した広い知識及び応用的能力等を活用するものと認められること
    ⇒商品企画、技術開発、営業、管理、業務、企画業務(広報)、教育等

『特定活動(46号)』は『技術・人文知識・国際業務』で従事することができない単純労働をすることも可能ですが、それのみに従事することはできません。あくまで、『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の対象となる学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれていること、又は今後当該業務に従事することが見込まれれている必要があります。

例えば以下のような業務に従事することができます。(※一例)

※在留資格『技術・人文知識・国際業務』=技人国
 特定活動(46号・本邦大学卒業者)=特定活動 と表記します

ビルメンテ・ベッドメイキング

特定活動 現場のアルバイトスタッフに指導教育・管理をしつつも、自身も清掃業務を行うことが可
技人国 本社勤務が基本。原則として現業は不可

○飲食店

特定活動 現場のスタッフの指導教育やシフト管理をしながら(フロアマネージャー的ポジション)、現業に従事することが可能
技人国基本的には複数店舗の管理者、ホールスタッフ等の現業は研修時の一時的なもの

○フライス盤の操作・設計業務

特定活動 設計業務を行いながら、フライス盤の操作をし加工作業を行うことも可能。
技人国 設計業務がメイン。フライス盤の操作は1日のうち一時的

○ホテルや宿泊業での通訳・ベルスタッフ・清掃業務

特定活動 翻訳通訳に加えて、ベルスタッフやドアマン、客室の掃除なども業務も可能
技人国日本人も同様に行っていることを前提に、ベルスタッフや清掃業務は付随業務で限定的な範囲内であれば可

○タクシー会社においての観光案内を行うタクシードライバー

特定活動観光プランの企画立案を行いつつ、ドライバーとして観光案内も可能
技人国バックオフィス部門における企画業務であれば可

○食品工場における技能実習生等への指導

特定活動 日本人従業員からの指示を外国籍スタッフに通訳しつつ、自身も製造ラインに入って作業を行うことも可能
技人国 翻訳通訳で伝達するのみでラインでの作業は不可

契約形態の注意点

常勤の職員として従事することが前提となります。このため、フルタイムに限られ短時間のパートタイムやアルバイトは認められません。また、他の在留資格同様に、日本人が従事する場合の報酬と同等以上の報酬を受ける必要があります。

在留資格『技術・人文知識・国際業務』との比較

『特定活動 (46号・本邦大学卒業者) 』が『技術・人文知識・国際業務』の在留資格と比較して、共通している部分とそうでない部分があることが分かったと思います。ここで就労ビザの3つのポイントである「誰が」「どこで」「何をするのか」を比較したいと思います。

誰が:どのような人が申請できるのか

特定活動 日本の大学(院)を卒業し、日本語検定1級を持っているor日本語学科を専攻していた
技人国 大学(短大・院)を卒業、もしくは日本の専門学校を卒業している、もしくは10年の実務経験がある

どこで:どのような場所で働くのか

特定活動 公私の機関と契約を行う。ただし、派遣社員は不可。常勤職員として勤務(副業のような形態は認められない)
技人国公私の機関と契約を行う。派遣社員でも可。きちんと届け出を行い条件を満たしていれば副業も可能

何をするのか:どのような業務ができるのか

特定活動 日本語を使用+学術的素養を背景とする業務に加えて単純労働なども可能。
技人国 学術的素養を背景とする業務が基本。単純労働は認められても限定的

特定活動(46号・本邦大学卒業者)を検討する際のポイント

『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』は要件は厳しい一方で、取得できると非常に汎用性のある在留資格であることが分かります。日本の「総合職」のような柔軟性の求められるような雇用の仕方において、在留資格による活動の制限をあまり受けることなく雇用することが可能です。 一方できちんとした比較検討ができない場合、不法就労や特定活動(46号・本邦大学卒業者)のデメリットがメリットを上回ってしまう場合があります。
次節より本邦の大学卒業者の比較検討ポイントを見ていきます。

『特定活動(46号 ・ 本邦大学卒業者) 』の検討ポイント

『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』はメリットが大きい分、デメリットもあります。また『特定活動』という名前のイメージからマイナスのイメージも強く誤解が生じがちです。争点になるポイントは次の通りです。

『技術・人文知識・国際業務』にこだわりすぎると「不法就労」になる可能がある

『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』の場合、『技術・人文知識・国際業務』の在留資格を選択することができると後者を選択しがちの傾向があります。しかし、業務における現業・単純労働・接客業務などの比率が高い場合において、実際の就業スケジュールや内容と異なる「雇用理由書」を提出して『技術・人文知識・国際業務』許可を得た場合、「理由書」と実際が違う場合は「不法就労」に問われる可能性があります。この場合、雇用側も「不法就労助長罪」に該当します。

しかし、『 特定活動(46号 ・ 本邦大学卒業者) 』の要件を満たしている場合に、無理やり『技術・人文知識・国際業務』で申請をして結果として摘発されるというのは非常にもったいないことです。

一方、『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』の場合であっても、専ら「指示を受けるだけ・日本語を使用しない」ような現業に従事することはできません。

新卒の場合、在留期間が「1年」が2回続く

ガイドラインに記載の通り、原則として「留学」の在留資格からの変更許可時、及び初回の在留期間更新許可時に決定される在留期間は「1年」となります。
『技術・人文知識・国際業務』の場合、日本の大学を卒業して高い日本語能力を持っている場合、就職先や業務内容にもよりますが比較的「3年」「5年」の在留資格は出やすい傾向にあります。その点、『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』は必ず「1年」であることを考えるとデメリットに感じられるかもしれません。

転職時にはその都度「在留資格変更許可申請」が必要

『技術・人文知識・国際業務』の場合、転職時に「在留資格変更許可申請」の提出は必要ありませんが、『特定活動(46号・本邦の大学卒業者)』である場合は、転職のタイミングで「在留資格変更許可申請」を行い許可を得てから就労しなくてはなりません。

他の在留資格との比較

高度人材の就労ビザはそれぞれ従事できる活動や要件が異なってきます。『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』『高度専門職1号(ロ)』の要件を満たす多くの人材が『技術・人文知識・国際業務』の要件を満たすことになりますが、活動内容が異なる理由から慎重な比較検討が必要です。

以下は、代表的な就労ビザの要件と業務内容、その他の諸条件の比較になります。まずは、どの在留資格が外国籍人材にとってベストであるかを検討されてみてください。

『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』の在留資格を申請のココが難しい!

以上の通り、『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』の場合、現業に従事できることから業務の本質についてきちんと押さえないと在留資格の申請時に不許可が出てしまうことや、結果的に「不法就労」に該当しかねない場合があり、他の在留資格との比較検討を十分に行う必要があります。

「在留資格の難易度は高くない」「理由書は不要」「必要書類は少な目」といった情報も見られますが、実際のところ『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』を取得すべき人の申請の場合は、しっかりと準備を行わないと「不許可」になることも十分にあり得ます。

『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』 の在留資格申請の必要書類

『特定活動( 46号・本邦大学卒業者) 』で必要になる書類は以下の通りです。
『技術・人文知識・国際業務』で必要であった、「決算書」や「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」は不要です。

1.申請書
2.証明写真(4cm×3cm)※申請前3ヶ月以内に撮影された者
3.返信用封筒(在留資格認定証明書交付申請時のみ。404円の切手を貼付)
4.パスポート及び在留カード(在留資格変更許可申請時のみ)
5.申請人の活動内容を明らかにする資料(労働条件通知書等)
6.雇用理由書(様式自由)
7.申請人の学歴を証明する文書(卒業証書の写し又は卒業証明書)
8.申請人の日本語能力を証明する文書(N1又はJTビジネス日本語能力テスト480点以上、外国の大学で日本語を専攻した場合はその内容の書かれた卒業証明書)
9.事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
 a.勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が記載された案内書
 b.その他の勤務先等の作成した上記aに準ずる文書
 c.勤務先のホームページの写し(事業概要が確認できるトップページ等のみで可)
 d.登記事項証明書

「5.雇用理由書」は提出は必須とはされていませんが、『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』の性質上、この在留資格を意図的に選択するべきシーンは限られてきます。他の在留資格と比較検討した結果、本在留資格を選んだのであればおそらく業務内容は「『技術・人文知識・国際業務』や他の在留資格では認められない業務内容を含んでいる」ことがほとんどになると思います。
これらを踏まえると、理由書は予め提出していたほうがよいと言えます。

まとめ

以上、在留資格『特定活動 (46号・本邦大学卒業者) 』についてまとめました。『特定活動 (46号・本邦大学卒業者) 』は要件は厳しい一方で、取得できると非常に汎用性のある在留資格であることが分かります。日本の「総合職」のような柔軟性の求められるような雇用の仕方において、在留資格による活動の制限をあまり受けることなく雇用することが可能です。企業にとっても積極的に雇用をしたい人材になるはずです。

【行政書士からのアドバイス】
特定活動46号は、「特定活動」という名前からどうすべきか悩まれている方も多いかと思います。
『技術・人文知識・国際業務』や『高度専門職1号(ロ)』などと迷われている場合、まずはお仕事内容にフォーカスしてみるのがよいと思います。
なかなか決められない場合は、お気軽に当事務所にまでご相談下さい。

当事務所では 『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』 の申請代行を行っております。

当事務所では、雇用理由書の作成を含めた書類作成、入管への申請取次ぎ等の在留資格申請のサポートを行っています。また、他の在留資格との比較検討も行い外国人・御社にとってベストな提案を行うことができます。
ご相談いただいてから申請まで約3週間、申請から審査の結果までは1~2か月程度が目安です。

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