在留資格「特定技能1号」では最大で「5年間」働くことができます。この「5年間」には失業中や休暇のための帰国期間も含まれることはご存じでしょうか?実際には就業していない期間でも「5年間」に含まれるルールがあります。この「通算5年」という考え方は非常に複雑です。さらに、2025年9月30日にルールが改正され、この期間計算の例外や、5年を超えて日本に残るための新しい選択肢が追加されました。
本編では、在留資格「特定技能1号」にカウントされる期間がどのような期間であるかを解説します。
在留資格「特定技能1号」についての詳しい解説はこちら↓

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「在留期間を通算して5年」についての解説
この「在留期間を通算して5年」については、実際には就業していない期間が含まれる場合があります。また、過去の「特定技能1号」としての在留歴も
要件の内容
在留資格『特定技能1号』では在留できる期間は通算して5年間という決まりがあります。
5年以上、「特定技能1号」人材として在留することはできません。
通算とは
「通算」とは、特定産業分野を問わず、在留資格「特定技能1号」で実際に本邦に在留した期間を言います。また、過去に在留資格「特定技能1号」で在留していた経歴を有する場合は、過去の在留期間も含みます。連続した期間に限らず、出入国を繰り返した場合でも、通算在留期間が5年に達するまでは、再度新規入国として在留することは可能です。
また、働き始めた日ではなく「在留カードを受け取った日」=「入国した日」・「通知が届いて入管で受け取った日」が起点になります。
通算期間に含まれる期間の例
下記の期間は、通算在留期間に含まれます。
- 転職活動中の失業期間
- 転職時の審査期間等によるの待機期間
- 在留資格変更や在留期間更新申請中に突入した「特例期間」
- 再入国許可による出国(みなし再入国期間による出入国を含む。)による出国期間(一時帰国期間)
- 平成31年4月の施行時の特例期間として「特定技能1号」への移行準備のために就労活動を認める「特定活動」で在留していた期間
転職活動中の失業期間や審査期間等によるの待機期間
在留資格変更や在留期間更新申請中に突入した「特例期間」
申請中に在留期間が到来した場合には最大で2か月間の特例期間が付与されますが、この期間中も「特定技能1号」の期間として通算されます。

「再入国許可による出国(みなし再入国期間による出入国を含む。)による出国期間」について
休暇中の一時帰国や旅行などによる出国についても、理由を問わず(慶弔休暇であっても)「特定技能1号」の期間として含みます。

在留資格「特定活動(特定技能1号への移行準備)で在留していた期間」について
特定技能1号へ働きながら準備をする在留資格「特定活動」で在留し特定技能が許可されるまでの期間も、「特定技能1号」の期間に通算されます。

▶参考:出入国在留管理庁『「特定技能1号」に移行予定の方に関する特例措置について』
通算期間に含まれない期間の例
下記の期間は、通算期間に含みません 。
・再入国許可により出国(みなし再入国許可による出国を含む。)したものの、新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止のための上陸を拒否する措置などのやむを得ない事情により再入国することが出来なかった期間。
特定技能運用要領
→申立書(参考様式第1-28号)の提出により通算在留期間に含まない取扱いとなります。
・産前産後休業期間・育児休業期間
・病気・怪我による休業期間
・在留資格「特定活動」(雇用維持支援)で在留していた期間
▶参考:出入国在留管理庁『新型コロナウイルス感染症の影響により実習が継続困難となった技能実習生等に対する雇用維持支援』
2025年9月30日ルール改正のポイント① ~通算期間に含まない期間の追加~
025年9月30日に施行されたルール改正により、特定技能1号の在留資格で活動しなかった期間のうち、通算在留期間5年に算入されない期間が追加・拡充されました。
これにより、ライフイベントや不測の事態が発生した場合でも、在留期間を不当に消費することなく、より柔軟に日本での就労を継続できるようになります。今回、新たに追加・明確化された主な期間は以下の通りです。
産前産後休業期間・育児休業期間
今回の改正で、産前産後休業および育児休業を取得した期間は、通算在留期間から除外されることになりました。これは、日本で出産や子育てを行う特定技能外国人の方々を支援するための重要な変更点です。
この適用を受けるためには、雇用主が発行する休業期間を証明する文書や、母子手帳、育児休業給付金の受給資格を証明する書類、休業期間中のタイムカードや出勤簿などを申請時に提出する必要があります。
病気・怪我による休業期間
今回の改正で、仕事以外の個人的な病気や怪我により長期間働けなくなった場合でも、その休業期間を通算在留期間の5年から除外できるようになったのも大きな変更点です。
ただし、この特例を利用するには複数の条件があります。まず、休業期間は「連続して1ヶ月を超える」必要があり、数日の病欠や断続的な通院は対象とはなりません。期間の上限も定められており、個人的な傷病の場合は原則1年、業務上の災害(労災)の場合は最長3年です。この適用は自動ではなく、在留期間の更新申請などの際に、医師の診断書といった客観的な証明書類を提出し、入管に「正当な理由がある」と認められて初めて許可されます。
2025年9月30日ルール改正のポイント② ~特定技能2号評価試験等に不合格となった場合の救済措置~
在留資格「特定技能1号」は、最長5年までの在留というルールがありましたが、実務経験を積み試験に合格して一定の基準をクリアしていれば「特定技能2号」に変更することができます。「特定技能2号」は在留期間の更新回数に制限はありませんので、日本で該当業務に従事している限り在留が可能でした。
多くの1号特定技能外国人の方はこの2号試験に取り組まれることになりますが、5年間の期間中に合格できないことも珍しくありません。これまでは、特定技能1号の在留期間5年が満了するまでに2号の試験に合格できなければ、原則として帰国するしかありませんでした。しかし今回の改正で、下記の条件を満たす方のための救済措置が新たに設けられました。
この特例措置は、不合格者全員が対象となるわけではありません。利用するには、まず申請者本人が「不合格となった2号試験で、合格基準点の8割以上の得点を取得している」という非常に重要な条件をクリアしている必要があります。
その上で、申請人は以下の3点を誓約しなければなりません。
- 必ず再受験すること
- 合格した場合は、速やかに「特定技能2号」へ変更申請すること
- もし再受験でも不合格だった場合は、速やかに帰国すること
また、雇用する企業側にも、「申請人を引き続き雇用する意思」に加えて、「合格に向けた指導や研修を行う体制を整える」ことが求められます。
この制度は、あと一歩で合格だった優秀な人材に、企業と本人が一体となって再挑戦の機会を与えるための、厳格な条件付きの救済措置と言えます。これは大きな変化ではないでしょうか。
ただし、大きな注意点があります。現状、試験結果通知書に得点率が書かれていないものもあり、合格基準の8割以上だったかどうかが分からない分野があるようです(今後改善されていくことが予想されます)。申請時点で、合格基準の8割以上の得点率かどうか結果通知書で分からない場合は、この特例は利用できません。
●参考:出入国在留管理庁「通算在留期間」

通算在留期間の計算方法と確認方法
通算在留期間の計算方法には決まりがあります。また、5年に達した場合について解説します。
通算在留期間の計算方法
例えば、一定期間日本で特定技能人材として働いて、数年帰国してまた日本に戻ってくるというケースもあると思います。そのような場合の在留期間の合算の方法について説明します。
「特定技能1号」人材として出入国を繰り返す場合
在留資格『特定技能1号』は、退職をして出国した後、しばらくして入国した場合でも通算期間として計算をします。一度出国しても、在留期間がリセットされることはありません。

端数の計算方法
通算在留期間は、新規入国から再入国許可(みなし再入国許可含む)を取得せずに出国した期間毎に算出する在留期間を合算します。合算後の1か月に満たない日数については、30日をもって1か月とし、その余りの日数は切り捨てます。ただし、通算在留期間が30日に満たない場合の在留期間は1か月とします。
(参考)通算在留期間算出の例
特定技能運用要領
① 1回目の在留期間が2年6ヶ月15日
② 2回目の在留期間が25日
③ 合算期間は、2年6ヶ月40日(①+②)
④ 通算在留期間は2年7ヵ月
自分の「通算在留期間」の残りを確認する方法
ご自身の正確な在留期間の履歴は、出入国在留管理庁に対して「保有個人情報の開示請求」を行うことで確認できます。
これは、専用の「保有個人情報開示請求書」に必要事項を記入し、在留カードの写しなどの本人確認書類と手数料(収入印紙300円)を添えて、出入国在留管理庁総務課出入国情報開示係へ提出する手続きです。開示請求の際は、請求書の余白に「通算在 留期間の確認のため」と明記して申請をしてください。
請求後、審査を経て、ご自身の出入国日や在留資格の変更履歴が記載された「外国人出入国記録」などの写しが交付されます。この公式記録により、通算在留期間を一日単位で正確に把握できますが、手続きには一定の時間(約1ヶ月。場合によってはそれ以上)かかるため、期間満了が近い方は早めに行動することが重要です。
●出入国在留管理庁「出入(帰)国記録に係る開示請求について」
通算期間が「5年」に達したら…
通算在留期間が4年を超えている者の場合、残余の雇用期間を下回らない在留期間のうちで最短の在留期間が決定されます。原則、通算期間が「5年」に達する日までしか「特定技能1号」人材として就業することはできません。「特定技能1号」での通算在留期間 が5年に達した時点で、原則としてすみやかに出国することになります。
まとめ
以上、特定技能1号の通算在留期間について説明しました。
特定技能1号では最長で5年間まで働けますが、在留資格「特定技能1号」の在留資格を持っている状態で実際に勤務していない期間もこの5年間の中には含まれる場合もあります。残りに働くことができる期間について確認する際には参考にして下さい。