【不許可事例から見る】「技術・人文知識・国際業務」ビザで認められる業務の範囲とは

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在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、よく「高度人材」ビザとも言われますが、「高度人材」(大卒や日本の専門学校卒業であったり、豊富な実務経験を持っている場合)であれば、どんな業務でも従事可能かと聞かれると、答えは「No」となります。しかし、一方で「技術・人文知識・国際業務」で認められている活動範囲の定義はとても分かりにく、何が認められて何が認められないもののか非常に難解なのも事実です。
本編では、出入国在留管理庁が公表しているガイドラインを参照しながら「不許可事例」を確認しながら「不許可になりがち」な業務内容について解説をします。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」について

まずは「在留資格」とは何なのか、そして「技術・人文知識・国際業務」がどういった在留資格(ビザ)であるかを確認します。

そもそも“在留資格”とは

「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2023年2月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。

在留資格は下記の一覧表にもあるように、就労ビザだけでも19種類+αあります。活動内容が変わる場合は、在留資格の変更が必要になります。言い換えると以下に当てはまらない職業には日本では働けないということになります。(※身分系の在留資格があれば在留は可能です)

就労が可能な在留資格は「活動に係る」在留資格に分類されますので、「活動内容」つまり「業務内容が」非常に重要になってきます。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の場合、学歴要件として「短大卒以上、もしくは日本の専門学校を卒業している」という条件がありますが、これだけを満たしていればどんな仕事でもさせることができるわけではありません。
それぞれの在留資格ごとに認められる「活動内容」=「業務内容」に決まりがあります。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは

_color=”#3a3a3a” radius=”4″]会社等において 学校等で学んだこと/実務経験を活かした 知識や国際的な背景(言語や外国の感性等)を要する(「単純作業」、「訓練で習得する業務」、「マニュアルがあれば遂行可能務」等を除く)仕事をすることを目的とした在留資格(ビザ)[/su_note]

『技術・人文知識・国際業務』という少し長い在留資格名ですが、もともとは『技術』と『人文知識・国際業務』と分かれていました。日本の企業では部門をまたぐ配置転換も多々想定されることもあり、今では『技術・人文知識・国際業務』とひとつの在留資格になっています。(例えば、研究者→マーケティング部への異動や、エンジニア→セールスエンジニア(法人営業)などの異動です。)

『技術・人文知識・国際業務』の在留期間は5年、3年、1年、3か月で、更新が認められれば継続して日本に在留することができます。

想定される業務内容の具体例

『技術・人文知識・国際業務』の在留資格で最も判断が難しいのはこの部分になります。この在留資格で可能な活動は『自然科学の分野若しくは人文科学の分野い属する技術もしくは知識を必要とする業務』または『外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動』とされていますが、非常に抽象的な表現をしています。
分かりやすく表現すると「単純作業」のようなマニュアルを読み訓練をすれば習得できる業務はできません。例えば、工場で生産ラインに入って行うような単純作業、飲食店での配膳・接客・調理の業務、伝票整理などの事務作業や農作業はできません。また、一見すると高度な業務内容に見えるものでも「技能」に位置づけられる業務(訓練によって習得できる業務)で、例えば自動車整備(自動車整備士3級レベル)や、フライス盤の操作による金属加工、精密機器の保守メンテナンスも該当しない場合があります。

できる業務としては、以下のようなものが代表的な例になります。

<strong><技術></strong>
  • システムエンジニア
  • 精密機械器具や土木・建設機械等の設計・開発
  • 生産管理
  • CADオペレーター
  • 研究者
<strong><人文知識></strong>
  • 法人営業
  • マーケティング
  • 企画・広報
  • 経理や金融、会計などの紺たる譚と業務
  • 組織のマネージャー
<strong><国際業務></strong>
  • 翻訳通訳
  • 語学の指導
  • 海外取引業務
  • 海外の感性を活かしたデザイン
  • 商品開発

では、上記に列挙された業務内容は全く従事できないかというとそういうわけではありません。
入管が公表している許可・不許可事例からもう少し詳しく見ていきます。

「技術・人文知識・国際業務」の許可/不許可事例は公表されている

在留資格「技術・人文知識・国際業務」について、出入国在留管理庁はガイドラインを発表しております。その中には許可事例・不許可事例についての記載があります。実際は、許可事例も不許可事例も案件の数だけあると思いますが、本編ではあえて不許可事例のみ触れて傾向を読み解いていきます。

ガイドラインについて

在留資格「技術・人文知識・国際業務」について、出入国在留管理庁はガイドラインにて許可・不許可事例について触れています。

▶出入国在留管理庁:「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について

このガイドラインでは、以下の内容が書かれています。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について
別紙1(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許容される実務研修について)
別紙2(ファッションデザイン教育機関)
別紙3(事例)
別紙4(ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について)
別紙5(「クールジャパン」に関わる分野において就労しようとする留学生等に係る在留資格の明確化等について)

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について

「別紙3(事例)」にて許可事例・不許可事例を確認することができます。

不許可の事例から見る「できない業務内容」について

不許可の事例から、どの点が「技術・人文知識・国際業務」の活動として認められない(認められずらい)の科開設致します。

教育学部を卒業した者から,弁当の製造・販売業務を行っている企業との契約に基づき現場作業員として採用され,弁当加工工場において弁当の箱詰め作業に従事するとして申請があったが,当該業務は人文科学の分野に属する知識を必要とするものとは認められず,「技術・人文知識・国際業務」の該当性が認められないため不許可となったもの。

不許可事例 本邦の大学を卒業した留学生に係る事例(2)

「技術・人文知識・国際業務」では、工場などでの単純労働はできません。理由としては、人文知識もしくは自然科学の分野に属する知識を使用する(大学や専門学校で学んだことを活かす)業務ではないからです。

経営学部を卒業した者から飲食チェーンを経営する企業の本社において管理者候補として採用されたとして申請があったが,あらかじめ「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事することが確約されているものではなく,数年間に及び期間未確定の飲食店店舗における接客や調理等の実務経験を経て,選抜された者のみが最終的に「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務へ従事することとなるようなキャリアステッププランであったことから,「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとして採用された者に一律に課される実務研修とは認められず,不許可となったもの。

不許可事例 本邦の大学を卒業した留学生に係る事例(3)

研修の一環において一時的に現場業務をすることが認められる場合もあります。しかし、これはあくまで一時的である必要があり、そうでない場合は、本ケースでは「接客」や「調理等」はマニュアルや反復によって習得できるものにあたるため、認められません。

情報システム工学科を卒業した者から,本邦の料理店経営を業務内容とする企業との契約に基づき,月額25万円の報酬を受けて,コンピューターによる会社の会計管理(売上,仕入,経費等),労務管理,顧客管理(予約の受付)に関する業務に従事するとして申請があったが,会計管理及び労務管理については,従業員が12名という会社の規模から,それを主たる活動として行うのに十分な業務量があるとは認められないこと,顧客管理の具体的な内容は電話での予約の受付及び帳簿への書き込みであり,当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず,「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないことから不許可となったもの。

不許可事例 本邦の専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された留学生に係る事例(2)

「会計管理」や「労務管理業務」、「顧客管理」は、一見すると「技術・人文知識・国際業務」に該当しそうに思えますが、実態は「顧客管理」が主で、その内容としては「顧客管理」とは電話の予約受付業務や帳簿への書き込みであり、これはマニュアルや反復によって習得できるものにあたるため、認められません。
同様に、「レジ対応」や「レジ締め」も通常はマニュアルがあれば基本的には大卒者等に関わらず誰でも対応可能なものになります。日本語非ネイティブの方が行えると「凄いこと」と錯覚しがちですが(すごいことには違いありません)、学術的な素養が必要な業務かと問われると異なります。

ベンチャービジネス学科を卒業した者から,本邦のバイクの修理・改造,バイク関連の輸出入を業務内容とする企業との契約に基づき,月額19万円の報酬を受けて,バイクの修理・改造に関する業務に従事するとして申請があったが,その具体的な内容は,フレームの修理やパンクしたタイヤの付け替え等であり,当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず,「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないため不許可となったもの。

不許可事例 本邦の専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された留学生に係る事例(3)

簡単な修理やメンテナンス業務は、マニュアルや反復によって習得可能な業務と位置付けられているようです。全てのメンテナンスがそれに該当するというわけでは無いですが、メンテナンスを行うためには大学等の高等教育機関で学んだ知識が必要でないものでない限り、許可は得られません。

国際情報ビジネス科を卒業した者から,本邦の中古電子製品の輸出・販売等を業務内容とする企業との契約に基づき,月額18万円の報酬を受けて,電子製品のチェックと修理に関する業務に従事するとして申請があったが,その具体的な内容は,パソコン等のデータ保存,バックアップの作成,ハードウェアの部品交換等であり,当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするもとのは認められず,「技術・人文知識・国際業務」に該当しないため不許可となったもの。

不許可事例 本邦の専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された留学生に係る事例(4)

これも④の事例と同じで、とりわけ大学等で学んだ知識が無ければできない業務ではなく、マニュアルや反復によって習得できる業務の典型例となります。

ホテルにおいて,予約管理,通訳業務を行うフロントスタッフとして採用され,入社当初は,研修の一環として,1年間は,レストランでの配膳業務,客室清掃業務にも従事するとして申請があったが,当該ホテルにおいて過去に同様の理由で採用された外国人が,当初の研修予定を大幅に超え,引き続き在留資格該当性のない,レストランでの配膳業務,客室清掃等に従事していることが判明し不許可となったもの。

不許可事例 本邦の専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された留学生に係る事例(7)

レストランでの配膳業務、客室清掃業務は、マニュアルや反復によって習得できる業務になります。sつまり、「技術・人文知識・国際業務」で認められる活動の範囲外の業務にあたります。不許可の論点としては②と同じにはなりますが、研修期間が「一時的」で無いと判断された場合には、不許可になりますしこれは「不法就労」となります。

人材派遣会社に雇用され,派遣先において,翻訳・通訳業務に従事するとして申請があったが,労働者派遣契約書の職務内容には,「店舗スタッフ」として記載されており,派遣先に業務内容を確認したところ,派遣先は小売店であり,接客販売に従事してもらうとの説明がなされ,当該業務が「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないため不許可となったもの。

不許可事例 本邦の専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された留学生に係る事例(8)

小売店での「接客販売」や「品出し」「レジ対応」については典型的な不許可事例になります。接客はマニュアルや反復によって習得可能な業務となります。一方で同じ「接客販売」であっても、インバウンド専門店などで観光客に対して外国語(母国語)を使用する通訳が本質にある場合には、認められる事例もあるようです。

電気部品の加工を行う会社の工場において,部品の加工,組み立て,検査,梱包業務を行うとして申請があったが,当該工場には技能実習生が在籍しているところ,当該申請人と技能実習生が行う業務のほとんどが同一のものであり,申請人の行う業務が高度な知識を要する業務であるとは認められず,不許可となったもの。

不許可事例 本邦の専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された留学生に係る事例(9)

「部品の加工」「組み立て」「検査」「梱包業務」といった業務が反復によって習得可能と言うこともそうですが、それらの業務が学術的な素養を必要な業務と改めて主張するのは困難です。同じ業務をする技能実習生は、大卒や日本の専門学校を卒業していない方(=技術・人文知識・国際業務の学歴要件を満たす方)も多くいることから、それらの業務は「反復によって習得可能」な技能的な業務と考えられます。

栄養専門学校において,食品化学,衛生教育,臨床栄養学,調理実習などを履修した者が,菓子工場において,当該知識を活用して,洋菓子の製造を行うとして申請があったところ,当該業務は,反復訓練によって従事可能な業務であるとして,不許可となったもの。

不許可事例 本邦の専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された留学生に係る事例(10)

一見、専門学校で学んだことを活かすことが出来そうに見えますが、実際の業務(洋菓子の製造)は反復訓練によって従事可能な業務のため不許可になっています。

「技術・人文知識・国際業務」で認められていない業務内容のまとめ

ここまでに業務内容が理由で不許可になった事例を見てきました。
実際に不許可になると「申請のあった業務内容が自然科学・人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするもとのは認めれません」と言われることが多くありますが、正直「分かりにくい」「何が理由かはっきりと分からない」と思われることもあると思います。
ガイドラインの不許可事例から読み解くと、下記の業務は許可が出にくい傾向にあります。

・単純労働:工場でのライン作業、梱包作業、小売店等での品出し、清掃業務等
・反復訓練によって習得可能な業務/マニュアルによって習得可能な業務:
小売店や飲食店での接客、工場での加工や組み立て、検査、簡単なパソコン作業
・技能的な業務:メンテナンス業務(精密機器、自動車、機械等)、修理や部品交換(整備関係)、調理、美容系業務(美容師、エステ等)
※上記は一例であり、条件によっては上記の業務でも認められる場合もあり得ます。

※なお、不許可になる要因は業務内容以外にもあります。ガイドラインや他の不許可事例をご確認ください。

まとめ

以上、在留資格「技術・人文知識・国際業務」に関するガイドラインから見る不許可となる事例について解説しました。
もちろん審査の対象は業務内容だけでは無いため、それ以外の要因で不許可にもなりますが、「技術・人文知識・国際業務」で不許可になってしまう理由に「業務内容」が多くあります。「技術・人文知識・国際業務」で認められる活動範囲に一見該当していそうだけれども、実は勘違いされがちの業務のことが多くあります。実際には、その判別はかなりシビアで難しいのも事実です。「技術・人文知識・国際業務」で認めらる範囲かどうか迷われた際には、一度当事務所にお問合せ下さい。

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