在留資格(ビザ)申請に関する法令違反について

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「不法就労」「虚偽申請」「資格外活動罪」、外国人の在留申請に関わったことのある方であれば一度は聞いたことがある名前ではないでしょうか。外国人の在留資格(ビザ)の申請は正しく行わなければ、知らず知らずのうちに犯罪に巻き込まれる場合があります。
本編では、在留資格(ビザ)申請にまつわる法律違反について説明します。

在留資格(ビザ)にまつわる法律違反の種類

在留資格(ビザ)にまつわる法令違反には、以下のようなものがあります。

在留資格(ビザ)にまつわる法令違反について
  • 在留資格等不正取得罪(入管法70条1項2号の2)
  • 営利目的在留資格等不正取得助長罪(入管法74条の6)
  • 資格外活動罪(入管法70条1項4号、73条)
  • 不法就労助長罪(入管法73条の2第1項)
  • 資格外活動幇助罪(入管法71条の3)

これらが入管法に規定されている罰則の全てではありませんが、在留資格(ビザ)の申請が不適切の場合、これらの犯罪に加担するおそれがあります。また、これらには罰則があります。

在留資格(ビザ)がないのに働くことだけが「不法就労」ではない!?

まず、「不法就労」とは以下のようなケースを指します。

  1. 不法滞在者や被退去強制者が働くケース
  2. 出入国在留管理局から働く許可を受けていないのに働くケース
  3. 出入国在留管理局から認めたられた範囲を超えて働くケース

1については、密入国者や在留期限の切れた人(オーバーステイ)の人が該当します、また、退去強制されることが既に決まっている人も該当します。
2については、そもそも持っている在留資格(ビザ)で就労が認められていないのに働くケースが該当します。たとえば、観光目的の短期滞在ビザで入国した人や、留学生や難民認定申請中の人が「資格外活動許可」を得ずに働くケースが該当します。
3については、例えば留学生が「資格外活動許可」を得ていた場合でも法令で定められた時間(週28時間以上)を超えて就労する場合(オーバーワーク)や、在留資毎に定められた活動の範囲を超えた活動をする場合(例えば、語学指導のビザをとって料理人をするなど)も不法就労に該当します。アルバイトは、1か所で週28時間ではなく掛け持ちしている場合は全てのアルバイト時間合計となります。

1,2は在留カードやパスポートの指定書を見れば判別ができますが、特に注意が必要なのが3になります。
在留資格毎に従事できる業務内容は異なってきます。そして、1つの在留資格を持っている間は原則としてその活動しかできません。
特に注意が必要なのが、料理人として「技能」ビザや、ITエンジニアとして「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得しているのにもかかわらず、工場や飲食店等で単純労働するような場合です。単純労働は今でこそ「特定技能」と呼ばれるビザが出来たため一部の業種では就労可能ですが、それ以外の業種では就労はできません。
「就労ビザ」を持っているからどんな仕事でもできるわけではなく、雇用する外国人材がどのビザを持っていて、業務内容がそのビザで適法であるかを事前に確認が必要になります。

就労ビザが取れればどんな仕事ができるわけではない!?「資格外活動罪」

就労はできない在留資格であっても、「資格外活動許可」を取れば資格外活動ができる場合があります。「留学」や「研修」「家族滞在」「文化活動」「短期滞在」の在留資格で在留している人は、資格外活動許可を得ることで時間で管理されるアルバイトをすることができます。これを「包括許可」と言います。

一方で、既に「就労ビザ」を持っている場合、在留資格で定められた範囲外の活動を行う場合は「個別許可」を得なければなりません。
代表的な例としては、「教授」の在留資格を持つ大学の教授が「技術・人文知識・国際業務」の語学学校の教師を報酬を得て行う場合などがあります。

例えば、在留資格の範囲外の活動するようなケースには下記がありますが、「資格外活動許可」を得られれば問題ありませんが審査の結果「不許可」となった場合や、そもそも「資格外活動許可」を申請すらしていない場合は「資格外活動罪」や「資格外活動幇助罪」に該当することになります。

「資格外活動」の一例~業務内容編~
  • ITエンジニアとして申請を行って「技術・人文知識・国際業務」で在留しているのにも関わらず、工場で単純労働を行っている
  • 料理人として申請を行って「技能」で在留しているのにも関わらず、レストランで配膳や掃除を行っている
  • 介護施設で相談員や人事として申請を行って「技術・人文知識・国際業務」で在留しているのにも関わらず、身体介護を行っている
  • 食品製造業の作業員として申請を行て「特定技能」で在留しているのにも関わらず、コンビニで働いている

つまり、日本においては「在留資格(ビザ)を持っている」ことや「就労ビザを持っている」だけでは足りず、在留資格毎に定められた活動の範囲内でなければ、「資格外活動罪」⇒「不法就労」となってしまいます。

参考:出入国在留管理庁HP「資格外活動について

在留資格(ビザ)の許可をとるために手段を選ばない!?「虚偽申請」

日本で就労ビザを取得することは、厳しい要件を満たさなければならず「どんな会社でも」「誰でも」「どんな仕事でも」取得できるわけではありません。

業務内容によっては「こう書いたほうが許可が得やすい」とか「この業務内容なら許可が出る方こっちで書く」とか「都合の悪い経歴は書かないほうがよい」など、様々な噂が流れています。

「在留資格」の申請は言ってしまえば「一(いち)行政手続き」です。テストでも何でもありません。事実を記載するのみです。事実ではないことを書いた場合、虚偽申請となり「在留資格等不正取得罪」「営利目的在留資格等不正取得助長罪」となります。

よく「どうすれば許可が取れますか?」と決まれますが、コツなどありません。在留資格(ビザ)の許可を得るためのポイントは以下の2点に尽きます。

  • 要件を満たしているかしっかり確認すること
  • 要件を満たしていることをしっかりアピールすること

要件を満たしていない場合は残念ながら諦めるしかありません。

知らなかったでは済まされません。

これらのことは、例え受入企業が申請などに関わっていない場合や、外国人の言ったことを信じて事実確認を怠った場合などであっても罰則の対象になります。つまり「知らなかった」ではすまされません。

不法就労を行った外国人は退去強制の対象になります。
また、不法就労者を雇用していた場合は「不法就労助長罪」として、3年以下の懲役・300万円以下の罰金となります。説明したように、オーバーワークの留学生を雇用することは「不法就労助長罪」に該当します。アルバイトの時間数の管理を外国人任せにすると知らず知らずのうちに該当する場合があります。

当然、不法就労者を雇用することを隠すためにハローワークへの届け出を怠った場合や、虚偽の届け出を行った場合も30万円以下の罰金となります。さらに、在留資格(ビザ)を取るために虚偽の申請を行った場合も3年以下の懲役・300万円以下の罰金です。

外国人の在留資格(ビザ)に関する申請や外国人の雇用に際しては、しっかりとした準備や確認を行わなければ、厳しい罰則の対象となります。

外国人を採用する際に注意するポイント

それでは就労ができるのかどうなのかを見分けるにはどうすればよいのかというと、「在留カード」をみれば分かります。

在留カードの見方

在留カードには、氏名、生年月日、性別、国籍、地域、住居地、在留資格、在留期間といった基本情報が記
載されています。在留カードは、基本的に3か月を超えて日本に滞在することが許された外国人に対して、法
務省出入国在留管理庁により発行されされるものになります。
在留カードは携帯義務があるため、まず「持っていない」ということはあり得ません。

在留カードの表面には「就業制限の有無」という欄があります。ここには以下の4通りの記載があります。

  1. 就労不可
  2. 在留資格に基づく就労活動のみ可
  3. 指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可
  4. 指定書により指定された就労活動のみ可

就労不可の場合、裏面に「資格外活動許可」の記載があれば原則週28時間までの就労が可能です。
3,4の「指定書」というのはパスポートに貼付されるため、その内容まで確認し問題ないかを確認しなければなりません。「指定書」が貼付される在留資格としては「特定活動」「特定技能」「高度専門職」が挙げられます。ここでは、就業場所の指定や就業内容の記載があります。

また、「在留期限」についても注意してください。1日でも超えると「オーバーステイ」となり「不法就労」に該当してしてしまいます。

偽装在留カードの見分け方

在留カードは簡単に偽装できないように、ホログラムなどの加工がされています。傾けることで「MOJ」の文字が見えたり、色が変わります。これらの加工が見えない場合は偽装在留カードになります。

出所:警視庁『外国人の適正雇用について

また、2020年12月に出入国在留管理庁から「在留カード等読取アプリケーション」が発表され、無料で利用可能です。このアプリでは、ICカードリーダーで在留カードそのものが適切なものであるかを判断することができます。近年、残念なことに偽装の技術も上ったことで、ホログラムの確認や在留カード番号の照会だけでは偽装在留カードの判別ができないことが増えています。このアプリを利用すれば、真偽の確認が可能です。

アプリのダウンロードはこちら

まとめ

以上、在留資格(ビザ)申請に関する法律違反について説明致しました。
在留資格(ビザ)の違反と言っても「不法就労」だけではありません。また、その「不法就労」一つをとっても非常に奥が深く、正しく理解されていないのも事実です。不法就労やそのほかの違反は、事業主にまで責任が問われることになり、その場合「知らなかった」ではすまされません。正しく申請をし、必ず雇用前には在留カードを確認するようにしましょう。

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