上記の質問について詳しく解説します。
「日本人10人に対して外国人○名しか雇用できないと聞きました」
例えば従業員がまだいなかったり、もしくは5名以下の小規模事業者の場合に、「私の会社で外国人の就労ビザの許可は出ますか?」とよくお問い合わせをいただきます。また、タイトルのような「日本人10人に対して外国人○名しか雇用できないと聞きました」といった、根拠のない噂から外国人雇用を断念された経験のある企業の方のお話をよく聞きます。
これについては、組織規模に対して就労ビザの許可が制限されることは基本的にはありません。
例え社長さんが外国籍の方であって、初めて雇用する方が就労ビザを必要とする外国籍の方であっても問題ありません。必要なのは組織規模ではなく、「在留資格にあった業務があるかどうか」になります。
ただし、在留資格(特定技能1号の一部分野など)によっては「日本人●人に対して●人」まで雇用可能、といった制限を設けてあるものもあります。これらは、予め明確に公表されてあります。よく噂がされている「技術・人文知識・国際業務」については業務が確保される限り制限は基本的にはありません。
まずは、在留資格が許可されるためのポイントを整理
前章で説明した「在留資格にあった業務があるかどうか」というのがどういうことか説明をします。
日本の在留資格制度においては、活動に係る在留資格の場合(平たく言うと“就労ビザ”の場合)、その在留資格で認められている活動に制限があります。以下は、日本にある在留資格の一覧です。
就労が認められる在留資格は上の表の左側と右側の「特定活動」で19種類+αです。“就労ビザ”の審査において、「該当例」書かれているような活動が決定される「在留期間」中に「安定的・継続的」に行われるかどうか審査・確認されることになります。「在留期間」は(主に)1年・3年・5年から決定されますが、これらの決定される「在留期間」中に行う業務として十分に業務があることが見込まれれば許可されますし、そうでない場合は厳しい結果になるということです。しかし、これは組織の規模にかかわらず、大きな企業であっても業務量が十分にあることが言えなければ不許可になることは十分にあり、組織の大小そのものは許可・不許可に直接関係ありません。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」は下記のような在留資格になります。
この在留資格で認められる業務内容は、「自然科学の分野若しくは人文科学の分野い属する技術もしくは知識を必要とする業務」または「外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動」とされていますが、非常に抽象的な表現をしています。
逆にできない仕事を挙げると「単純作業」や「マニュアルを読み訓練をすれば習得できる業務」はできません。例えば、工場で生産ラインに入って行うような単純作業、飲食店での配膳・接客・調理の業務、伝票整理などの事務作業や農作業はできません。また、一見すると高度な業務内容に見えるものでも「技能」に位置づけられる業務(訓練によって習得できる業務)で、例えば自動車整備(自動車整備士3級レベル)や、フライス盤の操作による金属加工、精密機器の保守メンテナンスも該当しない場合があります。
これらを除く、「自然科学の分野若しくは人文科学の分野い属する技術もしくは知識を必要とする業務」または「外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動」が十分にあれば、小さな組織であっても許可されうるということになります。
少人数の企業でも複数人のが複数人の外国人雇用をすることは可能?
ここまでで組織規模の大小が在留資格の許可・不許可に直接かかわることは無く、ポイントは「在留資格に合った業務量が確保されているかどうか」ということを説明しました。これは、複数人雇用する場合でもこの課題がクリアになっていれば許可は出ると言えます。
例えば、外国人プログラマー1人によって月間500万円のシステム開発をしていた企業が、さらに取引先増加に伴い予測売上が月間1000万円となる場合、1人では対応不可能であることを説明すれば、就労ビザが許可される見込みがあると言えます。つまるところ、「何故、この外国籍・○○さんを雇用したいのか」ということについて筋の通った説明ができれば許可は出る可能性が高く、理にかなっていれば「外国人の人数が多い」のような理不尽な理由で不許可になることは通常あり得ないと言えます。
まとめ
以上、小規模組織の場合にも外国人雇用は可能かどうか、就労ビザは許可されるかどうかについて解説しました。
組織が小さいから就労ビザは許可されない、ということはまずありません。初めての外国人雇用が外国籍の方であって、就労ビザを申請する場合でも要件を満たしていれば許可されます。在留資格にはそれぞれ活動が可能な範囲が決まっています。申請する在留資格の範囲内の業務がきちんとあれば許可はでます。これについては、組織規模にかかわらず、大きな企業であってもこの点についての説明がつかなければ不許可になるということに変わりはありません。