今、当社にアルバイトで働いている外国人留学生がとても優秀で、学校を卒業後にそのまま社員として採用したいと思っています。これは可能でしょうか?また、どのようなことに気を付けたらよいですか?
学校を卒業後に働く場合は、就労ビザに変更する必要があります。就労系の在留資格を取るための要件(留学生の経歴、業務内容等)を満たしている場合には、留学から就労ビザに変更を行うことで就職をすることができます。また、一度帰国する必要も基本的にはありません。
既に自社で働く留学生を社員登用したい、また、留学生から求人に応募があった場合についてのご質問について、詳しく解説します。
在留資格「留学」から就労系の在留資格に変更することで就職が可能
外国人留学生は、学校を卒業後にそのまま日本で就職することも可能です(※)。そのためには、学業を行うための在留資格「留学」から、報酬を得る活動を行っても問題ない在留資格(いわゆる就労ビザ)に変更しなければなりません。そして、就労ビザにはそれぞれ要件があります。
※卒業後でなくても、就労ビザの要件を満たしていればと途中退学でも問題ありません。
留学生アルバイトと就職の違い
「留学生だって働いてるよね!?」という疑問に思われる方もいるかと思います。留学生は、学業の傍ら仕送りから不足する生活費やお小遣いを稼ぐ程度のアルバイトは、「資格外活動許可」を取ることで可能になります。あくまで“学業の傍ら”なので、学校を卒業して就職をするとなると、「留学生」ではなくなるため、在留資格を変更しなければなりません。
どうして在留資格を変えないといけないのか?そのままではダメなの?
「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2022年12月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。
在留資格「留学」は活動に係るものなので、就職をするとなると、活動目的が「学業」から「何かしらの報酬を得る活動」に変更になるため、それが可能な在留資格(就労ビザ)に変更しなければなりません。繰り返しですが、学生アルバイトはあくまで“学業の傍ら”なので、学校を卒業して就職をするとなると「留学生」ではなくなるため、そのままの状態で働くことはできません。
在留資格は下記の一覧表にもあるように、就労ビザだけでも19種類+αあります。活動内容が変わる場合は、在留資格の変更が必要になります。言い換えると以下に当てはまらない職業には日本では働けないということになります。(※身分系の在留資格があれば就労は自由です)
「就労ビザに変更する」とはどういうことなのか?
前項の通り、在留資格「留学」が大学・専門学校・日本語学校等に在籍し勉強を行う期間であるからこそ付与されているということになります。留学生は「資格外活動許可」を取得することによって、報酬を得る活動(制限有)を行うことができている状態です。
この「資格外活動許可(=アルバイト)」は、学校に在籍している間のみに認められる活動です。つまり、学校を卒業・退学等をすれば在留資格「留学」での日本での在留はできなくなり、同時に「資格外活動(=アルバイト)」もできないことになります。よって、正社員として就業する場合には何かしらの「就労が認められる在留資格(就労ビザ)」に変更をしなければなりません。
「留学ビザ」と「就労ビザ」の比較は下記の通りです。就労ビザに変更することで、労基法の範囲内であれば就業時間の制限はなくなる一方で、それぞれの就労ビザで定められた活動の範囲内の活動を行うことになるため、場合によっては今まで行っていた活動(特に単純労働)はできない場合もあります。
比較項目 | 留学ビザ ※資格外活動許可 | 就労ビザ |
---|---|---|
活動内容 | 単純労働も可能 | 各就労ビザで定められた活動の範囲内に限る ※詳しくは後述 |
労働時間 | 週28時間まで ※長期休業中は1日8時間まで | 労基法の範囲内であれば時間制限なし |
報酬 | 日本人と同等以上 | 日本人と同等以上 |
社会保険 | 対象:労災保険対象 | (適用事業所である場合) 対象:厚生年金、健康保険、労災保険、雇用保険 |
家族の帯同 | 原則難しい | 可能 ※「特定技能1号」は出来ない場合あり |
就労系の在留資格の種類について
実は、就労ビザであれば、「何の仕事をしてもよい」というわけではありません。それぞれの在留資格にできる業務内容(活動内容)に制限があります。
就労ビザとは
日本の在留資格制度において、「就労ビザ」という名前のビザ(在留資格)はありません。活動内容毎に在留資格が定められており、19種類の就労系の在留資格と、就労が認められる「特定活動」(活動目的は十数種類)があります。在留資格毎に可能な業務内容(活動内容)の範囲が定められており、日本に存在するすべての職種であっても働くことができる、という訳ではありません。よって、業務内容次第では、その職種自体に就くことが日本では制度的にできないということもあります。
一方で、「身分・地位に基づく在留資格」は活動制限がありません。
「身分・地位に基づく在留資格」には『永住者』『日本人の配偶者等』『永住者の配偶者等』『定住者』の4種類があります。身分系の方に関しては、在留資格が維持できる限り日本人と同様に制約なく働くことができます。
留学生が就職するときに選ぶ代表的な就労ビザについて
就職の際には、業務内容に合わせて適切な就労ビザを選択をしなければなりません。それぞれの就労ビザには取得のために必要な要件がそれぞれ異なります。
ここでは、留学生が就職に際して変更することの多い在留資格について説明をします。
・高度専門職
・特定活動(46号・本邦の大学卒業者)
・特定技能
この他にも「技能」「介護」「興行」といった専門的な在留資格もありますが、ここでは特に似ていて判別の難しい在留資格について説明します。これらの在留資格は、一般的な「サラリーマン」に与えられる在留資格になります。これらの在留資格で可能な業務内容の大まかなイメージは以下になります。(詳細については後述します。)
在留資格毎に活動可能な範囲が異なるだけでなく、それぞれの在留資格を取得するための要件もそれぞれ異なります。以下は、在留資格毎の比較になります。活動内容だけでなく、必要な要件も異なります。
就労ビザの大事なポイントは「誰が」「どこで」「どんな業務内容をするか」の3点が揃っていることになります。これは、ひとつの在留資格の要件を満たしている(在留カードを持っている)からと言って、どんな活動でもできるという意味ではありません。
多くの場合で、上記4つの在留資格のいずれかが該当します。
特に、留学生の最終学歴が「大学」「専門学校」の場合は、在留資格『技術・人文知識・国際業務』を取得できる場合が多くありますが、最終的には業務内容によって決まります。
留学生を社員登用や新卒採用するときの流れ
留学生を社員登用する場合や新卒採用するためには、就労ビザに変更する手続きが必要です。就労ビザに変更できなければ就職は出来ませんし、この手続きは意外に時間がかかるため、適切に対応しなければなりません。
内定出しする前に、就労ビザが取れるかどうかを確認する
まずは、本当に就労ビザへの変更が可能か確認を行ってください。“就労ビザ“は、「どこで」「だれが」「どのような業務をするのか」という3つのポイントがリンクすることで初めて「許可」されるものになります。どれか一つでも欠ける場合は「要件を満たさない」ということになり就労ビザの許可は得られません。
最も重要なのが「どんな業務内容なのか」です。
特に、「技術・人文知識・国際業務」への変更を考えている方は、大卒者の場合は「学校で学んだことと業務内容の関連性」以上に、「業務内容そのもの」が申請の争点になります。判断が難しい場合には、入管やビザ専門の行政書士や弁護士などに相談をされるのがよいでしょう。
また、在留資格変更許可申請では今までの在留状況も審査の対象となります。学業はきちんと行っていたのか、アルバイトをし過ぎていないか(資格外活動違反・オーバーワーク)も内定出しをする前に確認をするとよいでしょう。
内定出しから就職までの流れについて
在留資格の申請を行うタイミングは内定出しをしてから入社までの間になります。
在留資格の変更が必要な場合に切替前に入社をさせると資格外活動違反になるため気を付けてください。また、審査期間も3週間~数カ月に及ぶ場合もあるため、申請は計画的に行わなければなりません。
新卒採用の場合(来春・3月卒業生)の場合は、例年12月から申請の受理が開始されます。そして、在留カードを受け取ることができるのは、卒業式が終わって入社までの間になります。一方で、既に就労ビザの要件を満たしている場合で退学することを検討している場合には、雇用条件が確定し内定承諾が得られ在留次第、在留資格変更許可申請を行い、学校の卒業を待たずに就職することも可能です。
働き始めてよいのは、新しい在留カードを受け取った日以降になります。
「資格外活動許可」を取得している学生の場合は、注意が必要です。資格外活動として就労できるのは学生の間までであって、在留期限内であればよいものではありません。この点には十分に注意をして下さい。
在留資格の変更をする手続き「在留資格変更許可申請」
活動の目的が変わって、その活動目的に合わせて在留資格を変更するために行う申請が「在留資格変更許可申請」になります。留学生が就労ビザに変更するためにはこの手続きを行います。
どこで申請するのか
基本的に申請は申請人の居所を管轄する入管、もしくは受入れ予定の企業の所在地を管轄する入管で行います。
申請先については下記の通り 決まりがあります。
居住予定地もしくは受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署
【在留資格変更許可申請 or 在留期間更新許可申請】
住居地を管轄する地方出入国在留管理官署
地方出入国在留管理官署 | 管轄する区域 |
---|---|
札幌出入国在留管理局 | 北海道 |
仙台出入国在留管理局 | 宮城県、福島県、山形県、岩手県、秋田県、青森県 |
東京出入国在留管理局 | 東京都、神奈川県(横浜支局が管轄)、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、 群馬県、山梨県、長野県、新潟県 |
名古屋出入国在留管理局 | 愛知県、三重県、静岡県、岐阜県、福井県、富山県、石川県 |
大阪出入国在留管理局 | 大阪府、京都府、兵庫県(神戸支局が管轄)、奈良県、滋賀県、和歌山県 |
広島出入国在留管理局 | 広島県、山口県、岡山県、鳥取県、島根県 |
福岡出入国在留管理局 | 福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、 沖縄県(那覇支局が管轄) |
分局が近くにない場合には、最寄りの支局や出張所での申請も可能です。ただし、支局や出張所次第では在留資格の申請を受け付けていない場合もあるため確認が必要です。
▶出入国在留管理庁:管轄について
誰が申請をするのか
基本的には、申請人(外国人)本人が申請人の住居地を管轄する入管に申請に行きます。
申請人が16歳未満の子どもの場合は、法定代理人(父母等)が代理人として申請することができます。
また、申請人が海外にいる場合には、申請人(外国人)を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者が、代理人として申請を行うことができます。
この場合、代理人は申請書に名前を記載する代表取締役などに限らず、受け入れる機関の「職員」であれば問題ありません。また、グループ会社の人事関連業務を行う会社の職員も含みます。
一方、届け出を行っている「取次者」であれば、申請を代わって行うことができます。
「取次者」の例として、雇用されている・所属している機関の職員、行政書士、弁護士、 登録支援機関の職員がなることができますが、一定の研修を受けて登録された人のみになります。
今までは、原則「申請人の居住地を管轄する住所を管轄する入管」でしか申請は認められていませんでした。
しかし、ルールが変更となり申請人(外国人)が受け入れられている又は受け入れられようとしている機関の所在地を管轄又は分担する出入国在留管理官署においても認められるようになりました。
例えば、福岡に住む留学生が東京の会社に内定をもらった場合、以前は、福岡入管(もしくは管轄する出張所)のみでしか申請できませんでしたが、今後は内定先のある東京出入国在留管理局での申請も認められます。
※このルールは取次者証明書が交付された人(公益法人の職員や弁護士や行政書士等)についても認められます。
まとめ
以上、留学生を卒業後に社員として雇用するための注意点や流れについて説明ました。
留学生を卒業後に雇用するためには、就職前に就労ビザへ変更するための手続きが必要です。就労ビザには、それぞれ就労可能な業務内容の範囲に制限があったり、学歴や経歴などの要件があります。内定出しをする前に、これらの要件を満たしているかを確認しましょう。
また、在留資格の変更手続き(ビザ申請)は1~3ヶ月程度の時間がかかります(場合によってはさらにかかります)。計画的に準備を進めることをお進めします。