留学生がオーバーワークをするとどうなるのか。ビザは不許可になるのか?

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留学生をアルバイトとして雇用する、と言うことは当たり前の時代となりました。留学生アルバイトは無制限に働くことができるわけでは無く、学業に支障の出ない範囲でかつ「週28時間」までしか働くことができません。この制限を超えると「オーバーワーク」という状態になりますが、どのようなリスクがあるのかを解説します。

オーバーワークとはどういう状況なのか?

留学生は「資格外活動許可」の許可を得ることでアルバイトができます。ただし、その許可を取れば無制限なるバイトができるという訳ではなく、特に決められた時間数を超えてアルバイトをすることを「オーバーワーク」と言います。

資格外活動許可について

留学生がアルバイトをするために取得する許可は「資格外活動許可」の中でも「包括許可」に該当します。これは、「週28時間」までであればアルバイトのような活動をしてもよい、という許可になります(風営法に規制されている事業所での活動は認められません)。
前章で説明したように、「資格外活動許可」で許可され得る活動は、「在留資格」のいずれかで認められている活動に限られます。しかし、「留学」や「家族滞在」、「文化活動」、扶養を受ける配偶者や子などの方の「特定活動」の方の場合でパートやアルバイトを行う場合などは、28時間以内の収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動について「包括許可」として認められます。
「包括許可」では、「週28時間」というルールがある限り、タイムカード等で管理できる仕事に限られます。学生の場合は、教育機関の長期休業期間(夏季休業、冬季休業および春季休業として在学する教育機関の学則等により定められる者)にあっては、1日について8時間以内まで認められます(労基法の関係で上限週40時間です)。

資格外活動許可の取得状況については、在留カードの裏面にて確認をすることができます。

年収がいくらからオーバーワーク?

「年収が何万円を超えるとオーバーワークに見なされますか?」という質問はよく聞きます。
ここまでの説明をご覧になった方は分かるように、オーバーワークの基準は、「金額」ではなく「時間」です。入管の審査官の言葉を借りると、「1時間でも超過すればオーバーワーク」になってしまいます。」

ちなみに週28時間の考え方について、審査要領には以下のように書かれています。

「1週について28時間以内」とは、どのよう日から1週の起算をした場合でも常に1週について28時間以内であることをいう

審査要領 第10編 在留審査

カレンダーのどの7日間を切り取った場合でも「週28時間」以内であることが求められます。逆を言えば、例えば時給の高い夜勤バイトをしている場合で高収入で合ったとしても、週28時間を遵守できているのであれば、オーバーワークには該当しません。
この時間の考え方は、「人」が基準であり「アルバイト先1か所当たり」ではありません。このため、掛け持ちの合計が週28時間を超える場合は1か所当たりが28時間未満であっても、オーバーワークに該当します。
※アルバイトの結果、学業に支障が出ていないことが前提となります。

オーバーワークは「不法就労」に該当する

まず、「不法就労」とは以下のようなケースを指します。

①不法滞在者や被退去強制者が働くケース
②出入国在留管理局から働く許可を受けていないのに働くケース
③出入国在留管理局から認めたられた範囲を超えて働くケース

1については、密入国者や在留期限の切れた人(オーバーステイ)の人が該当します、また、退去強制されることが既に決まっている人も該当します。
2については、そもそも持っている在留資格(ビザ)で就労が認められていないのに働くケースが該当します。たとえば、観光目的の短期滞在ビザで入国した人や、留学生や難民認定申請中の人が「資格外活動許可」を得ずに働くケースが該当します。
3については、今回解説をしている「オーバーワーク」が該当してきます。このように、「不法就労」というのは「資格外活動許可」を取らずに働くことだけでなく、「オーバーワーク」をすることも該当してしまうのです。そのため、留学生アルバイト雇用主は「オーバーワーク」の状態の学生を雇用することで、「不法就労助長」をしてしまっていると言えてします。

特に影響が出るのはビザ申請のタイミング

オーバーワークをすると、特に影響が出るのはビザ申請のタイミングです。在留期間の更新や就労ビザ等へ変更する際の在留資格の変更の申請の結果「不許可」となる場合があります。

在留期間や在留資格の申請の審査されるポイントについて

「在留期間更新許可申請」(在留期間の延長)や「在留資格変更許可申請」(例えば留学から就労ビザへの変更)の際には、“未来の予定”だけでなく“過去の在留状況”についても審査されます。

出入国在留管理庁HPに掲載されているガイドラインを確認してみましょう。

1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用・労働条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること

在留資格の変更,在留期間の更新許可のガイドライン

在留資格の審査は上記のポイントを総合的に見て判断をされることになりますが、「オーバーワーク」は「素行が不良」ということに該当し、審査が極めて不利になると言えます。また、アルバイトが原因で学校への出席率が低い場合は「現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと」が当てはまっていないとみなされる場合があります。

▶出入国在留管理庁『在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン

オーバーワークは在留不良に該当し不許可の原因となる

「オーバーワークはバレるものなのか」と質問されると、「発覚するときは発覚する」という回答になります。まず、留学生の場合は学校が資格外活動の状況の管理を行っています。その状況が悪い場合は、学校から入管へ報告が上がる場合があります。

また、アルバイト先の雇用主も外国籍を雇用した場合には「外国人雇用状況届出書」の提出が義務付けられています。提出先であるハローワークと入管のデータベースはつながっています。この届出では勤務時間数を把握することはありませんが、掛け持ちを多くしている学生については入管も把握し、やはり件数が多い場合には詳細な調査の対象となっていることが多いように感じます。

これは経験によるものですが、入管は複数件数のアルバイト実績があることを把握している場合には、審査中に申請人(外国人)に架電調査を行い、アルバイト先を報告させるケースがあります。ここで1件でも漏れると、虚偽の申告をしたということで不許可の原因になることは実際に起こっていることの一つです。

余程悪質なケースの場合には、オーバーワークが原因で在留資格が取消になることもあります事実、在留資格の取り消し処分がされている在留資格で2番目に多いものが「留学」です。

もし不許可になってしまったら

もし「オーバーワーク」が原因で不許可になってしまった場合、多くのケースで日本での在留を諦めたほうがよいです。例えば、反省文を添えて再申請をしたとしても許可をもらえる可能性は低いです(現実的に困難)。
最近では「特定技能1号であれば審査が緩い」などとも言われることはありますが、これは入管審査官のさじ加減一つで状況は大きく変わるので、ここでは何とも申し上げにくいことと言えます。

まとめ

以上、留学生の「アルバイトのし過ぎ」=「オーバーワーク」について解説しました。
留学生が期間の更新や就労ビザへ変更する際に、不許可となる原因のかなり多い部類と言えるのが「オーバーワーク」です。「オーバーワーク」は素行不良であり、簡単には許してもらえないことになります。また、例えアルバイトであったとしても「オーバーワーク」をさせることは「不法就労」に関わることになること忘れてはなりません。

【行政書士からのアドバイス】
「年収何万円までなら許可が出ますか?」というご質問はたくさんいただきますが、答えは「金額ではなく時間なので回答できない」としか言いようがありません。
企業は、オーバーワークをしている学生の採用にはリスクがあることを気にしなければなりません。

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