【ビザ専門行政書士が解説】外国人美容師の就労が可能になります

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今まで外国人美容師は就労ビザでの就労はできませんでしたが、2021年より外国人美容師育成事業が始まり、美容師としての就労が可能となります。5年間で日本のヘアカットや美容について学び、実務を習得し将来的には海外でその経験を活かしてもらうことが目的となります。本編では、新しく始まる本制度について解説をします。

実は外国人で美容師になれる人は限られていた

2021年6月現在29種類の在留資格があり、そのうち報酬をもらう活動ができる在留資格は19種類、身分系の在留資格が4種類、就労が認められない(留学や観光など)は5種類、活動内容に合わせて与えられる在留資格1種類があります。この報酬をもらう活動ができる(就労が認められる)在留資格の中に美容師として働くことができる在留資格はありません。

在留資格(ビザ)について

「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。前述の通り、2021年8月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。

在留資格の一覧は下記になりますが、言い換えると以下に当てはまるものがない場合は、日本での滞在はできないということになります。
左側が就労が可能な在留資格になりますが、一覧を見ても分かるように「美容師」という在留資格はありません。よって、今までは就労ビザで美容師はできませんでした。

今まで美容師となれるのは身分系の在留資格を持っていた人のみ

「身分・地位に基づく在留資格」は活動制限がありません。「身分・地位に基づく在留資格」には『永住者』『日本人の配偶者等』『永住者の配偶者等』『定住者』の4種類があります。この4種類に該当する人の場合は、美容師になることが出来ました。また、アルバイトやパートとして留学生や主婦の方が美容室で働くことも可能です。
身分系の方に関しては、在留資格が維持できる限り日本人と同様に制約なく働くことができます。

今回の 外国人美容師育成事業では、身分系の人のように全く自由に働けるという訳ではありません。ある程度の制約の下、日本で各美容室で定めた研修計画の元に技術を習得し、将来的に海外に発信するということが目的となります。
美容師は実力主義の面もあるかもしれません。今回の制度では、本人の技量次第の部分もありますが育成計画に則て研修を進めなければなりません。日本人や身分系の外国人とは違う研修体系になることは従業員の方にも理解を得る必要があると言えます。

国家戦略特区域外国人美容師育成事業とは

外国人美容師育成事業は、他の就労ビザとは変わったスキームになります。在留期間が最大5年ということに加えて、監理実施機関といった機関によるサポートまた関係自治体との連携が必要です。

事業の目的

外国人美容師育成事業の目的は下記のとおりです。

この要領は、我が国で美容に関する実践経験を積んだ人材の海外における活躍を推進することを通じて日本の美容製品の輸出による産業競争力の強化やブランド向上を含むクールジャパンの推進を図るとともに、インバウンドの需要に対応するため、日本の美容師免許を有する外国人材を育成する国家戦略特別区域外国人美容師育成事業(以下「本事業」という。)に関して、その実施に必要な事項を定め、もって本制度を適正かつ円滑に実施することを目的とする。

国家戦略特別区域外国人美容師育成事業実施要領

上記から分かるように、単なる美容師人材の育成・雇用の確保ではなく、将来的に美容に関する知識及び技能を高め、帰国後に日本式の美容に関する技術・文化を発信することが前提となります。この技術の習得を5年間で行います。また、この制度を利用できる人材は美容師養成施設を卒業し、美容師免許を取得する(する見込みがある)人に限られます。単なる掃除のみ行う単純労働者として雇用することは認められません。あくまで育成、日本の技術の世界への発信が目的となります。

従事可能な業務について

外国人美容師は、育成期間内に美容師育成施設で習得した技術や知識を活用し、育成機関の指揮監督のもと、育成計画に基づき行われる美容に関する業務を行うことになります。具体的には下記の業務を行うことできます。

外国人雇用にとって、従事可能業務を把握しこれらを行わせることは非常に重要です。逆に、これらの業務を行わせない場合や決められた業務以外のことを行わせると違法状態となります。具体的には、外国人にとっては「不法就労罪」、育成機関(雇用主)にとっては「不法就労助長罪」に該当することになります。

外国人美容師が従事可能な業務

①シャンプー
②カット
③トリートメント
④ブロー
⑤セット・アイロン
⑥カラー
⑦パーマ・縮毛矯正
⑧ヘッドスパ
⑨まつげエクステンション
⑩ネイル
⑪エステティック
⑫着物着付け
⑬メイク
⑭洋装ブライダル
⑮出張美容
⑯美容所の経営管理に関すること
⑰その他関係自治体が必要と認める業務
⑱その他付随業務

外国人美容師を受け入れる際には、1人1人に合わせた「育成計画」を作成し、予め監理実施機関を経由し関係自治体に対し申請を行い認定を受ける必要があります。また計画通り研修が進んでいるのか、監理実施機関による習得状況の評価を受けることになります。

▶在留資格(ビザ)チェックポイント
業務内容はあらかじめ定められている従事可能な範囲内で行う必要がある。
⇒専ら掃除、チラシ配りなどの業務をさせることは認められません。
(付随業務として行うことはOK)

事業の全体像

本制度を利用するための要件

本制度は誰でも利用できるものではなく、体制を整えある程度スキームを整える必要があります。まずは、それぞれに求められる要件について確認してみましょう

どんな外国人が美容師として働けるのか

外国人美容師の要件
  • 美容師育成施設での知識・技能の習得
  • 成績優秀・素行善良
  • 美容師免許の取得(見込み含む)
  • 日本語能力試験N2以上
  • 18歳以上
  • 日本式の美容に関する技術・文化を世界へ発信する意思

この制度を利用できる外国人美容師は、N2以上で美容師免許(日本の国家資格)を取得している必要があります。美容師免許を取得するには厚生労働大臣指定の養成学校の必要課程を修了する必要があります。日本で美容について学びながら日本語能力試験2級に合格するというハードな条件が課されます。

在留資格の面での注意点に「成績優秀・素行善良」のポイントがあります。在留資格『留学』で専門学校に通う場合、「成績」と「出席率」、そして資格外活動違反がないかは必ず確認されます。基本的には、国家資格に合格できる程度なので成績優秀は問題ないと思いますが、アルバイトをしすぎて出席率が著しく低い場合は、在留不良として『留学』から本制度の在留資格への変更ができない場合があります。留学生の場合、資格外活動(アルバイト活動)は週28時間以内と決められています。特に、資格外活動違反や出席率の悪い学生に対する、就労ビザの変更は非常に厳しく審査されることになるため注意が必要です。

▶在留資格(ビザ)チェックポイント
オーバーワーク(週28時間以上のアルバイト)、成績・出席率が極端に低い場合は、その他の要件を満たしていても不許可になるリスクがあります。
※留学生⇒就労ビザへの切替で要注意ポイントです。

育成機関の要件

外国人美容師を受け入れることができる事業所には決まりがあります。用語の説明を含めて確認してみましょう。

育成機関とは

育成機関とは、本邦の公私の機関であって、外国人美容師を雇用契約に基づく労働者として受入れ、特定美容活動に従事させ、監理実施機関と連携して当該外国人美容師に実践的な美容に関する知識及び技能を習得させるものを言います。
育成機関は、次の要件を満たしている必要があります。

育成機関の要件

育成機関は大前提、日本にある機関である必要があります。法人/個人事業主は問われません。
また、受け入れることができる外国人美容師は一美容所あたり3人以内となります。

育成機関の要件
  1. 育成計画を実施できる美容所を、事業実施区域に有している
  2. 美容師法第12条の3に帰営する管理美容師を配置している
  3. 健全かつ安定的な経営状況であると認められること
  4. 労働に関する法律の規定及び社会保険に関する法律の規定を遵守していること
  5. 次のいずれにも該当しないもの(欠格事由に該当しない)
    1. 禁錮以上の刑に処せられてから5年を経過しない者
    2. 出入国管理及び難民認定法もしくは労働関係法令に違反し刑に処せられてから5年経過しない者
    3. 暴力団員による不当な行為等によって処罰を受けてから5年を経過しない者
    4. 社会関係法令に違反し刑に処せられてから5年を経過しない者
    5. 必要な判断、意思決定を適切に行うことができない者
    6. 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者
    7. 過去5年以内に、出入国管理及び難民認定法もしくは労働関係法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者
    8. 暴力団員等
    9. 営業に関し行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人がこれ以外の項目に該当する者
    10. 法人であって、その役員の内上記のいずれかに該当する者
    11. 暴力団員等がその事業活動を支配する者

外国人美容師を受け入れる場合、上記についての全てを満たしている必要があります。ポイントは「管理美容師」を配置していること、その他事業者として当然に守られるべく法律を遵守していていることになります。特に小規模の美容室の場合、社会保険がルール通りでない場合などが散見されます。これを機会に社会保険(健康保険、年金、労働保険等)の加入状況・要件についても確認するようにしましょう。

▶在留資格(ビザ)チェックポイント
労働関連の法律の遵守や社会保険への加入は年々厳しく審査されるようになっています。
これを機会に必ず確認をしましょう。

監理実施機関の要件

本制度は外国人美容師と受入機関(育成機関)だけでは完結しません。この育成計画及び外国人の適切な就労・日本での生活をサポートするための機関となる「監理実施機関」が存在します。

監理実施機関とは

監理実施機関とは、美容産業の発展に資する取り組みを実施し、かつ、美容に係る専門的知識を有する期間の内、本事業により日本の美容に関するクールジャパンの推進やインバウンド需要への対応に資する人材育成に必要な事務を実施する者として、関係自治体より認定を受けた機関になります。
次の要件を満たしている必要があります。

監理実施機関の要件

育成機関の要件
  1. 本事業に係る育成計画の策定及び実施に関する管理に必要な事務を行う人員等が確保されていること
  2. 本事業に係る育成計画の策定及び実施に関する管理を行うことを健全に遂行するに足りる財産的基礎を有するものであること
  3. 職業安定法に基づく無料職業紹介の許可を受けていること又は届出を行っていること
  4. 営利を目的としない本邦の法人であること
  5. 外国人美容師等の苦情および相談を受ける窓口を設け、適切に対応できる体制が構築されていること
  6. 次のいずれにも該当しないもの(欠格事由に該当しない)
    1. その理事、監事及び評議員の内、次のいずれかに該当する者があるもの
      1. 公益社団法人及び公益社団法人に関する法律、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し事、暴力行為等処罰に関する法律、国税若しくは地方税に関する法律偽りその他不正の行為により国税若しくは地方税を免れる等の不正行為を行ったことにより、刑に処せられ5年経過しない者
      2. 禁錮以上の刑に処せられてから5年を経過しない者
      3. 暴力団員による不当な行為等によって処罰を受けてから5年を経過しない者
    2. その定款又は事業計画書の内容が法令又は法令に基づく行政機関の処分に違反している者
    3. 国税又は地方税の滞納処分の執行がされている者又は当該滞納処分の終了の日から3年を経過しない者
    4. 暴力団員等がその事業活動を支配するもの

監理実施機関は非営利の団体である必要があります。また、育成機関からの要望があれば無料の有料職業紹介を行うこともできます。

育成計画の認定について

関係自治体は、育成機関から提出された育成計画についての認定を行います。その際に、チェックする主なポイントは以下の通りです。

育成計画について

育成計画で注意すべきポイントは以下の通りです。

  • 計画の内容が機関全体を通じて実践的な美容に関する知識及び技能の向上が図られることが確実と認められること
  • 実践的な美容に関する知識及び技能を必要としない業務又は同一の作業の反復のみによって習得できる美容に関する業務に従事させるものでないこと。
  • 実践的な美容に関する意識及び技能に係る習得状況の評価について、その実施体制、方法、実施項目等が適切であると認められること
▶在留資格(ビザ)チェックポイント
単純労働や知識や技術を使用しない業務のみの従事はNGです。

雇用契約について

雇用契約内で注意すべきポイントは次の通りです。

  • 契約期間:最大5年
  • 報酬:外国人美容師が受け取る報酬は日本人が従事する場合と同等以上
  • 保証金:監理実施機関及び育成機関から保証金を徴収されないこと及び労働契約の不履行に係る違約金を定める契約を締結することは禁止されています

労働基準法では、給料などの待遇を国籍等で差別することを禁止しています。外国籍人材は「安い労働力」ではありません。育成計画に則た研修生であったとしても、日本人と同じ業務に携わる場合には同等の報酬を支払われる必要があります。

▶在留資格(ビザ)チェックポイント
外国人雇用の原則は「日本人と同等以上の報酬」であること。

育成期間中の支援内容

本制度は、育成計画が認定され、美容師の在留資格が取れることがゴールではありません。その後も外国人美容師の在留・技能習得をサポートしなくてはなりません。

育成機関に求められるもの

育成機関は、育成計画に基づいて外国人美容師の活動をサポートし、定期的に外国人美容師の実践的な美容に関する知識及び技能の習得状況を確認をします。習熟度に応じた適切な指導を行います。外国人美容師の業務日誌を作成し備え付け、就業後1年以上は保存をします。
少なくとも半年に1回、監理実施機関の監査が入り、育成計画実施状況や就労環境について確認を受けますが、その際には育成状況を報告をすることになります。

また、 外国人美容師からの相談や苦情についてサポートをする体制を構築できていなければなりません。

もし、育成計画の変更が生じたら速やかに管理実施機関を経由して関係自治体に対して申請を行い、再度認定を受けなければなりません。

監理実施機関に求められるもの

監理実施機関は、育成機関における外国人美容師の適切な在留と育成計画に基づいた研修のサポートを行います。半年に1回は監査を行い、計画通りに進んでいるのかの確認を行ったり、それとは別に外国人美容師と面接を行って活動内容を確認します。また、普段の在留で困ったことや受入機関とのトラブルの相談窓口の役割も担います。

育成状況や評価結果について関係自治体に報告を行うのも監理実施機関の役割になります。
また、育成計画に変更がある場合は育成機関から提出された計画をもとに意見を付して関係自治体に提出をします。

監理実施機関は無料の職業紹介を担うことも可能です。外国人美容師・育成機関に対して幅広く支援をすることになります。

髪型は文化です。~可能性と想像が広がります~

外国人美容師育成事業は、インバウンドへの対応に加え、海外へ日本の文化を発信するための取組になります。また、日本国内の人口が減少していく中、海外展開を考える企業も増えているのではないでしょうか。
一方で、国内の外国人在留人数は年々増えていて、同国の美容師に施術してもらいたいというニーズは今後も高まることは想像に難くありません。

観光、企業の発展、外国人の中のリラクゼーションスポット、文化の発信など、多くの可能性が感じられる事業には違いない言えます。
在留期間は上限5年と長くはないですが、上手く活用することで企業の競争力を上げるきっかけにもなるのではないでしょうか。

【行政書士からのアドバイス】

本制度は2021年に新たに始まりました。
外国人雇用の経験の浅い美容室(育成機関)や監理実施機関という本スキームで慣れないことばかりだと思います。
入管法のみならず労働関係法、社会保険法などの遵守も求められ、様々な知識が必要になります。もし、本制度の活用をご検討の際には、当事務所にお問合せ下さい。在留資格のことだけでなく、育成計画、監理実施機関の申請などもサポート致します。

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