【ケース別に解説】特定技能から技術・人文知識・国際業務への変更は可能か?

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『特定技能』から『技術・人文知識・国際業務』への在留資格の変更は制度的には認められています。『特定技能』は最長5年の在留しか認められず先が無いと思われがちですが、両方の在留資格の要件を満たせば変更申請は可能です。これは転職が可能ということだけではなく、社内でのポジション変更や業務内容の変更が伴う昇進も可能であることになります。ただし、注意点が多いのも事実であり、本編では新しい組織の在り方の提言も含めて解説をしていきます。

在留資格とは

「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2021年7月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。

在留資格の基本的なルール

在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。

在留資格は活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。日本の在留資格制度は”一在留一在留資格”が基本となっていて、複数の在留資格を持つことはできません。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。

例えば、上記の方の場合、日本語学校の学生の間は「留学」ビザで活動します。その後、料理しになった場合は「技能」というビザに切り替えなければなりません。また、独立開業してレストランの経営者になった場合は「経営・管理」ビザを取得します。もし、将来、日本への永住を決意し一定の要件を満たしているようであれば、「永住者」ビザを取得することもできます。

在留資格の一覧は下記になりますが、言い換えると以下に当てはまるものがない場合は、日本での滞在はできないということになります。

就労ビザの基本的な考え方

就労ビザの大事なポイントは「誰が」「どこで」「どんな業務内容をするか」の3点が揃っていなければなりません。そして、これらのポイントは「同じレベル」で審査結果に影響してくると言えます。つまり、当然ですがどれか一つの要素でも欠けると不許可となります。

これは『技術・人文知識・国際業務』の在留資格を持つ人材が『特定技能』の業務は行えず、また逆も然りです。システム開発は『技術・人文知識・国際業務』で認められている業務内容ですが、これを『特定技能』の在留資格でつくことはできませんし、『技能・人文知識・国際業務』の在留資格で在留資格『技能』で認められる調理や、在留資格『特定技能』で認められる接客を行うことはできません。在留資格毎に決められた業務内容を要件を満たしている人材が、要件を満たしている就業場所で行うことになります。

在留資格『特定技能1号』とは

在留資格『特定技能』は、日本で特に人手不足の著しい産業において一定水準以上の技能や知識を持つ外国人労働者を受け入れて、人手不足を解消するために作られたものです。

特定技能とは
  • 特定技能1号:特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
  • 特定技能2号:特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

特定産業分野(14分野):介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食
※特定技能2号は下線部の2分野のみ受入可

『技術・人文知識・国際業務』との大きな違いは、『技術・人文知識・国際業務』では認められてこなかった「技能」や「単純作業」「接客業務」を行うことができることです。これらの業務は、人手不足のために『技術・人文知識・国際業務』で何とかカバーできないかと試行錯誤された企業も多いのではないでしょうか。『特定技能』ではこれらの分野がカバーされることとなりました。

ただし、在留の上限は決められています。

在留資格『技術・人文知識・国際業務』とは

『技術・人文知識・国際業務』は、(簡単に言うと)会社等において学校等で学んだこと/実務経験を活かした知識を要する(≠単純作業)仕事をすることを目的とした在留資格(ビザ)になります。
『技術・人文知識・国際業務』では、単純労働やマニュアルや反復作業によって習得できる技能や接客などの業務は原則行うことができません。あくまでも、大学や日本の専門学校で学んだベースが無ければできない業務や外国人ならではの感性や語学力を必要とする業務に従事することになります。

このため、人材に係る要件は以下の通りです。

<「技術」・「人文知識」の業務を行う場合>
  • 従事しようとする業務について次のいずれかに該当し、必要な知識を修得していること
    • 当該知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと
    • 当該知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該終了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと
    • 10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
<「国際業務」の業務を行う場合>
  • 申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は、感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれかに該当していること
    • 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。
    • 翻訳、通訳又は語学の指導にかかる業務に従事する場合は、大学を卒業しているもの

翻訳通訳業務の場合は、3年の実務経験もしくは大学卒業者になります。通訳技法を専攻していない専門卒による未経験の翻訳通訳業務は原則NGです。

『特定技能』から『技術・人文知識・国際業務』への変更申請は可能か

前述の通り、在留資格は「誰が」「どこで」「どんな業務内容をするか」が全てリンクしていなければ許可されません。このため、『技術・人文知識・国際業務』の在留資格では『特定技能』の業務は基本的には行うことが出来ません。しかし、日本の「総合職採用」や製造業や建設業の産業構造における占める割合を考えると、「現場で経験を積まなければ管理職にはなれない」という考えによって、在留資格と人材戦略のミスマッチが発生していました。

制度的に『特定技能』から『技術・人文知識・国際業務』への変更は可能です。

1人の外国籍人材が『特定技能』から『技術・人文知識・国際業務』に在留資格の変更ができるかどうかは、「その人材が双方の要件を満たしていること」「従事する業務内容が該当していること」がポイントになってきます。実際に、両方の要件を満たしている場合の変更申請は許可されます(過去に実際に経験しているので間違いありません)。

転職をするケース

『特定技能』人材が『技術・人文知識・国際業務』の要件を満たす場合、転職先の業務内容が『技術・人文知識・国際業務』の要件を満たしているものであれば変更は可能です。一度、日本から出国する必要はなく「在留資格変更許可申請」が許可されれば就業可能です。

ただし、在留資格『特定技能』の場合は、就業先と業務内容を指定して勤務することになるため、転職先が決まっていて“要件を満たしていても”許可される前に働くことはできません。

同一企業内で変更するケース

同一企業内で変更する場合は、『技術・人文知識・国際業務』に認められ得る場合とそうでない場合があります。

変更が可能な場合

変更が可能な場合は下記のケースが想定されます。

  1. 現業従事者が本部などの非現業部門に移動する場合
  2. 現業従事者が管理者などに昇進する場合

1のケースでは、外食業で『特定技能』人材として店舗で勤務をし、本部のマーケティング部門に異動になる場合が想定されます。産業機械製造分野でマシニングセンタの技能者が、製図やCADオペレーターになる場合もこのケースに該当します。後で解説もしますが、『技術・人文知識・国際業務』で現場研修するには期間に制限があります。現場での実績・成績が認められ異動する場合などは「総合職」採用の場合にはキャリアステップとして想定される範囲です。

2のケースでは、外食業で『特定技能』人材として店舗で勤務をし、数店舗を統括するSV(スーパーバイザー)に昇進する場合が想定されます。『技術・人文知識・国際業務』で外食業の現場で働く場合、数店舗を統括するポジション以上(場合によっては店長も認められます)になります。管理職に登用される場合には変更申請として認められ得る範囲だと思います。

ただし、2のケースの場合、一つの就業場所に『特定技能』と『技術・人文知識・国際業務』が就業することになります。この場合、明確な業務や役割の分担を説明できない場合には許可されません。この立証は非常に難しい申請(=不許可の可能性が高い)になるのことが想定されます。事実、一つの就業場所における『技能実習』と『技術・人文知識・国際業務』の棲み分けの説明が必要な申請は非常に難易度が高くなっています。

変更ができない場合

同じ業務内容で特に役割に変更があるわけでもなく『特定技能』から技術・人文知識・国際業務』に変更する場合は許可はされません。

いずれにしても、『技術・人文知識・国際業務』に在留資格変更許可申請が認められない場合は、『特定技能1号』し続けることになります。ここで言いたいことは、例え『技術・人文知識・国際業務』の要件を満たしている人材であっても、「日本に残りたい」という理由だけでは許可は得られないということになります。

更許可申請が不許可になったとしても、特定技能の在留期限が残っていればその後も就業は引き続き可能です。また要件を満たしていれば特定技能の在留期間更新も許可され得ます。一度不許可になったら必ずしも帰国をしなければならないわけではないため、安心してチャレンジすることは出来ます。

在留資格の変更はこれからの組織ではあり得る話し

在留資格制度は日本特有の組織に馴染んでいません。しかし、今後、人手不足の課題に解決していくためには新しい組織を作っていく必要があります。当事務所なりの考えも含めてまとめてみました。

そもそも在留資格は「ジョブ型雇用」が前提

「ジョブ型雇用」はここ数年で着目されてきた考え方の一つです。従来の日本の採用方式は「メンバーシップ型雇用」であり、いわゆる「総合職採用」が典型例です。「総合職採用」は非常に万能であり、「新卒採用」をすることで組織内で玉突きを起こし、「現場」「チームリーダー」「管理職」全てのポジションの人員を補うことができるというものです。多くの日本の企業はこの方法によって成長してきました。

一方、在留資格は「ジョブ型雇用」を想定されており、即戦力人材やスペシャリスト人材を雇用することが想定されています。つまり、外国籍人材の新卒として総合職採用をすると、在留資格的になじまない場合があります。

ミスマッチの典型例が外食業での総合職採用です。多くの場合、幹部候補として採用された場合でも数年間は店舗で経験を積むことになります。多くの場合が、店舗のフロア主任から始まり店長を経て、SV(スーパーバイザー)や本部スタッフに異動となります。
総合職採用(将来の幹部候補)の在留資格を検討する場合、多くの場合で『技術・人文知識・国際業務』が該当しますが、この在留資格の場合、数年単位の現場研修は想定しておりません。まただいたいのケースで、最終的に現場での成績優秀者のみが昇進することが想定されるため、実際のところは「数年間、現場で働き、優秀であった場合にSVに昇進」というのがキャリアステップのストーリーとなっているはずです。そもそも確定していないキャリアアップに関しての長期間の現場研修は『技術・人文知識・国際業務』では認められておりません。

このため、外食業において総合職採用をする場合は虚偽申請や資格外活動罪にならないか慎重に判断を行わなければなりません。

「実務研修」のガイドラインは万能ではない

こちらのガイドライン(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許容される実務研修について)にあるように、一定の条件のもと現場における実務研修は認められています。計画に基づいて明確に期間が定められていること、同等のポジションに配属される日本人もその計画に則て研修をすることなどを説明し許可された場合に見とれられる場合があります。

このガイドラインは万能ではないため、申請時には必ず実務研修を行うことを「雇用理由書」内で説明をし、入管の了承(=許可)を得ておいた方がよいです。というのも、現場で働くことに触れずに申請をする場合は虚偽申請とみなされるだけでなく、そもそも在留資格で認められた範囲外の仕事をしている(資格外活動罪)に該当するため不法就労になってしまいます。あくまで一時的であるということを申請書内に書いて入管から資格外活動に対する“お墨付き”をもらっておく方が無難です。
長期の現場研修が想定される『技術・人文知識・国際業務』の申請は、非常に不許可リスクが高く審査期間も長くなりがちな申請になります。場合によっては許可を得るまで1年以上、申請と不許可を繰り返すことも想定されます(覚悟が必要な申請になります)。

当然ですが、外国籍人材の能力が伴わずに実務研修の期間が延びてしまった場合、在留期間更新許可申請時に改めて説明しなければなりません。

「日本型雇用」×「人手不足」の解決に新しい組織作りは絶対に必要

こんな運用・組織作りはまだ例はないでしょうし、はっきり言って理想論と思われるかもしれません。
しかし、これからどんどん人手不足が加速することを考えると、外国籍人材による新しい組織作りは必須です。その方法は2通りあります。

ネクステップ行政書士事務所が提唱する新しい在り方
  1. 「特定技能」人材と「技術・人文知識・国際業務」人材が併存する組織
  2. 「特定技能」人材で5年以内にキャリアステップできた場合に「技術・人文知識・国際業務」人材に変更になる組織

1のケースは、外国人材においては従来の「総合職採用」はやめて、人手不足に対応しなければならない部分は『特定技能』人材を雇用し、管理職に関しては長期間の現場研修が不要の即戦力人材を『技術・人文知識・国際業務』で雇用することです。
2のケースは、優秀な人材の場合は総合職採用になれることを条件に『特定技能』人材として就労する間に、管理職としての素質を見極める場合になります。

そもそも「総合職採用」は日本独特の組織作りの在り方です。外国籍人材はみな「ジョブ型採用」になれています。「管理職候補」として採用されたにも関わらず何年も現場で予定していなかった業務を行うことは、仕事のモチベーションにもつながらず早期退職にもなり得ます。そうであるのであれば、初めから「現場仕事」を割り切っている人材を採用したほうが定着につながります。

当事務所では新しい御社の組織作りを在留資格の面からサポート致します。在留資格の申請手続きを行うことが「就労ビザ専門の行政書士」の役割ではありません。ネクステップ行政書士事務所と一緒に新しい組織の在り方を模索してみませんか?

まとめ

在留資格『特定技能』が創設されてから早くも2年が経ったものの、新型コロナウィルスの流行という不測の事態が発生し外国籍人材を取り囲む環境は大きく変わりました。出入国が自由にできなくなった背景や、高度人材の就職先が激減してしまった背景を受け、技能実習から特定技能の変更や、専門学校生・大学留学生など本来であれば高度人材となり得る人材が特定技能を取得するなどをしています。
今後、ますます新しい組織の在り方が求められるようになってくることが予想されます。

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