海外の大学の学生をインターンシップで受け入れることが可能です。この場合、在留資格『特定活動(9号・インターンシップ)』を活用することになります。インターンシップは外国人雇用の入り口となりつつある一方で、意外にルールや要件が厳しいのが近年の傾向です。本編では、インターンシップで受け入れるための要件とビザ申請について解説をします。
※国内大学生によるインターンシップはこの制度に該当しません。こちらを参照ください。
入管が定義する「インターンシップ」とは
外国の大学の学生は、在留資格『特定活動(9号・大学生のインターンシップ)』を取得することで、インターンシップとして日本で職業体験をすることができます。ただし、しっかりと体制の整った環境で活動が行われることが求められています。この内容について確認をします。
外国の大学生が行うインターンシップとは
入管が発表をしているガイドラインにおいて、インターンシップについての基本的な考え方として下記のように書かれています。
インターンシップとは、一般的に、学生が在学中に企業等において自らの専攻及び将来のキャリアに関連した実習・研修的な職業体験を行うものであることから、インターンシップ生を受け入れる企業等においては、産学連携による人材育成の観点を見据えた広い見地からの対応が求められるとともに、適正な体制を整備した上で、インターンシップ生が所属する大学とも連携しながら、教育・訓練の目的や方法を明確化するなど、効果的なインターンシップ計画を立案することが重要です。
外国の大学の学生が行うインターンシップに係るガイドライン
▶参考:出入国在留管理庁『外国の大学の学生が行うインターンシップに係るガイドライン』
インターンシップに求められるもの
昨今、単なる労働力の供給制度として、 本制度を悪用する事例が多くみられ問題視されていました。本制度はインターンシップ(職業体験)であり、単純労働者の受入れとは異なります。学生、単位取得もしくは卒業の要件として活動を行い、受入企業はきちんとした教育体制・実習計画のもと実習を行わなければなりません。
在留資格(ビザ)の申請が通るような計画を立案し、実際に在留資格(ビザ)の許可が出た場合であっても、その通りに活動が実施されていない場合は、次回以降の受入れは厳しくなります。
ガイドラインにも定められているように、地方出入国在留管理官署による実施調査等が行われる場合もあり、またインターンシップ中、終了後については実施状況や評価結果に関する報告書を作成し、インターンシップ終了後一定期間(最低3年間)保存することが求められています。
インターンシップをする外国人学生が取得する在留資格について
大学の学生がインターンシップのために来日するためには『特定活動(9号・インターンシップ)』を取得します。ただし、誰でもどの企業でもインターンシップを活用できるものではなく、一定の要件を満たす必要があります。
在留資格『特定活動(9号・インターンシップ)』の要件について
在留資格『特定活動(9号・インターンシップ)』の要件について解説をします。
契約期間について
在留資格『特定活動(9号・インターンシップ)』で受入れができる機関は、1年を超えない期間でかつ通算して大学の外国人学生が通っている大学の修業年限の2分の1を超えない期間内になります。
インターンシップが可能な“学生”について
学位の授与される教育課程に属する短期大学・大学・大学院生が対象になります。入国時に18歳以上になります。
通っている大学において、インターンシップにより単位が取得できることやインターンシップ自体が卒業要件であることが明確になっている大学(・カリキュラム)の学生でなければなりません。
受入企業は大学とインターンシップで学生を迎えることの契約を締結することになります。
職業体験が可能な業務内容について
インターンシップは大学教育の一環であることから、外国の大学において専攻している科目と関連する業務に従事するなど、インターンシップにおいて修得する知識・経験等が大学において学業の一環として適正に評価されることが必要です。したがって、基本的には一定の知識・技術等を身に付けることが可能な活動である必要があり、大学生に求められる知識や教養の向上に資するとは認められないような、同一の作業の反復などの単純作業に主として従事することは認められません。
あくまで、社会実践を通じて大学において修得する知識や教養に資する知識、技術等を修得することが目的となります。
適切な受入れ体制が整っている
受け入れ体制についてポイントは以下の通りですです。
①インターンシップ生が労働力確保の手段として受け入れる者でないことを十分に認識していること
②インターンシップ責任者を選任している
③インターンシップ生が従事する業務を1年以上経験している常勤のインターンシップ指導員を選任している
④入管法や労働関係法について遵守している
⑤インターンシップ実施状況や評価結果に関する報告書を作成し、インターンシップ終了後最低でも3年間保存すること
インターンシップの受入れに関して適切に実習計画を実行できる受け入れ態勢が整っている必要があります。インターンシップの責任者や指導員は、指導や安全・衛生への配慮、生活するうえでの相談や苦情の対応を行います。
大学との契約に反する取り決めを行うことは禁じられており、インターンシップ生に負担する費用がある場合には予め開示をして費用負担や負担金額を合意するなど、金銭面でのトラブルが無いように注意をする必要があります。
・常勤職員が301人以上の場合:常勤人数×20分の1
・常勤職員が201人以上300人以下の場合:15人
・常勤職員が101人以上200人以下の場合:10人
・常勤職員が100人以下の場合:5人(ただし、常勤職員数以下)
インターンシップを受け入れるにあたっての特に注意が必要なこと
在留資格『特定活動(9号・インターンシップ)』を活用するうえで、特に注意すべきこと2点について確認します。
適切な実施計画・実施体制のもとでの受け入れを行うこと
前述の通り、インターンシップは教育プログラムの一環であるはずの一方で、過去には「労働力」とみなし適切な指導が行われないケースが多くありました。入管においてもこのことを強く警戒しており、特に2回目以降の受入れにおいて前回の実施状況を確認され、そこで適切な実施が行われなかったことが判明すると何かしらの指摘を受けることになります。
そのため、インターンシップを受け入れる場合には、実習計画に基づき、適切な受け入れ体制(責任者・指導員)の下きちんと実習を行い、そして要件の一つにもなっている実習の記録・報告書をしっかり作成し保管するようにしましょう。
労働関係法の適用について
インターンシップ生においても労働関係法の適用を受ける場合があります。
例えば、インターンシップ生が受入れ機関の事業活動に直接従事するなど、当該活動による利益・高かが企業に帰属し、かつ、当該活動が業務上の指揮命令を受けて行われるなど、受入機関とインターンシップ生との間に「使用従属関係」が認められる場合には、当該活動が教育的な側面を有しているとしても、インターンシップ生は労働基準法の労働者に該当するとされていますので、この場合は、報酬額や支払方法その他の労働条件については最低賃金法、労働基準法等の労働関係法令を遵守する必要があります。
外国の大学の学生が行うインターンシップに係るガイドライン
座学研修の場合や事業活動以外の活動によっても、指揮命令関係である場合は労働時間に見なされる場合があります。その場合は報酬を支払う必要があります。さらに、受入機関とインターンシップ生との間に「使用従属関係」が認められる場合には、あっせんを行う仲介事業者についても職業紹介の許可等を受ける必要があります。
それぞれのケースが使用関係に値するのかどうかの判断は、ハローワークの意見・指示を得ながら行ってください。
▶出入国在留管理庁『特定活動3』
ビザ申請の流れについて
海外にいる学生を日本に呼ぶために行う申請は「在留資格認定証明書交付申請」になりますが、そもそも「在留資格認定証明書交付申請」が何なのか、それを取得してどのように日本に入国するのか解説します。
「在留資格認定証明書」とは
日本に適法に在留するためには2つの許可が必要です。
- 日本に入国をさせても良いのかの許可(上陸許可)
- 上陸後の活動内容や身分が適法であるかのステータス(在留資格)の許可
これらの審査を事前に行い問題が無いと認められた申請に対して交付されるのが「在留資格認定証明書」となります。実際の入国は、さらに有効な旅券(パスポート)を所持し、その旅券に査証を受けていることが条件になります。「在留資格認定証明書」が交付されたら、申請人(外国人)の母国にある日本大使館でそれを以て査証の発給を受けます。
ビザ申請~インターンシップ受入れまでの流れ
在留資格の申請を行うタイミングは内定出しをしてから入社(入国)までの間になります。
例えば、短期滞在(いわゆる観光ビザ)で入国し、審査の結果が出る前に就労をさせると資格外活動違反になるため気を付けてください。また、審査期間も3週間~数カ月に及ぶ場合もあるため、申請は計画的に行わなければなりません。
海外の大学生を招聘するための手続き「在留資格認定証明書交付申請」
「在留資格認定証明書交付申請」の具体的な手続き方法について解説致します。
誰がどこで行う申請なのか?
外国人学生を招聘する場合は、申請人(外国人)本人か雇用をしようとしている機関の職員が申請人の居住予定地、受入機関の所在地を管轄する入管に申請に行きます。
なお、届け出を行っている「取次者」についても、申請を代わって行うことができます。
「取次者」の例として、国人の円滑な受入れを図ることを目的とする公益法人の職員、行政書士、弁護士がなることができますが、一定の研修を受けて登録された人のみになります。
▶出入国在留管理庁:管轄について
いつまでに行うものなのか?
インターンシップの場合の在留資格認定証明書交付申請は、大学と日本企業が契約を締結した後、インターンシップ生が確定した後、かつ受入れ日までに行います。ただし、実際の入国・就業開始については在留カードの交付を受けてからになります。審査期間は業務内容や企業規模にもより、早いと2週間、時間のかかる申請の場合には数か月かかる場合もあります。(申請書に記載する入国予定日までに必ずしも結果が出るとは限りません。)このため、速やかに申請することをお勧めします。ただし、認定証明書には有効期限があります。通常は交付日から3ヶ月以内に入国しなければなりません(※新型コロナウィルス感染症の影響で2022年1月31日発行分までは特例あり)。かなり先に就業開始予定の場合は、すぐに申請をしないほうがよい場合もあります。
当然、不許可が出る場合もあります。この場合は不許可の内容次第では再申請が可能な場合には再申請を行うこともできます。想定以上に時間がかかるため、計画的にかつ早めに準備を進めましょう。
インターンシップ生受入後の社会保険について
インターンシップ生を受入れ、プログラムの一環で報酬を支払うような活動(労働)を行わせる場合は、労働関係法の適用を受けるだけでなく、社会保険等への加入手続きを行う必要がある場合があります。
労災保険
労災保険は、原則、労働者を1人でも雇用していれば適用事業所となります。除かれるのは「農林水産業を営む個人経営で従業員5人未満」の場合のみです。適用事業所に雇用される従業員は、学生の外国人インターンシップ生であっても労災保険に加入しなければなりません。
雇用保険
雇用保険は、「学生」の場合は加入義務はありません。適用事業所であっても不要です。
雇用保険の手続きをしない場合、『外国人雇用状況届出書』を提出しなければなりません。雇用時と退職時にハロワークに対して提出をします。
▶厚生労働省:『雇用状況届出書について』
▶「外国人雇用状況届出システム」についてはこちら
健康保険・厚生年金
社会保険(健康保険・厚生年金)は加入が必要な場合としない場合があります。
社会保険の適用事業所について
次の①または②に該当する事業所は、法律上当然に健康保険の適用を受けます。
- 常時5人以上の従業員を使用して適用業種(≠非適用業種)を行っている事業所
※常時5人未満の個人が経営する事業所は健康保険の適用事業所にはなりません。 - 常時1人以上の従業員を使用する、国、地方公共団体又は法人の事業所
※適用業種/非適用業種に関わらず適用事業所になります
②サービス業:旅館、料理飲食店、理容美容業等
③法務:弁護士、弁理士、公認会計士、社会保険労務士、税理士等
④宗教:神社、寺院、教会等
適用労働者について
適用事業所でフルタイムで働く場合は、基本的には国籍問わず被保険者になります。ただし、以下の場合は適用除外となります。
②所定労働時間が正社員の4分の3未満の場合
厚生年金・健康保険の被保険者ではない場合
勤め先が社会保険(厚生年金・健康保険)の適用事業所でない場合や、働く外国籍従業員の方が適用除外である場合は、「国民年金」「国民健康保険」に加入することになります。 「国民年金」「国民健康保険」についても、国籍は関係なく日本に住む人であれば加入義務があります。 手続きは、お住まいを管轄する市区町村の窓口でできます。
社会保障協定によって厚生年金・国民年金は加入しなくてもよい場合があります。
▶ 参考:日本年金機構『社会保障協定』
まとめ
以上、外国の大学の学生をインターンシップで受け入れるための要件とビザ申請について説明しました。
教育プログラムの一環であるため、通常の雇用とは全く違うものになりますが、学生を迎えることでダイバーシティな環境づくりのきっかけになるはずです。外国籍の方と関わることについて興味のある場合は、活用されてみてはいかがでしょうか。
【行政書士からのアドバイス】
大学とのコネクションが無い場合は、気軽に始められる制度ではありません。コネクションが無い場合は、仲介を行う企業の利用も検討されてみてください。受け入れ方法、ビザ申請含め分からない場合はお気軽に当事務所にお問合せ下さい。