【ビザ専門の行政書士が解説】調理・製菓の専門学校卒業生を飲食店・ホテル等で雇用する方法

記事更新日:

専門学校や大学で調理や製菓を学んだ外国人留学生は、引き続き日本の飲食店等で実習・就業をすることができます。本来、料理人として就職するためには在留資格「技能」を取得しなくてはならず、この要件として10年以上のコックとしての実務経験が必要でした。調理や製菓を学んだ留学生が母国に帰って日本の料理や文化を広める目的・クールジャパン事業の一環として本制度が始まりました。本編では「外国人調理師」の制度について解説します。

料理人が取得できる在留資格について

2021年10月現在29種類の在留資格があり、そのうち報酬をもらう活動ができる在留資格は19種類、身分系の在留資格が4種類、就労が認められない(留学や観光など)は5種類、活動内容に合わせて与えられる在留資格1種類があります。この中で、料理人として活動できるのは在留資格「技能」、活動制限のない身分系の在留資格、そして日本料理海外普及人材育成事業で認められる外国人調理師になります。

在留資格(ビザ)について

「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。前述の通り、2021年10月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。

在留資格の一覧は下記になりますが、言い換えると以下に当てはまるものがない場合は、日本での滞在はできないということになります。
左側が就労が可能な在留資格になりますが、一覧を見ても分かるように「美容師」という在留資格はありません。よって、今までは就労ビザで美容師はできませんでした。

料理人として働くことができる在留資格(ビザ)について

料理人として就業できる在留資格について説明します。

在留資格『技能』(コック)

在留資格『技能』は、外国に特有の産業分類、外国の技能レベルが我が国よりも高い産業分類での熟練技能者が取得できる在留資格です。料理人の他、外国で考案された住宅の建築、宝石・貴金属・毛皮の加工、動物の調教、外国特有のガラス製品、絨毯等の製作・修理、パイロット、ソムリエ、スポーツの指導のそれぞれのスペシャリストが取得できます。

在留資格『技能』で料理人として従事する場合は、外国の料理(例えば、中華料理、フランス料理など)が前提です。また、「熟練した技能を要する」というのは、(アルバイトや下積み期間は含まない)10年以上の実務経験が必要になります。
また、従事する業務はそれらの技能を活かした外国の料理・調理となります。

身分系の在留資格

身分系の在留資格(「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」)は活動制限が無いため、料理人として働くことが可能です。在留資格『技能』とは異なり、母国の料理である必要も熟練技能者である必要もありません。このため、在留資格『技能』では就業のできない、外国の料理を提供しないような飲食店(例えば、居酒屋やファミレス)の調理場での就業も可能です。

特定技能(※業務の一部として)

在留資格『特定技能1号』の外食業分野では、活動内容がフロアでの接客・配膳、調理場での調理や店舗管理業務に従事できます。雇用契約期間全体でこれらの業務にまんべんなくかかわる必要があるため、調理師としてのみ従事することはできませんが、活動の一部として「料理人」として従事することはできます。

調理・製菓の専門学校卒業生が取得できる在留資格(ビザ)について

調理・製菓の専門学校生は、引き続き日本で就業しながら実習を行う場合に、在留資格『特定活動(外国人料理人・外国人製菓衛生師)』を取得することができます。
「日本の食文化海外普及人材育成事業」創設前は、 調理・専門学校の卒業生は、日本で料理人として就業することはできませんでした。例えば、在留資格『技能』の場合は熟練料理人として10年以上の実務経験が必要ですし、一方で、大学や日本の専門学校卒業を要件としている在留資格『技術・人文知識・国際業務』では、活動内容として「調理」は認められていません。

しかし、 「日本の食文化海外普及人材育成事業」 を活用することで、最大5年間、日本の調理・製菓を行う事業所で実習(就業)を行うをことができます。

「日本の食文化海外普及人材育成事業」について

「日本の食文化海外普及人材事業」は日本の文化を海外に発信する政策の一部です。外国人留学生に日本の文化を一定期間で習得してもらって、将来的に海外に発信してもらうことが大きな目的です。

▶参考:農林水産省『日本料理海外普及人材育成事業

事業の目的

本事業は、日本料理の海外普及を目的に、調理の専門学校を卒業した外国人留学生が、引き続き、日本国内の日本料理店等で働きながら技術を学べる制度として創設されました。その後、日本料理以外の分野でも教える技術が高い日本で学びたいという意見があり、令和元年11月より、調理又は製菓の専門学校を卒業した留学生が就職できる業務の幅を拡充し、日本料理以外の料理や製菓も対象とすることで、日本の食・食文化の海外普及の促進を行うものとなりました。

現在では、調理や製菓の専門学校を卒業した留学生が、引き続き日本で調理技術を学ぶために実習計画に基づきながら、飲食店や菓子・パン製造小売、ホテル・旅館等で最大5年間就業することができる制度となっています。
日本で技術を学んだあとは、母国でその経験を活かしながら日本の職・食文化の海外普及の促進を行うことが期待されます。

製菓分野の場合は、3年以内に製菓衛生師の試験を受験することが求められ、合格・免許取得することで最大5年の在留が可能になります。

人材育成の対象とする業務の範囲について

想定される受入機関(雇用機関)と業務内容について説明します。

想定される受入機関について

本事業の「外国人調理師」を雇用ができる機関は下記のような機関が想定されています。

  • 日本料理店
  • 日本料理店以外の飲食店
  • 製菓及び製パン小売店
  • ホテル、旅館及びリゾートクラブ

業務の範囲について

受入機関において、取組実施機関で修得した技術や知識を活用し、実習期間内に下ごしらえから料理の完成に至るまでの一連の作業工程を実習することが可能であることが前提となります。

つまり、製菓の専門学校を卒業した場合は、パティシエとして働くことが想定されます(学校で学んでいない、調理等の職に就くことはできません)。また、在留期間の5年間の間、調理・製菓の一部分の工程のみに従事することはできず、見習いや下積みの立場であっても、計画に則って「下ごしらえから料理の完成」に一貫して従事することが望まれます。

従事する業務は、上記の要件を満たしたうえで、日本産業分類に定める下記の該当する事業所で提供される料理又は飲食料品の調理等の業務になります。

分類No分類名
76飲食店
5861菓子小売業(製造小売)
5863パン小売業(製造小売)
7511旅館・ホテル
7592リゾートクラブ

日本料理海外普及人材育成事業の全体像

日本料理海外普及人材事業の全体像は以下の通りです。事業主と外国人調理師の雇用関係に加えて、実習計画の監理をする「取組実施機関」が存在します。

▶出所:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaisyoku/ikusei/pdf/index-3.pdf

日本料理海外普及人材育成事業の実施スキーム

製菓分野における範囲と実習期間について

本制度を利用するための要件

本制度を利用するためには、「外国人」「受入企業」「取組実施機関」がそれぞれ要件を満たさなければなりません。

どんな外国人が「外国人調理師」として働けるのか

「外国人調理師等」の要件
本制度を利用するためには、下記の全ての要件を満たしている必要があります。

  • 次のいずれかに該当する者で取組実施機関(詳細は後述)の推薦を受けて特定調理等活動を行う者
    取組実施機関において、調理師もしくは製菓衛生師になるために必要な知識及び技能を習得し、調理師免許若しくは製菓衛生師免許を取得した者、調理師免許若しくは製菓衛生師免許の申請資格を得た者、製菓衛生師法第5条第1号の規定による都道府県知事の指定を受けた製菓衛生師養成施設を卒業した者又は製菓分野の課程を置く大学等を修了した者
  • 取組実施機関において調理又は製菓(以下「調理等」という。)の業務に従事するために必要な知識及び技能を修得し、成績優秀かつ素行が善良であること。
  • 調理等の知識及び技能を高めようとする意思、及び帰国後、日本の食文化を世界へ発信する意思を有すること。
  • 特定調理等活動への従事を開始する時点で満 18 歳以上であること。
  • 調理師免許又は製菓衛生師免許の申請資格を有している者については、本事業に従事する時点において当該免許を取得していること。
  • 製菓衛生師養成施設を卒業した者及び製菓分野における大学等を修了した者については、卒業した後三年以内に製菓衛生師の免許を取得する意思があり、申請書にその旨を宣誓していること。

在留資格の面での注意点に「成績優秀・素行善良」のポイントがあります。在留資格『留学』で専門学校に通う場合、「成績」と「出席率」、そして資格外活動違反がないかは必ず確認されます。基本的には、国家資格に合格できる程度なので成績優秀は問題ないと思いますが、アルバイトをしすぎて出席率が著しく低い場合は、在留不良として『留学』から本制度の在留資格への変更ができない場合があります。留学生の場合、資格外活動(アルバイト活動)は週28時間以内と決められています。特に、資格外活動違反や出席率の悪い学生に対する、就労ビザの変更は非常に厳しく審査されることになるため注意が必要です。

▶在留資格(ビザ)チェックポイント
オーバーワーク(週28時間以上のアルバイト)、成績・出席率が極端に低い場合は、その他の要件を満たしていても不許可になるリスクがあります。 ※留学生⇒就労ビザへの切替で要注意ポイントです。

取組実施機関の要件

取組実施機関は、下記の要件を満たしている調理師養成施設製菓衛生士養成施設等が取得をします。

「取組実施機関」の要件
  • 本事業に係る実習計画の策定及び実習計画に基づく活動の実施に必要な事務を行う人員が確保されていること。
  • 健全かつ安定的な経営状況であると認められること。
  • 職業安定法(昭和 22 年法律第 141 号)に基づく職業紹介の許可を受けていること又は届出を行っていること。

上記の要件は、職務経歴書、直近の財務諸表、職業紹介に係る許可又は開始届出受理に関する文書にて確認されます、

【取組実施機関になれる機関について】
調理師養成施設(調理師法(昭和 33 年法律第 147 号)第3条第1号の規定による都道府県知事の指定を受けた施設)
・製菓衛生師法(昭和 41 年法律第115 号)第5条第1号の規定による都道府県知事の指定を受けた製菓衛生師養成施設
製菓分野(製パンを含む。以下同じ。)の課程を置く大学等(学校教育法(昭和 22 年法律第 26 号)第 83 条に規定する大学、及び短期大学高等専門学校専修学校(のうち、履修科目等の要件を満たすもの

受入機関の要件

受入機関は、外国人調理師と雇用契約を交わす雇用主になります。

「受入機関」の要件
  • 外国人調理師等が調理等の知識及び技能を修得するため、実習計画を適切に実施できる事業所(以下「事業所」という。)を有していると認められること。
  • 健全かつ安定的な経営状況であると認められること。
  • 労働関係法令及び社会保険関係法令を遵守していること。
  • 過去三年間に外国人の受入れ又は就労に係る不正行為を行ったことがないこと。

実習計画の認定について

本制度を利用するためには、「実習計画」の策定が必要です。これは、取組実施機関と受入機関が共同で作成します。申請人(外国人調理師)の在留期間満了日から1か月前までに「実習計画」を農林水産省に申請し、認定を受けなければなりません。

実施計画では、「知識・技能習得の体制について」「外国人調理師の就業・生活に関するサポートについて」「適切な在留を確保について」を満たしている必要があります。

知識・技能習得の体制について

・調理等の知識及び技能を修得するための計画及び施設に関する事項
・調理等の知識及び技能に係る修得状況の評価に関する事項
・受入期間

日本の食文化海外普及人材育成事業実施要領

外国人調理師はあくまで実習生です。実習計画全体を通して知識の習得・技術の向上につながるものでなくてはなりません。後述しますが、実習計画中は取組機関による監査によって実習計画の進捗状況は確認されるものになります。

外国人調理師の就業・生活に関するサポートについて

・在留中の住居の確保に関する事項
・外国人調理師等が母国に一時帰国可能な程度の休暇の取得に関する事項
・調理等の指導員及び生活指導員の任命に関する事項
・報酬及び労働・社会保険への加入等を担保する財産的基盤に関する事項
・外国人調理師等との面接及び外国人調理師等からの生活・労働等に係る相談への対応(苦情処理を含む。)並びに監査の実施に関する事項

日本の食文化海外普及人材育成事業実施要領

外国人調理師が不自由なく日本で生活できるように、私生活のサポートも必要です。また、「外国人」であることから休暇の取り方への配慮や、「外国人」であることで労働条件や就業環境で不利益を被ることのないような体制構築が必要です。

適切な在留を確保について

・外国人調理師等の特定調理等活動に係る経費の確保及び担保措置に関する事項
・特定調理等活動の継続が不可能となった場合の措置に関する事項
・外国人調理師等に「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和 23 年法律第 122 号)」(以下「風俗営業法」という。)第2条第3項に規定する「接待」を行わせない旨の誓約
・旅館・ホテル又はリゾートクラブに該当する事業所において特定調理等活動を行わせる場合にあっては、外国人調理師等に調理等以外の業務(例:フロント業務、宿泊客の荷物運搬、客室整備、売店等の販売業務、館内清掃等)に従事させない旨の誓約
・その他農林水産省が必要と認める事項

日本の食文化海外普及人材育成事業実施要領

受入機関の事情により受入が困難になった場合の措置や、外国人調理師が5年間の実習を終えて帰国する際の経費支弁や製菓衛生師の受験費用や免許取得についても定めます。基本的には外国人調理師自身が負担しますが、どうしても困難である場合には、取組機関及び受入機関が負担をしなくてはなりません。

実習計画で確認されるポイント

農林水産省は、取組実施機関から提出された実習計画についての認定を行います。その際に、主なチェックするポイントは以下の通りです。特に重要と感じるポイントをピックアップします(細かい内容は実施要項をご確認下さい)。

実習計画について

実習計画で注意すべきポイントは以下の通りです。

  • 計画の内容が期間全体を通じて効果的な調理等の技能の向上が図られることが確実と認められること
  • 調理等の技能を必要としない業務又は同一の作業の反復のみによって習得できる調理等の業務に従事させるものでないこと。
  • 調理等の知識及び技能に係る修得状況の評価についてその実施体制、方法、実施項目等が適切であると認められること
  • 本事業に従事する時点において製菓衛生師免許を取得していない外国人調理師等については、調理等の知識及び技能を修得するための期間を3年としていること。
  • 受け入れる事業所が明確になっており、受け入れ人数を一事業所当たり3人以内としていること。
▶在留資格(ビザ)チェックポイント
単純労働や知識や技術を使用しない業務のみの従事はNGです。

雇用契約について

雇用契約内で注意すべきポイントは次の通りです。

  • 契約期間:最大5年
  • 報酬:外国人調理師が受け取る報酬は日本人が従事する場合と同等以上
  • 保証金:取組実施機関及び受入機関から保証金を徴収されないこと及び労働契約の不履行に係る違約金を定める契約を締結することは禁止されています

労働基準法では、給料などの待遇を国籍等で差別することを禁止しています。外国籍人材は「安い労働力」ではありません。実習計画に則た研修生であったとしても、日本人と同じ業務に携わる場合には同等の報酬を支払われる必要があります。

▶在留資格(ビザ)チェックポイント
外国人雇用の原則は「日本人と同等以上の報酬」であること。

実習期間中の支援内容

実習期間中は、取組実施機関による実習計画の進捗状況や就業環境の確認を受けることになります。

取組実施機関は、あらかじめ認定を受けた実習計画通りの知識・技能習得が行われているか、予定した労働条件・環境下で就業できているか等を、少なくとも半年に1回監査を行い、管轄区域の入管に報告をしなくてはなりません。
農林水産省から受入れ状況の是正を受けた場合には、必要な措置を講ずるよう受入機関に働きかける役割も担います。

また、受入後1年目は半年に1回、2円目以降については必要時応じて外国人調理師等と面接を行い状況を確認します。面接実施後は、農林水産省に報告をします。

その他にも、取組実施機関は、受入機関の外国人調理師に責任が無い場合で受入れが困難になった場合は次の実習先の選定を行うほか、外国人調理師が帰国費用や製菓衛生師の受験料・免許取得料を準備できない場合は、その費用の負担を行わなければなりません。費用負担が取組実施機関ができない場合は、受入機関が行います。

実習計画が変更になった場合や無事に終了した場合などは、農林水産省に報告を行います。
これらが適切に行われない場合は、実習取消の措置もあり得ます。

まとめ

以上、調理・製菓を学んだ外国人留学生が日本で引き続き技能・知識習得するために実習を行うことができる制度について解説しました。本制度の目的は、外国人調理師が5年間日本で学び、将来的に母国でその技能・知識を活用することです。5年間で仕込みから料理の完成までを習得できる実習計画に基づき、実習・就業を行うことになります。

【行政書士からのアドバイス】
本制度を活用することで、学校の卒業後も引き続き日本で料理・製菓について就業しながら学ぶことができます。あくまで、労働者ではなく実習生にはなりますが、専門学校としては外国人留学生を受け入れやすくなるだけでなく、就業先の戦力として紹介ができる制度となります。
当制度の活用を検討されている場合には、当事務所にお問合せ下さい。

ビザや特定技能、外国人雇用に関するお問い合わせ
  • まずは、じっくりお話をお伺いさせていただきます。初回は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
  • ご相談はご来所もしくはZoom等を利用したビデオ会議システムで行います。
お電話でのお問い合わせ

「ビザ申請のホームページを見た」とお伝えください。

受付時間:平日10:00-18:00(土日祝休み)
メールでのお問い合わせ

    ご希望の連絡先(必須)
    メールに返信電話に連絡どちらでも可





    ※上記以外をご希望の場合は、ご相談下さい。

    ページトップへ戻る