「就労資格証明書」の取得のススメ ~どういった場合に取得すべきなのか~

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業務内容が問題ないかを確認・提示するためのツールである「就労資格証明書」は、取得すべき場合と無くても問題が無い場合があります。特に『技術・人文知識・国際業務』の場合、転職をしても在留資格の変更申請なども必要ありません。しかし、転職で在留資格の手続きが不要だからといって「どんな仕事」でもさせられるわけではありません。今回は、「就労資格証明書」について解説をします。

「就労資格証明書」とは

「就労資格証明書」は、外国人が就労(業務内容)が違法でないかを証明する書類になります。就労系の在留資格を持っている場合でも、どんな業務内容でも就労が可能という訳ではないため、業務内容などに問題が無いかを確認したい場合などに申請をします。転職時などの、就労資格証明書の取得は義務ではありません。

【大前提】就労ビザを持っていれば何の仕事でもしていいわけではない

就労ビザに関わらず、在留資格はそれぞれに活動ができる範囲が決まっています。また、就労系の在留資格は19種類あり、在留中はその活動を行わなければならないルールがあります。

「就労資格証明書」を取得する意義

就労資格証明書では、以下のことが審査されます。

  • 出入国管理及び難民認定法別表第一に定める在留資格のうち就労することができる在留資格を有していること
  • 就労することができない在留資格を有している者で資格外活動許可を受けていること
  • 就労することに制限のない在留資格を有していること。

上記から分かるように就労するにあたって「活動内容」に問題が無いかを審査されることになります。

審査されるポイントはあくまで「活動内容」になるため、同じ業種だから問題ないというのは違います。
以下は一例になります(※悪い例です)。以下の【事例】についてどのように思われますか?

【転職前】
都内に10店舗展開するチェーンの飲食店の【本部スタッフ】として、『技術・人文知識・国際業務』で在留・活動していた。申請人は、金融論を学んでいたため飲食店の出店計画に携わる仕事内容で許可を得ていた。しかし、実際には【研修の一環として】飲食店の店舗で調理スタッフを数年間行っていた。
【転職後】
都内に5店舗展開するチェーンの飲食店の【店長候補】として、『技術・人文知識・国際業務』の在留・活動。店長候補なので、転職前と同様に店舗で勤務。

そもそも、【転職前】の勤務は虚偽申請です。転職前に店舗で調理スタッフだったので、【転職後】も同様に店舗で働けるかどうかはまた別の問題です。
外国人の雇用管理において、「以前はよかった」「隣の外国人は問題ない」は関係ありません。「今」が正しいかを判断する必要があります。

「就労資格証明書」を取得できる人

「就労資格証明書交付申請」をできる人は、日本に在留する外国人の内、下記に該当する人になります。
許可を受けて働いている人や、身分系の在留資格を持つ人も取得することができます。

  • 就労可能な在留資格をもって在留する者
  • 身分系の在留資格をもって在留する者
  • 特別永住者
  • 就労が認められない在留資格をもって在留する人で、資格外活動許可を受けている者

「就労資格証明書」の取得をお勧めする場合

「就労資格証明書」の取得は法律で定められた絶対のものではありません。しかし、安心した在留や雇用をしたい場合は取得をお勧めします。

転職前後で仕事内容が大きく変わる場合の確認として

「在留資格認定証明書交付申請」「在留資格変更許可申請」「在留期間更新許可申請」の申請時には、必ず業務内容について審査をされます。そして、業務内容を含めて問題が無い事が判断された場合に【許可】を得られます。
特に、『技術・人文知識・国際業務』の場合は、転職時にいちいち「在留資格変更許可申請」を行う必要はありません。そのため、場合によっては「現在の仕事内容が在留資格の範囲内であるかどうか」が分からないまま働くことになります。

例えば、ITエンジニアが転職後もITエンジニアをする場合は、業務内容的には特に問題はありません。一方で、ITエンジニアが飲食店の店長に異動する場合は業務内容が大きく変わることが想定されます。しかも、飲食店の店長は場合によっては業務内容が認められないこともあります。
「業務内容が認められないということ」は、「不法就労」に該当し刑事罰及び退去強制手続きの対象となり得ます。

このように、転職活動後の仕事内容が問題ないかを証明受けるのが「就労資格証明書」となります。

在留期間更新許可申請時の手続きを不安なくスムーズに終えたい方

「在留期間更新許可申請」の審査のポイントは以下になります。

在留期間更新許可申請の審査ポイント
  1. 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
  2. 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
  3. 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
  4. 素行が不良でないこと
  5. 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  6. 雇用・労働条件が適正であること
  7. 納税義務を履行していること
  8. 入管法に定める届出等の義務を履行していること

上記項目の内、1の在留資格該当性については、許可する際に必要な要件となります。
また、2の上陸許可基準については、原則として適合していることが求められます。
3以下の事項については、適当と認める相当の理由があるか否かの判断に当たっての代表的な考慮要素であり、これらの事項にすべて該当する場合であっても、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更又は更新を許可しないこともあります。
▶出典:出入国在留管理庁『在留資格の変更、更新期間の更新許可のガイドライン

「在留期間更新許可申請」では、「活動内容」が在留資格で認められる範囲内であるかどうかを中心に、今までの在留状況や納税状況などから審査されます。転職後初めての在留期間更新許可申請の場合は、必ず転職先での業務内容を丁寧に説明する必要があります。
一方で、予め就労資格証明書の交付を受けて、業務内容に問題ないことが分かっている場合では「1. 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること 」については既にクリアしているため、その他の在留状況を中心に審査されることになります。

転職後の初めての手続きの場合、不許可になるポイントとして最も多い内容が活動内容になるため、予め不安要素を無くしておくメリットがあります。

企業のコンプライアンスとして

外国人雇用は、細かく分類された在留資格の範囲内の業務を適切に行わせなければならず、正しい知識が無ければ難しいものになります。また、近年は労働関係法や社会保険や租税法の遵守も当然に求められるようになってきており、外国人雇用のハードルは年々上がってきています。

そんな中、業務内容に関わらず全ての外国籍従業員の就労資格証明書の取得を行うことは、社内の就業環境を維持する役割を持つだけでなく、社外へのアピールにもつながります。
余裕がある企業については取得されることを是非、ご検討ください。

また、この就労資格証明書は、転職をした人だけが取得をするものではありません。予め業務内容を申告し、許可を取っていた内容で合ったとしても、派遣社員で派遣先に業務内容を申告するツールとしてや、現場に出入りする施工管理者が現場に提示するためのツールとしての活用方法も十分に想定されます。

「就労資格証明書」を取得しない場合のリスク

「資格就労証明書」を取得しない場合、業務内容が適切であるかどうかが分からないまま過ごす場合があります。実際に、業務内容が不適切な場合「摘発リスク」と「更新が許可されないリスク」が考えられます。

「在留期間更新許可申請」で不許可になったら帰国や転職を検討しなければならない

前述の通り、「就労資格証明書」は取得の義務はありません。
では、転職した場合で「就労資格証明書」を受けない場合に、業務内容の審査は受けることはないのかというと、審査を受けるタイミングはあります。「在留期間更新許可申請」の際には業務内容も含めて審査をされます。申請書には「就業先」と「業務内容」を記載するため、前回の申請から内容が変わっている場合で、審査官がより深く事情を知りたいと思った場合には、申請中に「資料提出通知書」にて「業務内容を説明するよう」に求められることもあります。

「在留期間更新許可申請」で不許可となった場合、その業務内容を続けることはできません。企業内で配置換えをするか転職をするかを行ったうえで、再申請を行うことはできます。これらの対応をとらない場合には、帰国をすることになります。

「不法就労」・「不法就労助長罪」に該当しないと言い切れますか?

初めにも説明したように、就労ビザはどんな業務でも就業可能なフリーパスではありません。
在留期限が数年単位で残っている場合、在留期間更新許可申請時前に転職すれば、入管にばれることは無いと思っている方も多いのも事実です。それに「就労資格証明書交付申請」は諸刃の側面もあるため、次回在留期限前に転職をする可能性があるのにリスクを負う必要もない、という方もいらっしゃいます。

在留期間更新許可申請時には、今までの在留状況は当然審査されます。更新時はきちんとした仕事に就いていたとしても、今までの仕事内容全て審査されます。全ての在籍していた企業の「退職証明書」と「業務内容の説明」の提出を求められます。

業務内容に自信がない場合、迷うのであれば「不法就労」「不法就労助長罪」を防ぐ意味でも、「就労資格証明書交付申請」を検討されるのがよいと思います。

就労資格証明書交付申請の方法

就労資格証明書の手続きは、在留資格申請の手続きに似ています。申請書と必要書類を集めて申請を行うことになります。審査期間も転職をしたケースでは1~3ヶ月とそれなりにかかります。

申請の準備

「就労資格証明書」は入管にて「就労資格証明書交付申請」を行うことで交付を受けることができます。

申請先

申請先は、「(外国人の)住居地を管轄する地方出入国在留管理官署」になります。

必要書類

※1~4がに出入国在留管理庁HPに書かれている内容。5、6は準備があるとよい内容

  1. 申請書
  2. 資格外活動許可書の提示(同許可書の交付を受けている場合)
  3. 在留カード
  4. パスポート
  5. 労働条件通知書(業務内容が分かる書類)
  6. 採用理由書(業務内容を説明する書類)
    ※業務内容を客観的に証明する書類などがある場合は添付

標準審査期間

転職をした場合は、1~3ヶ月
→審査期間は短くは無いため、転職をした場合はすぐに申請することをお勧めします。

出入国在留管理庁▶『就労資格証明書交付申請

手数料

交付を受けるタイミングで1200円

【重要】交付されたら内容を確認しましょう

就労資格証明書には許可・不許可の考えがありますが、これは「在留資格認定証明書交付申請」の許可・不許可とは考え方が異なります。
「在留資格認定証明書交付申請」は業務内容が不適切の場合は「不交付(不許可)」でしたが、「就労資格証明書交付申請」の場合は、手続き自体に不備がある場合は「不交付」ですがそれ以外は「交付」されます。つまり、業務内容が適切でない場合でも「交付」がされてしまいます。このため、交付をされたからと言って安心できるわけではありません。

就労資格証明書の見方を確認してみましょう。(参考:審査要領)

問題が無い場合

見極めるポイントは「なお書き」以下にあります。
「活動内容」欄に、具体的な活動内容の記載がある場合は問題ありません。

なお、A製薬会社の研究所において研究主任としての新薬の開発に係る活動は、前記の活動に該当する

審査要領 『第10編 在留審査』

「前記」については、在留資格毎に定められた活動内容が記載されており、その後ろにこの様な記載がある場合は問題がありません。

業務内容に問題がある(在留期間更新許可申請時に不許可の可能性が残る)場合

業務内容に問題がある場合は、「なお書き」以下は以下のような記載になります。否定的な文言で締めくくられます。
この様なケースに該当した場合は、速やかに業務内容を見直すか転職を検討する必要があります。もしくは、業務内容は本来問題ないものであるはずなのに、ただアピールが弱かっただけの可能性もあります。いずれにしても改善を行うアクションを行います。

ケース①
なお、A製薬会社の研究所において研究主任として新薬の開発に係る活動は、前記の活動に該当する。
ただし、「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」の研究の在留資格に係る基準には適合しない。

審査要領  『第10編 在留審査』

ケース②
なお、A製薬会社の研究所において○○(清掃作業、梱包作業等、在留資格該当性のない活動を記載)に従事する活動は、前記の活動に該当しない。

審査要領  『第10編 在留審査』

ケース③
なお、研究主任としての新薬の開発に係る活動は、前記の活動に該当する。ただし、A製薬会社において行う当街頭活動は○○(業務量や雇用管理上の問題等の当局の評価を記載)とは認められず、安定的・継続的に当該活動を行うものとは認めない。

審査要領  『第10編 在留審査』

まとめ

以上、「就労資格証明書」について解説しました。
「就労資格証明書」は時に諸刃ではありますが、業務内容に自信が持てないときこそ積極的に取得するものになります。入管のお墨付きをもらえれば強い味方になることに違いはありません。
また、転職をした場合の次の在留期間更新許可申請では、業務内容についての説明をいずれにしても行うことになります。遅かれ早かれ行うことにはなるので、不安な場合は早めに対応をしてしまいましょう。

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