特定技能における【支援計画】って何?誰が何をするもの?

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特定技能人材で受け入れる人材は日本での滞在は5年間と限定的であり、海外から多くの人材を受け入れることを予定されていることから、日本での生活を全面的にサポートをする必要があります。そのサポートをするためのツールが『支援計画』になります。これは受け入れを行う企業が自ら計画し実行することが求められるものになります。本編では『支援計画』の具体的な内容について説明します。

在留資格『特定技能』とは

特定技能は、特に人手不足の著しい産業において、一定水準以上の技能や知識を持ち、最低限生活や業務に必要な日本語能力を持った外国人を対象に、決められた業務内容を行うことができる在留資格です。
大きな特徴としては、今までの在留資格(ビザ)では認められなかったマニュアルや訓練をもとに習得をする「技能」に関する業務内容に従事ができる在留資格です。

特定技能とは
  • 特定技能1号:特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けと在留資格
  • 特定技能2号:特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

従事可能な産業分野は以下の14分野です。

  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 素形材産業
  4. 産業機械製造業
  5. 電気・電子情報関連産業
  6. 建設
  7. 造船・舶用工業
  8. 自動車整備
  9. 航空
  10. 宿泊
  11. 農業
  12. 漁業
  13. 飲食料品製造業
  14. 外食業
    ※特定技能2号は下線部の2分野のみ受入可

上記の産業は、特に人手不足の著しい産業であり、労働人口が減少している現代では外国人の活躍が期待されている分野になります。今までは『技術・人文知識・国際業務』のようないわゆる高度人材のビザでは上記の産業において、単純労働や技能の業務は行うことができませんでした。また、技能実習はあくまで母国にノウハウを持ち帰るための研修生であるものの、実際には「安くて転職のできない労働力」として扱われることが多く社会問題になっていました。

『特定技能』は、よく比較をされる在留資格『技能実習』での実績や反省をもとに、様々な工夫がされた制度になっています。そのため、他の在留資格よりも求められる要件は細かくまた厳格に設定されており、すべてを満たす必要があります。他の在留資格と異なり外国人の公私をサポートをする「支援計画」の策定をしなければなりません。「支援計画」では、具体的には入国から就業までの私生活のサポートや、また日本語学習の機会や日本文化になじむための補助、定期的な面談や相談・苦情の対応などを行います。このため、自社でできないと判断した場合は「支援計画」を行うための別機関である「登録支援機関」(全国にある民間企業)に実行を委託することもできます。

「特定技能」が複雑と言われる理由で「支援計画」以外の部分としては、入管に関する法令(出入国管理及び難民認定法)以外にも、労働関係法令、租税関係の法令など遵守できているか確認すべき法令の範囲が広く、そのため申請時の提出書類が多いことも挙げられます。

従事可能な業務と就業場所の関係

特定技能は、以下の大枠4点の基準から審査がされることになります。下記の細かい要件を全て満たすことで許可を得られます。

特定技能人材を雇用するために満たすべき基準
  • 特定技能外国人が満たすべき基準
  • 受入機関自体が満たすべき基準
  • 特定技能雇用契約が満たすべき基準
  • 支援計画が満たすべき基準

【特定技能の要件を満たしていることのイメージ】

上記からも分かるように、特定技能人材が従事可能な業務内容や就業場所はリンクしている必要があります。これ以外にも全ての要件を満たした場合に、在留資格の許可を得られることになります。

「支援計画」って何?

『特定技能』人材を雇用する際には、特定技能人材の日本での生活をサポートするために法令で定められた支援を行わなければなりません。これを「1号特定技能外国人支援計画」といい、特定技能人材が活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上、社会生活上においてサポートをするものです。この「支援計画」の実行は、「支援責任者」「支援担当者」によって行います。

出入国在留管理庁『新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組』より抜粋

支援計画で策定することは以下の10項目です。これらの内容を決め「支援計画書」を作成します。

  1. 事前ガイダンス
  2. 出入国する際の送迎
  3. 住居確保・生活に必要な契約支援
  4. 生活オリエンテーション
  5. 公的手続等への同行
  6. 日本語学習の機会の提供
  7. 相談・苦情への対応
  8. 日本人との交流促進
  9. 転職支援
  10. 定期的な面談・行政機関への通報

事前ガイダンス

事前ガイダンスは、特定技能外国人の雇用前(正確には在留資格の申請前)に行わなければなりません。また、情報提供しなければならない内容は以下の通り、決まっています。

事前ガイダンスの内容
  1. 1号特定技能外国人に従事させる業務の内容、報酬の額その他の労働条件に関する事項
  2. 従事ができる業務内容やその範囲について
  3. 入国に関する手続きについて
  4. 特定技能人材や配偶者、親族がどのような理由があっても違約金を徴収するような契約を誰とも結んではならないことについて
  5. 特定技能としての活動準備のために外国の期間に費用を支払っている場合、内訳等を理解し合意していることについて
  6. 特定技能人材の支援に関する費用を直接、間接的に本人に負担させないこと
  7. 入国時の送迎について
  8. 住居に関するサポートについて
  9. 日常生活または社会生活に関する相談又は苦情を受ける体制について
  10. 支援担当者の連絡先について

事前ガイダンスについては、支援責任者又は支援担当者が行う必要があります。実施方法は対面又はテレビ電話などで行います。また、本人が十分に理解ができる言語で行う必要があり、質疑応答などができる体制が望まれるため、文章の配布やビデオの配布のみでの実施は認められません。実施時間は3時間程度行うことが必要です。もっと言うと、ビザ申請までに時間が無く、取り急ぎ受入機関の職員が間に合わせ程度に行うということも認められません。

②出入国する際の送迎

特定技能外国人が入国した空港・港から受入事業所までの送ることが求められます。また、出国時(契約終了後)も空港・港まで送り、保安検査場まで同行し見送ることが求められます。
ただし、一時帰国時の出入国の対応までは行う必要はありません。

③住居確保・生活に必要な契約支援

住居は適切な広さ(一人当たり7.5㎡以上)である必要があります。ルームシェアする場合でも寝室は一人当たり4.5㎡以上あれば問題ありません。技能実習生からの移行の場合で社宅などに引続き居住するなどの場合はそれでもかまわないこととされています。

支援責任者及び支援担当者は、家探しをサポートする必要があります。サポートの方法は以下の3通りです。

  1. 特定技能外国人が賃借人として契約する場合で、その家探しの際に情報提供や家探しに同行するなどのサポートする。
  2. 受入機関が賃借人となる場合に、特定技能人材の合意のもと住居を提供する。
  3. 社宅を特定技能人材の合意のもと住居を提供する。

いずれの場合も実費分であれば特定技能人材の負担で問題ありません(例えば、敷金・礼金・管理費や賃料)。一方、2,3の場合では、実費以上を外国人に請求することで利益を上げることはできません。

④生活オリエンテーション

特定技能人材が日本で生活が公私ともにいち早く馴染めるように、入国後に実施するオリエンテーションになります。
ここでは、以下のような日本独自の文化やルールなどを中心に説明します。

生活オリエンテーションで説明する内容
・入国や在留資格についての説明
・市区町村役所(転入届など)でできることの説明
・労働関係法などの説明
・出産や子育てについての説明
・教育についての説明
・医療についての説明
・年金・福祉についての説明
・税金についての説明
・公共の移動手段についての説明
・緊急・災害時についての説明
・住居についての説明
・日常生活においてのルールについての説明

生活オリエンテーリングでは、日本での生活に欠かせないルールや、病院のかかり方、困ったときの行政機関の連絡先など、生活全般について説明をします。

上記の内容について説明するのに役に立つのが出入国在留管理長庁『外国人生活支援ポータルサイト』に掲載されている『生活・就労ガイドブック』です。言語は日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム後、ネパール語、タイ語、ミャンマー語、インドネシア語、クメール語、フィリピン語、モンゴル語です。

『生活・就労ガイドブック』を使用しながらの説明はもちろんのこと、テレビ電話やDVD等の動画視聴によるものでも実施は可能ですが、配布するだけ、DVDを見せるだけでは不十分であり、質疑応答を受けられる体制のもと実施しなければなりません。

⑤公的手続等への同行

入国管理局への手続き(所属機関等に関する届け出や住所変更など)、社会保険や税金に関する手続き、マイナンバーやそのほかの行政手続きについて、サポートをする必要があります。

⑥日本語学習の機会の提供

入社後の日本語教育体制を構築し、特定技能人材へ提供する必要があります。具体的には、日本語教育機関に関しての情報を提供すること、サービスの利用契約手続きを行うこと、また、日本語教師と契約し日本語講座を企画するなどの方法が挙げられます。
実際の教育に関する費用を受け入れ期間が負担する必要はありませんが、本人の希望に沿った内容で過度な学習費用が発生しないように気をつけなければなりません。

⑦相談・苦情への対応

特定技能人材の生活での相談について公私問わず受けられる体制を築く必要があります。場合によっては必要な手続きまでサポートが必要です。
相談を受け入れる体制は、平日週3日、休日1日以上の対応が求められます。また、緊急発生時についても連絡先を設け、基本的にいつでも連絡が取れる体制の構築が必要です。
相談を受けたら記録を残す必要があります。

⑧日本人との交流促進

地域住民との交流を促す支援を行います。具体的には、ボランティアやお祭りやイベントなどの情報を案内し行事参加の手続きや必要によって同行などのサポートを行います。

⑨転職支援

これは特定技能人材の自己都合による退職した際の転職活動を支援するものではなく、会社都合(人員整理や倒産、欠格事由の該当)による場合に雇用契約を解除する場合に、転職を支援することです。
具体的には、業界団体などを通じて情報提供することや、職業安定期間に同行して受け入れ先を探す補助を行うこと、推薦状の発行や転職活動の際に有給休暇を与えることが挙げられ、次の就職先が決まるまでサポートを行うことが望ましいとされています。
また、離職時に必要な行政手続き(国民年金・国民健康保険に関する手続き、失業の届け出など)についての情報提供を行います。

⑩定期的な面談・行政機関への通報

3ヶ月に一度、定期的に特定技能人材とその監督者に対して面談を行う必要があります。面談者は支援責任者か支援担当者が行います。面談は対面で行います。
会社での悩みや私生活で困っていることがないかなどの確認を行うとともに、受入れ機関による入管法や労働関係法などの法令違反を知った場合には通報することの対応なども求められます。
定期面談を行ったら報告書を作成し、入管に定期報告をする際に実施状況とともに報告をすることになります。

『支援計画』は誰でも行えるものではない

前章の内容を読んで、「こんな支援、自社でできるかな?」と不安に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、特定技能外国人の公私をサポートすることになる『支援計画』は当然に誰でもが行えるものではありません。『支援計画』を行うことができる事業所には一定の要件があります。

「支援計画」を自社で実施するための条件
①中長期在留者の受入実績がある
②十分に理解できる言語による支援体制が可能
③支援の実施状況に係る文書の作成が可能
④支援の中立性等に関するもの
⑤支援実施義務の不履行に関するもの
⑥定期面談の実施に関するもの
⑦分野に特有の事情にかんがみて定められた基準に関するもの

特に自社支援ができない要因となり得るのが「①中長期在留者の受入実績がある」「②十分に理解できる言語による支援体制が可能」「④支援の中立性等に関するもの」ではないでしょうか。『支援計画』は申請時に申告した「支援責任者」「支援担当者」が実施をすることになりますが、誰でもなれるということではなく一定の条件があります。

①については、外国人の生活や就業サポートに慣れていることが前提になります。
また、②十分に理解できる言語というのは、基本的には外国人へのサポートを母国語で行うことが求められています。ただし、自社で通訳者を雇用することまでは求められておりませんが、通訳者を探す必要はあります。
④にいては、特定技能人材の直属の上長など特定技能人材を管理する立場にある人は支援担当者や支援責任者になることはできません。そのため、小さい組織の場合で全員が同じ空間で働く場合など、一定規模以上の組織でない場合は、要件を満たさない場合があります。

もし、自社で実施ができない場合は『登録支援機関』に委託をすることになります。ただし、支援計画の策定自体は自社で行わなければなりません。

是非知ってもらいたい『支援計画』の重要さについて

ここまで読まれて「支援計画」についてはどのように思われましたでしょうか?
おそらく多くの方が「面倒くさい」「コストが発生するなんて」「結局、日本人を雇用するほうが安いんじゃないの?」このように思われたのではないでしょうか。

この気持ちについてはごもっともです。ただでさえ、人手不足で採用コストも上がっている中で、追い打ちをかけるように支援計画実行のためのコストがかかるなんて、と思われたかもしれません。
外国人人材の離職理由の一つに「コミュニケーションが上手く取れなかった」ということが挙げられます。これは仕事の指示だけではなく、組織に内の人間関係やプライベートの困りごとを打ち明ける相手がいなく孤独感からの離職を含みます。
異国の地で働くということは非常に大変です。「食事をする」や「ごみを捨てる」といった日本人にとってはなんて事の無い事を一つ一つ覚えなければなりません。

『支援計画』は、こういった社会ルールや日本で生活をするための基盤を整えることができます。また、複雑な労働法についてや生活についての相談を四半期に1回実施する面談を母国語で行う体制を整えること、離職や失踪のリスクを減らすことができます。支援計画は外国人雇用を継続するための重要なポイントが仕組み化されている素晴らしい制度です。せっかく実施をするのであれば、形式的なものではなく十二分に活用をすることで特定技能人材の安定した雇用を実現されてください。

まとめ

以上、特定技能人材をサポートするための「支援計画」について説明致しました。
支援計画は、特定技能人材の公私の生活をサポートする大事な役割を持つものです。初めは面倒に思われるかもしれませんが、しっかり仕組み化をすることで人材の定着にもつながるため仕組み化をされることをお勧めします。

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