外国人留学生の就労ビザへの変更申請で不許可になってしまう理由で多いものは何?

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外国人留学生を採用した後も、入社が確定するのは就労可能な在留資格(ビザ)の許可がおりてからになります。不許可になってしまうと入社が遅れたり、できなかったりします。なるべく申請前に不許可になりそうなポイントを確認し、不安を無くした上で申請をしたいというのは当然だと思います。
本編では、外国人留学生の就労ビザの申請において不許可になる場合の原因について解説します。

留学ビザから就労ビザへの変更で不許可の理由として多いもの

外国人留学生と面接し、内定出しをし雇用契約を交わした後にやるべきことは“就労ビザ”の変更手続きになります。不許可になりやすいポイントを挙げます。

不許可になりやすいポイント
1、そもそも要件を満たしていない
2、要件を満たしているのに、それが伝わっていない
3、留学生時代の在留状況がよくない
4、届け出義務違反をしている

就労ビザの変更申請において、まずは「適切な在留資格・“就労ビザ”を選ぶこと」・「留学生時代の在留状況に問題が無かったことを」確認することが大切になります。そのうえで、在留資格(ビザ)の申請において、許可を得るためのポイントは以下の2点を抑えた申請をすることが大切です。

  • きちんと要件を満たしているか確認すること
  • きちんと要件を満たしていることをアピールすること

当たり前のようなことですが、意外に難しいためポイントを「在留資格の面」と「変更手続き時の審査内容の面」の2つの側面から確認してみましょう。

“就労ビザ”とは

日本には在留資格が29種類ありますが、そのうち19種類が就労が可能な在留資格になります。それぞれの“就労ビザ”毎に認められている活動内容があります。

そもそも在留資格とは

「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2022年5月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。

在留資格の一覧は下記になりますが、言い換えると以下に当てはまるものがない場合は、日本での滞在はできないということになります。

“就労ビザ”のうち留学生が変更し得る代表的な在留資格について

日本に留学している学生が日本で就職する場合に想定される就労ビザは、「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」「特定活動(46号・本邦の大学卒業者)」「高度専門職1号」になります。主な4つの在留資格について解説します。

在留資格『特定技能』について

『特定技能』は2019年5月に新設された比較的新しい在留資格です。この在留資格は、日本で特に人手不足の著しい産業において一定水準以上の技能や知識を持つ外国人労働者を受け入れて、人手不足を解消するために作られたものです。
『特定技能』の大きな特徴として、雇用できる業種(12の限定された業種)、従事できる活動内容が細かく決められており、この業務に従事する外国人はその分野の試験を合格していることが求められます。

『特定技能』で受入可能な12分野

特定産業分野(12分野):介護、ビルクリーニング、素形材産業、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食
※特定技能2号は下線部の2分野のみ受入可

在留資格『技術・人文知識・国際業務』ついて

在留資格『技術・人文知識・国際業務』で認められる活動範囲は下記のように定められております。

本邦の講師の機関との契約に基づいて行う理学、工学、その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務部又は外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動

もっとざっくりに説明をすると、『技術・人文知識・国際業務』はこのような在留資格になります。

会社等において 学校等で学んだこと/実務経験を活かした 知識や国際的な背景(言語や外国の感性等)を要する(「単純作業」、「訓練で習得する業務」、「マニュアルがあれば遂行可能務」等を除く)仕事をすることを目的とした在留資格(ビザ)

『技術・人文知識・国際業務』という少し長い在留資格名ですが、もともとは『技術』と『人文知識・国際業務』と分かれていました。日本の企業では部門をまたぐ配置転換も多々想定されることもあり、今では『技術・人文知識・国際業務』とひとつの在留資格になっています。(例えば、研究者→マーケティング部への異動や、エンジニア→セールスエンジニア(法人営業)などの異動です。)

従事できない典型的な業務内容は、単純労働や繰り返し行うことで習得できる業務、マニュアルがあれば習得できる業務が該当し、「技能」に該当するような「特定技能」や「技能実習」で挙げられている作業の業務を行うことはできません。

在留資格『特定活動(46号・本邦の大学卒業者)』について

『特定記活動 (46号・本邦大学卒業者) 』は、ガイドラインの中で下記のように定められています。

本制度は、本邦大学卒業者が本邦の公私の機関において、本邦の大学等において修得した広い知識、応用的能力等のほか、留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを要件として、幅広い業務に従事する活動を認めるものです。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格においては、一般的なサービス業務や製造業務等が主たる活動となるものは認められませんが、本制度においては、上記諸要件が満たされれば、これらの活動も可能です。ただし、法律上資格を有する方が行うこととされている業務(業務独占資格が必要なもの)及び風俗関係業務に従事することは認められません。

留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン (http://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri07_00038.html

特定活動 (46号・本邦大学卒業者) で求められる業務のポイントは以下の2つです。

  • 「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」に従事すること
  • 本邦の大学又は大学院において習得した広い知識及び応用的能力等を活用するものと認められること
    ⇒商品企画、技術開発、営業、管理、業務、企画業務(広報)、教育等

『特定活動(46号・本邦の大学卒業者)』は『技術・人文知識・国際業務』で従事することができない単純労働をすることも可能ですが、それのみに従事することはできません。あくまで、『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の対象となる学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれていること、又は今後当該業務に従事することが見込まれれている必要があります。

在留資格『高度専門職1号』について

『高度専門職』は、2012年5月より始まった在留資格で高度外国人材の受入れを促進するために、ポイント制を活用した優遇措置です。日本で積極的に受け入れるべき「高度外国人材」とは、「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することができない良質な人材」と位置付けられています。こういった優秀な人材に日本で働いてもらうために、優遇措置が設けられています。

高度専門職1号について
  • 高度専門職1号(イ):本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究、研究の指導又は教育をする活動
    →主に「教授」「研究」又は「教育」の在留資格に相当する活動と重複する
  • 高度専門職1号(ロ):本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技実を要する業務に従事する活動
    →主に「技術・人文知識・国際業務(※国際業務は除く)」「企業内転勤」「教授」「芸術」「報道」「経営・管理」「法律・会計」「医療」「研究」「教育」「介護」「興行」の在留資格に対応する活動を行う場合も重複し得る。
  • 高度専門職1号(ハ):本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動
    →主に「経営・管理」に相当する活動

『高度専門職1号』は在留期間が5年が付与されることに加え、活動内容や家族の在留、家事使用人の雇用、永住申請に必要な居住年数などで優遇されます。

留学生が変更し得る代表的な“就労ビザ”の比較とまとめ

前項までの通り、留学生から変更し得る在留資格は主に『特定技能』『技術・人文知識・国際業務』『特定活動(46号・本邦の大学卒業者)』『高度専門職1号』があります。それぞれ、業務内容や学歴・職歴によって取得すべき在留資格は異なってきます。
まずはそれぞれの在留資格の要件と特徴をよく確認しましょう。在留資格の申請をして不許可とならないために最も大事なことは、適切な在留資格に申請することになります。

以下は、それぞれの就労ビザの業務内容のイメージと要件、その他の特徴になります。

【従事可能な業務内容との比較】

【就労ビザの特徴・要件・その他の条件の比較】

“就労ビザ”への変更手続き~在留資格変更許可申請とは~

そもそもの“就労ビザ”に変更しなければならない理由とその際に審査されるポイントについて確認してみましょう。

在留資格変更許可申請とは

前章でも説明した通り、日本の在留資格制度は身分や活動内容にリンクします。在留資格『留学』では、学校等で勉学をするために認められる在留資格になります。このため、就職し就労を行うためには、活動内容い合った在留資格・“就労ビザ”に変更をする必要があります。この手続きを、『在留資格変更許可申請』と言います。

「在留資格変更許可申請」の審査のポイント

入管は「在留資格変更許可申請」についてガイドラインを発表しています。入国在留管理庁が発表している『在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン』では、審査において下記のポイントを総合的に勘案して行うこととされています。

1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用・労働条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること

在留資格の変更,在留期間の更新許可のガイドライン

在留資格変更許可申請は、上記8つのポイントを総合的に勘案・審査されることになります。特に留学生に多い不許可の理由としては、「①行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること」「④素行が不良でないこと」が挙げられます。

▶出入国在留管理庁『在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン

留学生が“就労ビザ”へ変更する際に不許可の理由として多いもの

前章のポイントを踏まえて、留学生が就労ビザに変更する際に指摘のされやすいポイントについて解説します。

①そもそも要件を満たしていない

そもそも要件を満たしていない場合

「就業場所」が要件を満たしていないケース

これは特に『特定技能』にはなりますが、『特定技能』では就業可能な産業・業種や欠格要件等の細かいルールが多くあります。一つでもルールを満たしていない場合は、許可は得られないため全ての要件をしっかりと確認する必要があります。

また、『技術・人文知識・国際業務』『特定活動(46号・本邦の大学卒業者)』『高度専門職1号』についても、「本邦の公私の機関」と契約(=日本にある企業と雇用契約・業務委託契約等を締結)していなければなりません。

「人材」が要件を満たしていないケース

それぞれの“就労ビザ”は、外国人の職歴・学歴・資格等が必ずと言っていいほど要件になってきます。

留学生の場合は、学校を卒業して「学歴」を証明するか、特定技能のように特定技能評価試験や日本語能力検定への合格などの資格が必要です。それぞれに必要な要件は異なるため、留学生が要件を満たしているかの確認が必要です。

ちなみに学歴が要件となる在留資格で、新卒採用の場合、申請時点で学校を卒業をしていない場合でも「卒業見込み」で申請できる場合もあります(卒業年度の12月1日より申請が可能です)。

「業務内容」が要件を満たしていないケース

在留資格・“就労ビザ”は「活動内容・業務内容」に紐づきます。
それぞれの在留資格で定められた業務内容の範囲外の活動は行うことができません。
特に、在留資格と業務内容の合致が難しいものとして『技術・人文知識・国際業務』と『特定技能』があります。『特定技能』は事前に特定技能評価試験を受験するため業務内容との確認は事前に取れるため不許可になることはあまりありませんが、事前に気が付いて申請をあきらめる、という場合は多くなっています。

「雇用契約内容」が要件を満たしていないケース

基本的に外国籍であることを理由に差別をすることなく、就業規則や賃金規定通りに雇用条件書を締結できれば問題になることはありません。
特に問題になる部分として、給与は「日本人と同等以上」という決まりがあります。留学生の新卒の場合には、日本人の新卒と同等以上の給与になります。

②要件を満たしているのに、それが伝わっていない

要件を満たしているのにもかかわらず、それが審査官に伝わらず不許可になることも非常に多いです。
この部分で特に不許可になりがちなのは、在留資格『技術・人文知識・国際業務』で申請する場合の業務内容についてです。

在留資格『技術・人文知識・国際業務』は以下のような在留資格です。

会社等において学校等で学んだこと/実務経験を活かした知識を要する(「単純作業」、「訓練で習得する業務」、「マニュアルがあれば遂行可能業務」等を除く)仕事をすることを目的としたビザ

「知識を要する仕事」(入管の言い方をすると「学術的な素養を背景とした業務」)ということを書類のみでアピールすることは難しいです。

特に、留学生の新卒採用の場合で「総合職採用」をするケースなどでは、入社時点では研修で一時的に日本人の新卒人材同様のキャリアプラン・研修計画に則り、「現場での業務」をすることも稀ではありません。その場合にはキャリアプラン・研修計画も含めて申請をしていく必要があります。

この他にも、要件を満たしているのに伝わりにくい項目として挙げられるのが、「実務経験」の説明も丁寧にしなければ、書面上からは読み取れずに不許可になることがあります。証明書等で説明できることで「要件を満たしていると読み取れずに不許可になる」ということはあまり考えられませんが、「業務内容」や「実務経験」を示すような場合には、「理由書」にて補足をする必要があります。

▶参考:出入国在留管理庁『「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について

③留学生時代の在留状況がよくない

学生時代の在留状況が悪い場合は、「3、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと」「
4 素行が不良でないこと」を満たしていないことになるため、業務内容や学歴・資格等の要件を満たしていた場合でも不許可になることがあります。

オーバーワーク(資格外活動違反)

留学生から就労ビザへの変更で、特に多い不許可理由の一つが「オーバーワーク」です。
基本的に「留学」ビザでは働くことはできません。しかし、「資格外活動許可」を得ることで週28時間までアルバイトをすることができます。近年の留学生の審査は非常に厳しく、これを超えると不許可となる可能性が非常に高くなります。

成績不良・出席率が低い

当然ですが、出席率が低いのも大問題です。在留資格『留学』は「学校で勉強する」人に与えられる在留資格です。必要な単位も取らずにアルバイトにいそしむことは在留不良に見なされても仕方ありません。

④届出義務違反をしている

転居した場合や、万が一在留カードを紛失して再交付申請を行った場合などは速やかに行政機関に届け出をしなければなりません。
特に引っ越しの場合は、14日以内に転入届を出さなければならずこれが漏れると、届出義務違反になってしまうため注意をしましょう。もし万が一漏れてしまった場合は仕方ありませんので、在留資格変更許可申請前にお住まいを管轄している市区町村の役所に行って手続き、指示を仰ぎましょう。

なお、90日以内に転居の届出をしなかった場合は、「在留資格の取消」の事由にも該当します。注意しましょう(入管法第二十二条の四)

もし不許可になってしまったら

もし不許可になってしまったら、必ず「不許可の理由」を聞きます。そもそも要件を満たしていないようなケースの場合には再申請をしてもまた不許可になってしまいますが、「②要件を満たしているのに、それが伝わっていない」の場合には再度説明をし直して許可を得られる場合も多くあります。
※入管で不許可の理由を聞く機会は必ずあります。

不許可の聴き取りのポイント
  • よくなかった部分や説明が足りなかった部分を聞く
  • 具体的にどの部分を改善すれば再申請が可能かを聞く
  • 再申請をすることが可能かを聞く (←この部分が最も大事です)

まとめ

以上、留学生が就労ビザへ変更する際の不許可になりやすいポイントについて挙げました。
よく「特定技能」は審査が緩いや通りやすい、「高度専門職1号」は点数さえ足りれば簡単、といった話を聞きますが、実際のところは在留資格を問わずに注意するべき点は共通しています。ポイントを満たしていない場合は在留資格を問わず不許可になってしまいます。在留資格(ビザ)の変更申請前に一度総点検されてみてください。

【行政書士からのアドバイス】
留学生からの変更手続きで意外に見落としがちなポイントは、留学生時代の在留状況についてです。これが理由で不許可になってしまう方は毎年かなりいます。
もし気になる点がある場合には、当事務所にお問合せ下さい。

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