【事例解説】高度専門職ビザとは?3つの当てはまりやすい方のケースを紹介

記事更新日:

「高度専門職」ビザと聞くと、特別な研究者やごく一部の経営者だけが対象だと思っていませんか?
実はこのビザは、「学歴」「職歴」「年収」などを点数化するポイント制で客観的に審査され、基準を超えれば許可されるものです。そのため、一般的な企業で働く技術者や、場合によっては新卒の方でも条件を満たすケースは少なくありません。
本記事では、どのような方がこの「高度専門職」ビザに当てはまりやすいのか、具体的な3つのケーススタディを通じて分かりやすく解説します。さらに記事の最後では、ポイント計算などに関するよくあるご質問にQ&A形式でお答えします。
ご自身のキャリアプランや、企業の採用戦略にも大きく関わる重要な情報ですので、ぜひ最後までご覧ください。

在留資格『高度専門職』とは

在留資格『高度専門職』は2012年5月より始まった制度で、高度外国人材を受入れを促進するための在留資格です。最大の特徴は、ポイント制に基づいて審査がされる点にあります。

『高度専門職1号』について

『高度専門職』は、高度外国人材の受入れを促進するためにポイント制を活用した優遇措置になります。日本で積極的に受け入れるべき「高度外国人材」とは、「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することができない良質な人材」と位置付けられています。積極的に優秀な人材を日本に呼ぶために、様々な優遇措置が設けられています。

高度専門職には1号・2号とあり、1号はさらにイ・ロ・ハと分かれます。

『高度専門職1号』とは
高度専門職1号とは

  • 高度専門職1号(イ):本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究、研究の指導又は教育をする活動
    →主に「教授」「研究」又は「教育」の在留資格に相当する活動と重複する
  • 高度専門職1号(ロ):本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技実を要する業務に従事する活動
    →主に「技術・人文知識・国際業務(※国際業務のは除く)」「企業内転勤」「教授」「芸術」「報道」「経営・管理」「法律・会計」「医療」「研究」「教育」「介護」「興行」の在留資格に対応する活動を行う場合も重複し得る。
  • 高度専門職1号(ハ):本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動
    →主に「経営・管理」に相当する活動

上記は、『高度専門職1号』の在留資格を取得できる外国人について定められたものです。
『高度専門職1号』の在留資格を取得する場合、「教授」「芸術」「宗教」「報道」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」もしくは「技能」のいずれかの在留資格で在留することができなければなりません。この上で、ポイント制70点以上と認められた場合に『高度専門職1号』の在留資格が許可されます。
『技術・人文知識・国際業務』の活動に関しては、国際業務に関する活動内容は除かれます。

高度専門職はポイント制を満たせば、どんな活動や業務内容でも認められる者ではありません。
「ポイント評価で70点以上」+「いずれかの在留資格の要件を満たす必要がある」ということになります。

『高度専門職1号』は在留期間が5年が付与されることに加え、活動内容や家族の在留、家事使用人の雇用、永住申請に必要な居住年数などで優遇されます。

『高度専門職2号』について

一方の『高度専門職2号』は下記のような在留資格になります。

『高度専門職2号』とは
  • 1号のように(イ)(ロ)(ハ)に分かれておらず、1号の内容に加えてほぼすべての就労資格の活動を行うことができる。
  • 1号で3年以上活動していた人に与えられる

『高度専門職2号』は在留期限は無期限となり、定められた範囲内の活動をしていれば在留が可能になります(永住は無職でも構わないため、活動し続けていなければならない点が『永住者』との大きな違いになります)。

ポイント制について詳細解説

ポイントについては 「学歴」「職歴」「年収」「年齢」 などの点から計算されます。

ポイント制の全体像

『高度専門職1号』は、ポイント制の評価項目から採点され70点以上と認められた場合に許可されます。
ポイント制は「学歴」「職歴」「年収」「年齢」と「ボーナス」部分から構成されています。「ボーナス」部分には「実績」「資格」「学歴」「政策」などの要素で構成されております。

ポイント制を構成している要素について

ポイント制を構成している要素は、 「学歴」「職歴・実績」「年収」「年齢」「資格」「政策」があります(このHP内の独自分け方になります。)

学歴

学歴に関する要素は以下の5点あります。

No分野項目点数
1(イ)(ロ)博士号(専門職に係る学位を除く。)取得者30
2 (イ)(ロ) (ハ)修士号(専門職に係る博士を含む。)取得者
※(ハ)の場合は博士号も含む
20
3 (イ)(ロ) (ハ) 複数の分野において、博士号、修士号、専門職学位を複数有している者5
4 (イ)(ロ) (ハ) 日本の高等教育機関において学位を取得10
5 (イ)(ロ) (ハ) 法務大臣が告示で定める大学を卒業した者10

大学卒業以上でポイントが加算されます。日本の大学を卒業していた場合や複数の分野で学位を取得されている場合はさらにポイントが加算されます。

5の「 法務大臣が告示で定める大学を卒業した者 」については以下のリンクからご確認下さい。

  1. 世界大学ランキングに基づき加点対象となる大学(PDF)
  2. スーパーグローバル大学創成支援事業(トップ型及びグローバル化牽引型)において補助金の交付を受けている大学(文部科学省ホームページにリンクします。)
  3. 外務省が実施するイノベーティブ・アジア事業において「パートナー校」として指定を受けている大学(PDF)
  4. ノベーティブ・アジア事業(外務省ホームページにリンクします。)

職歴・実績

No分野項目点数
1 (イ) (ロ)これから行おうとする実務の実務経験年数が 10年以上(ロ) 20 /(ハ) 25
2 (イ)(ロ) (ハ)〃 7年以上 (イ・ロ) 15 /(ハ) 20
3 (イ)(ロ) (ハ) 〃 5年以上 (イ・ロ) 10 /(ハ) 15
4 (イ)(ロ) (ハ) 〃 3年以上 (イ・ロ) 5 /(ハ) 10
5 (イ)(ロ)特許の発明 1件以上 (イ)20/(ロ) 15
6 (イ)(ロ) 入国前に公的機関からグラントを受けた研究に従事した実績3件~ (イ)20/(ロ) 15
7 (イ)(ロ) 研究論文の実績については、我が国の国の機関において利用されている学術論文データベースに登録されている学術雑誌に掲載されている論文(申請人が責任著者であるものに限る。)3本以上 (イ)20/(ロ) 15
8 (イ)(ロ) 5-7の項目以外で、同等の研究実績があると申請人がアピールする場合(著名な賞の受賞歴等)、関係行政機関の長の意見を聴いた上で法務大臣が個別にポイントの付与の適否を判断 (イ)20/(ロ) 15
9(ハ)経営する事業に1億円以上の投資を行っている者5

これから行う業務内容に関する実務経験が長いほど加算されるポイントも大きくなります。5~8は研究実績に係るものになります。

年収

「(ハ)学術研究分野」「(ロ)技術分野」の場合は、年齢区分に応じポイントが付与されます。

No分野項目点数
1(ハ)3000万円以上50
2(ハ) 2500万円以上 40
3(ハ) 2000万円以上 30
4(ハ) 1500万円以上 20
5(ハ) 1000万円以上 10

『高度専門職』の場合、最低年収基準があります。「(ロ)技術分野」及び「(ハ)経営・管理」分野においては、年収300万円以上でなければ例え70点以上あっても許可されません。

年収のポイントは、(イ)(ロ)の場合は、より若くてより年収が高いほうがポイントは大きくなります。(ハ)の場合は、年収が高いと加算されるポイントが高くなります。

年齢

No分野項目点数
1(イ)(ロ)~29歳15
2(イ)(ロ) ~34歳10
3(イ)(ロ) ~39歳5

(イ)(ロ)の場合、年齢が若いだけでポイントが加算されます。
20代で15ポイント、30代で5~10ポイントが加算されます。

【ボーナス①】資格

No分野項目点数
1(ハ)代表取締役、代表執行役10
2(ハ) 取締役、執行役5
3(ロ) 職務に関連する日本の国家資格の保有(一つ5点)10
4 (イ)(ロ) (ハ) 職務に関連する外国の資格等5
5 (イ)(ロ) (ハ) 日本語能力試験N1取得者又は外国の大学において日本語を専攻して卒業した者
※BJT480点以上の得点取得者も含む
15
6 (イ)(ロ) (ハ) 日本語能力試験N2取得者
※BJT400点以上の得点取得者も含む
10

3の「職務関する日本の国家資格」についてはその通りで、あくまでもこれから行おうとする業務内容に関連する資格に限ります。関係のない国家資格はカウントされないため注意が必要です。このため、一見関係の内容に見えても実際は関係のある場合は、しっかりとその理由を説明をする必要があります。

例:行政書士資格、キャリアコンサルタント
→「行政書士事務所」に就職では、5点しか加算されない場合でも、「外国人に対して在留資格・就活のアドバイスを就職者に対して行う」という業務内容であれば10点加算される場合があります。資格の証書を添付するだけで当然に、ポイント加算にならない場合があるため注意が必要です。

4の「職務に関連する外国の資格等」については下記をご確認下さい。
外国の資格・表彰等一覧(PDF)

5、6の日本語能力については、日本語能力検定、BJT、大学で日本語学科を卒業の3つの資格で判断されます。
これ以外の日本語能力を図る試験ではどんなに日本語能力が高くても認められません。

【ボーナス②】政策

No分野項目点数
1 (イ)(ロ) (ハ) イノベーションを促進するための支援措置(法務大臣が告示で定めるもの)を受けている機関における就労
※就労する機関が中小企業である場合には別途10点の加点
10
2 (イ)(ロ) (ハ) 試験研究費率等比率が3%超の中小企業における就労5
3 (イ)(ロ) (ハ) 成長分野における先端的事業に従事する者(法務大臣が認める事業に限る)10
4 (イ)(ロ) (ハ) 法務大臣が告示で定める研修を終了した者
※本邦の高等教育機関における研修については、「本邦の高等教育機関において学位を取得」でポイント獲得をした者を除く
5
6(ロ) (ハ) 投資運用事業等に係る業務に従事10

国が政策で成長させたい分野などは加点がつきます。主に医療や宇宙、AIなどの研究開発やそれにまつわる事業が多くなっています。これらの事業には世界中から優秀な人材を登用できるようバックアップすることが目的です。また最近では国家戦略特別区域における金融分野における加点も始まっています。

1の「 イノベーションを促進するための支援措置(法務大臣が告示で定めるもの)を受けている機関における就労 」については下記のリンクをご確認下さい。
イノベーション促進支援措置一覧(PDF)(法務省告示別表第1及び別表第2をご覧ください。)

3の「 成長分野における先端的事業に従事する者(法務大臣が認める事業に限る) 」については下記をご確認下さい。
将来において成長発展が期待される分野の先端的な事業一覧(PDF)

6の「 投資運用事業等に係る業務に従事 」 については下記もご確認下さい。
国家戦略特別区域高度人材外国人受入促進事業(PDF)

▶出入国在留管理庁『ポイント評価の仕組みは?

こういう人は『高度専門職1号』の要件を満たしやすい

加算されるポイントについて解説を行いました。
高度な研究・開発内容なものもあり、もしかしたら、普通の事業をされている企業や人材の方からするとハードルが高いように感じられたかもしれません。
『高度専門職1号』では特別高度な研究や技術開発を行っていない場合でも、要件を満たす場合もあります。具体的には下記のような人材が当てはまります。

日本の大学を卒業している人

大学を卒業し学位を取るだけで加点がされますが、日本の大学を卒業している場合は加点がさらにされます。また、日本の大学を卒業している場合、日本語能力が高い方も多くN2以上を思っている場合はこれもポイントになります。

『高度専門職』は新卒で実務経験がない場合でも70点以上を満たす場合があります。。特別な実務経験は必要ありません。
下記のケースで計算をしてみましょう。

【ケース1】新卒(23歳)・立教大学卒業・N1取得・メーカーで新製品開発に従事・1年目の年収400万円

項目点数
学歴大学を卒業10点
学歴日本の大学を卒業10点
学歴法務大臣が告示で定める大学を卒業(立教大学)10点
年齢~29歳15点
年収400万円10点
資格N1取得者15点
合計点70点

実務経験年数が比較的長い人

実務経験は、これから行おうとする業務に関連がある必要がありますが、日本・外国どちらの経験かは問われません。例えば、社会人になってからずっとその職業を行っていた場合、10年の経験があった場合でもまだ30代です。この場合、実務経験・年齢共に加点があります。

【ケース2】34歳・外国の大学卒業・N2取得・ITエンジニア歴12年・年収600万円

項目点数
学歴大学を卒業10点
職歴12年20点
年齢~34歳10点
年収600万円20点
資格N2取得者10点
合計点70点

同世代よりも年収が高めの人

高い技術力をお持ちの方の場合、若くて同年代よりも年収が高い方は一定数いらっしゃいます。この場合、年収と年齢による加点の割合が高く、加算が大きくなります。下記の例の場合、日本語能力がない場合でも70点を満たします。

【ケース3】29歳・大学院卒新卒・AIの技術開発者としてに従事・年収700万円

項目点数
学歴修士号取得20点
職歴5年10点
年齢~29歳15点
年収700万円25点
合計点70点

【Q&A】高度専門職ビザに関するよくあるご質問

3つのケーススタディを通じて、どのような方が対象になりやすいか、具体的なイメージを掴んでいただけたかと思います。この章では、その背景にあるポイント制度のルールについて、特に実務上誤解の多い点や、知っておくべき注意点をQ&A形式でさらに詳しく掘り下げていきます。

Q1. ポイント計算で「職歴」や「年収」はどのように証明すればいいですか?

A1. ポイント計算は自己申告だけでなく、すべての点数を客観的な書類で証明する必要があります。例えば、「職歴」は過去に在籍した会社が発行する在職証明書、「年収」は現時点またはこれから契約する会社が発行する雇用契約書年収証明書で証明します。特に職歴の証明は、過去の勤務先に海外の企業が含まれる場合、書類の準備に時間がかかることがあるため早めに準備を始めることが重要です。入管は提出された書類に基づいて厳格に審査するため、少しでも内容に疑義があればそのポイントは認められません。

Q2. もうすぐ誕生日で年齢ポイントが下がります。70点を下回ったらビザは取り消されますか?

A2. ご安心ください。誕生日を迎えてポイントが70点を下回ったとしても、すぐに在留資格が取り消されるわけではありません。

ポイント計算が厳格に審査されるのは、最初の申請時と、在留期間の更新時です。在留している間に常に70点以上を維持し続けることまでは求められていません。

例えば、29歳でギリギリ70点を満たして入国し、その後30歳になって合計点数が65点になったとしても、在留期間が満了するまでは問題なく在留できます。

ただし、最も重要なのは次の在留期間更新時です。更新申請の時点で合計点数が70点に満たない場合は、更新は許可されません。ポイントが70点ギリギリの方は、年齢によるポイント減を見越して、計画的に他の項目で点数を補う準備をしておくことが大切です。

Q3. 同じ会社で働き続けていますが、業績不振などで年収が下がり、ポイントが70点を下回ってしまいました。ビザは取り消されますか?

A3. こちらもQ2の年齢のケースと同様に、すぐに在留資格が取り消されるわけではありませんので、ご安心ください。

在留している間に年収が変動し、合計点数が70点を下回ったとしても、在留期間が満了するまでは問題なく「高度専門職」として在留し続けることができます。

ただし、最も重要なのは次の在留期間更新時です。更新申請を行う時点の年収などで再計算したポイントが70点に満たない場合は、「高度専門職」ビザでの更新は許可されません。その場合は、ご自身の学歴や職歴に合った、通常の「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへの変更を検討する必要があります。

なお、これは同じ会社に在籍し続ける場合の話です。もし転職をする場合は、このルールとは異なり、新しい会社を基準に改めて「在留資格変更許可申請」を行い、その時点で70点以上あることを証明し直す必要があります。

まとめ

以上、『高度専門職』のポイントについて、また要件を満たしやすい人について解説を行いました。ハードルは高いですが、想像以上には高くなかったのではないでしょうか?
是非、心当たりのある場合は一度確認をされてみてください。

就労ビザの申請代行や外国人雇用でお困りの方、ご相談下さい。

当事務所は、出入国在留管理庁(入管)に対する、海外在住者の招へいのための手続きや、国内在留者の就労ビザへの変更の申請代行を行なっております。初回相談無料。

お問い合わせには1営業日以内に回答致します。

  • まずは、じっくりお話をお伺いさせていただきます。初回は基本無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
  • ご相談はご来所もしくはZoom等を利用したビデオ会議システムで行います。
  • お問合せ時の注意点
メールでのお問い合わせ





    【ご確認ください】

    ページトップへ戻る