【外国人雇用】自己都合退職と退職時の手続きについて

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外国人が「自己都合」で退職する場合の手続きや外国人ならではの特徴やルールは気になるところだと思います。退職する人材に対するフォローは必要最低限に抑えたいという気持ちもよく理解できます。本章では、外国籍従業員が自己都合退職する場合の対応のポイントについて解説をします。

自己都合退職とは

労働に関する法律は、基本的に国籍によって適用内容が変わることはありません。「外国人だから」という理由で差別されることはあってはなりません。しかし、在留資格をもって滞在する外国人は労働関係法ではなく入管法で制限が生じる場合があります。

自己都合退職について

「自己都合退職」とは、労働者からの申出によって労働契約を修了することをいます。多くは、転職を理由としたものや家庭の事情や健康上の理由によるものだと思います。

一方で「会社都合」とは、会社の経営状況の悪化などを原因に労働契約を一方的に解除される場合が挙げられます。退職勧奨・希望退職に応じた場合やハラスメント被害を受けた場合も「会社都合退職」に該当します。外国籍労働者は就労ビザで就労する場合は、申請前に締結した労働契約の内容で入管に労働条件を添えて申請することになります。もし、実際に働き始めて業務内容や待遇が異なる場合は、在留資格の更新が危うくなる原因にもなります。このような場合には「会社都合退職」となり得る場合があります。

外国人にとっての「自己都合退職」と「会社都合退職」の大きな違いについて

日本人の場合「会社都合」と「自己都合」の違いに真っ先に思い浮かぶものとして「転職活動時の退職理由についての説明」や「失業保険」の待機期間があるのではないでしょうか。外国人の場合は、さらに「在留資格」についてのポイントが挙げられます。

日本人と同じ内容

外国人も日本人と同様にハローワークで転職支援を受けることが可能です。また、雇用保険に加入していた場合は、条件を満たせば「失業給付」を受けることができます。

▶参考:厚生労働省『労働者の皆様へ(雇用保険給付について)

外国人特有の内容

これは、就労ビザを持って滞在している人の特徴になります。身分系の在留資格(「永住者」「日本人の配偶者」「永住者の配偶者等」「定住者」)の場合は、基本的に日本人と同様の扱いになるため以下は関係ありません。

外国人は活動目的に合わせて許可される「在留資格」を持って日本に在留しています。つまり、就労ビザを持っているのに無職期間が長いと「適切に在留していなかった」とみなされます。このため、自己都合で退職をして次の会社へ入社するまでの期間は3ヶ月以内と目安があります。
※実際に、過去に「3ヶ月と1週間」の無職期間があった場合に詳細な理由説明を求められたことがありました。

ただし、「会社都合退職」の場合は事情が異なります。「会社都合」で退職する場合は「自己都合退職」では認められない下記が認められます。

現在の在留資格のまま在留期限まで日本に在留できる
 (プラス)資格外活動(アルバイト)も認められる
・在留期限後も就職活動を希望する場合、6ヶ月間の特定活動が許可される
・帰国を希望すれば、在留期限後も90日間の短期滞在を許可される

審査要領

※2021年10月現在、新型コロナウィルスの影響で様々な特例が発表されています。特例についてはこちらをご確認下さい。

外国人は転職時の在留資格はどうなる!?

外国人も当然転職は可能です。転職時に在留資格の変更手続き(「在留資格変更許可申請」)が必要になるかどうかは、「活動内容が大きく変わるか」と「そもそも在留資格の特性」によって変わってきます。どちらの場合であっても、今まで働いていた企業が転職時の世話をする必要は基本的にはありません。

転職前と転職後で活動内容が大きく変わることで在留資格がそもそも変更になる場合

活動内容が変わる場合でも、変更が必要な場合と不要の場合があります。在留資格で認められた活動の範囲内の業務内容の変更であれば手続きは不要ですが、在留資格の範囲外での変更の場合は手続きが必要になります。

在留資格の変更が必要の場合

在留資格変更許可申請が必要な例を一つ挙げます。


【転職前】インド料理店でコック
【転職後】ITエンジニア
コックは「技能」ビザ、ITエンジニアは「技術・人文知識・国際業務」ビザになります。このため、転職後は在留資格変更許可申請が必要になります。

上記はかなり極端な例ですが、活動内容が在留資格毎に定められた範囲を超える場合は「在留資格変更許可申請」が必要になります。

在留資格の変更が不要の場合

一方で、以下の場合は在留資格の変更は不要になります。


【転職前】通訳翻訳
【転職後】ITエンジニア
通訳翻訳は「技術・人文知識・国際業務」ビザ、ITエンジニアは「技術・人文知識・国際業務」ビザになります。同じ、「技術・人文知識・国際業務」で認められる活動範囲内の変更となるため転職後は在留資格変更許可申請は不要です。

上記のように、在留資格で定められた活動の範囲内での転職となる場合は変更許可申請は不要です。

ただし、在留資格の中には在留資格の特性上、同じ業務内容を行う場合でも転職の都度「在留資格変更許可申請」を行わなければならないものもあります。この判別の仕方は次の通りです。

在留資格の特性で転職の都度、「在留資格変更許可申請」をしなければならない場合

日本に3ヶ月以上滞在している外国人は、「在留カード」を持っています。既に持っている在留資格の特性上、転職の都度「在留資格変更許可申請」が必要かどうかは、「在留カード」と「指定書」を見ることで判別できることができます。

在留カードの表面の「就労制限の有無」の欄を見ます。ここには以下の2種類の記載がされます。

  • 「在留資格に基づく就労活動のみ可」
  • 「指定書により指定された就労活動のみ可」

※身分系の在留資格の場合は「就労制限なし」の記載があり、この場合も変更申請の必要はありません。

指定書には、活動内容が書かれます。
『特定技能』の場合は、就職先・分野・業務内容が記載されます。
『高度専門職1号』や『特定活動(46号・本邦大学卒業者)』の場合も、就職先(会社名・所在地)などが記載された記載されます。

退職時に必要な手続き

外国籍人材の場合、入社時には在留資格(ビザ)の申請の必要があったりとかなり面倒な手続きがありましたが、退職時の手続きにについても確認してみましょう。

企業が行うの手続き

企業が行う【外国人特有の手続き】は下記の通りです。

・外国人雇用状況の届出
もしくは、雇用保険被保険者資格喪失届

▶参考:厚生労働省「「外国人雇用状況の届出」は、全ての事業主の義務であり、外国人の雇入れの場合はもちろん、離職の際にも必要です!」

この他に、日本人と同様に社会保険に関する離職時の届出を提出します。 退職時は意外にシンプルですね。

外国人本人が行う手続き

外国人が行う手続きは下記の通りです。

・所属機関等に関する届出手続(提出先:入管)
・(次の就職先が決まっていない場合)失業の届出(提出先:ハローワーク)
・(次の就職先が決まっていない場合)求職の申込み(提出先:ハローワーク)
・(必要に応じて)在留資格変更許可申請(提出先:入管)
▶参考:出入国在留管理庁『所属機関等に関する届出手続

外国人の場合、次の就職先が決まっていない場合は、なるべく無職期間を短くする必要があります。もし万が一転職期間が長引いてしまった場合には、入管に説明するためにも退職後速やかにハローワークで求職の申し込みをすることが好ましいと言えます。

必ずリスクヘッジを

外国籍従業員の場合、労働関係法令だけでなく入管法の影響を受けます。雇用する企業にとっても、本人にとっても、損のない/適切な対応方法が求められます。

基本的なことですが、その退職が「自己都合」なのか「会社都合」なのかを明確にさせる必要があります。そして、必ず「退職届」を外国籍従業員から受け取り、会社からも「退職証明書」を交付するようにします。
どうして退職したのかを本人の言葉で明確にすることと、在籍期間を明確にすることで不要なトラブルを避けなければなりません。(会社としては知らず知らずのうちに不法就労助長罪に巻き込まれることが無いようにして下さい。)

さらに、「就業規則」「雇用契約書」内に在留資格の特性を踏まえた退職時の規定を定めておくことも無難な対応方法だと思います。在留資格(特に就労ビザ)の特徴として、ケアすべき事項が本人に帰属する部分と会社に帰属する部分があります。雇用中に在留資格が不許可になったとしても、「会社に要因がある」「外国人に要因がある」双方が想定されます。

まとめ

以上、外国人従業員が自己都合退職した場合の対応方法について解説致しました。
企業として必ずやるべきことは「外国人雇用状況の届出」(もしくは雇用保険資格喪失届)と、日本人の同様の退職時の社会保険等の手続きになります。
雇用中に万が一在留資格が不許可になった場合についても就労規則、雇用契約書に定めておくことがリスクヘッジの方法にもなります。

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