就労ビザを初めて取得する場合は、内定出しの後に在留資格の申請を行います。実際の就業については、申請の結果が出てからになります。また、就労ビザには在留期間があるため、期限到来前に更新申請をしなければなりません。この申請は、不許可のリスクが伴います。不許可が出ると、当然働けないことになってしまいます。
本編では、就労ビザの申請において、もし万が一不許可が出てしまった場合の対応方法について解説致します。
そもそもどうして“不許可”が出るのか?
在留資格制度について
「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2022年2月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。
例えば、上記の方の場合、日本語学校の学生の間は「留学」ビザで活動します。その後、料理人になった場合は「技能」というビザに切り替えなければなりません。また、独立開業してレストランの経営者になった場合は「経営・管理」ビザを取得します。もし、将来、日本への永住を決意し一定の要件を満たしているようであれば、「永住者」ビザを取得することもできます。
在留資格の一覧は下記になりますが、言い換えると以下に当てはまるものがない場合は、日本での滞在はできないということになります。
不許可になった場合に考え得る要因は?
不許可になる要因には①「在留資格の要件を満たしていない」場合と②「今までの在留状況に問題がある」場合、③「そもそも入国が許可されない」場合の3つに分類できます。
①「在留資格の要件を満たしていない」場合とは
29の在留資格にはそれぞれ要件があります。要件は主に「誰が」「どこで」「何をするのか」といったポイントなどから構成されています。これらの要件を一つでも満たしていない場合は、「不許可」になることがあります。
例えば、「技能」のビザでコックをする場合、「10年の実務経験(=誰が)」がなければなりません。また、「飲食店(=どこで・それぞれの料理で細かいルールがあります)」で「コックをする(=何をするか)」という3つのポイントを満たさなければなりません。
この実務経験は「9年11ヵ月」では足りません。また、実務経験が「10年」あって許可を得られたとしても、コックではなく「配膳係」をすることや、インド料理のコックが中華料理店で働くこともできません。このように在留資格においては「誰が」「どこで」「何をするのか」ということが重要になります。
在留資格の要件を満たしていることは、申請者が説明する責任を負います。
入管は申請書類を見て審査をしますが、その書面から要件を満たしていることを読み取れない場合は不許可となります。つまり、実際には要件を満たしているけれども説明が伝わらなければ「不許可になる」こともあり得ることになります。
②「今までの在留状況に問題がある」場合とは
例えば、「週28時間のアルバイト」しか許可されていないのにそれ以上働いてしまう(オーバーワーク)や、理由もなく税金等を納めていない場合、また犯罪を犯してしまった場合などがあります。
特に不許可になる要因として多いものが「在留資格」で定められた範囲外の活動をしてしまうことが挙げられます。「在留資格」毎に活動できる範囲が決められています。また、(理由もなく)“活動しない”ということも認められていません。
例えば会社員なのに、無職の期間が3ヶ月以上あることや、留学生なのに学校にあまりに行かないことが挙げられます。また、ITエンジニアとして高度人材系の在留資格(ビザ)を取ったのにも関わらず、飲食店で配膳の仕事をする場合も在留資格の範囲外の活動をしていると言えます。
③「そもそも入国が許可されない」場合とは
出入国管理及び難民認定法の「第五条 上陸の拒否」に定められている事項に該当する場合を指します。
- 保険・衛生上の観点から上陸を認めることが好ましくない者
- 反社会性が強いと認められることにより上陸を認めることが好ましくない者
- 日本国から退去強制を受けたこと等により上陸を認めることが好ましくない者
- 日本国の履歴または公安を害するおそれがあるとして上陸を認めることが好ましくない者
- 相互主義に基づき上陸を認めない者
2については具体的には、法令違反をして1年以上の懲役や禁固刑などに処せられた人(政治犯罪を除く)や、覚せい剤に関しての法令違反を犯した人、売春などに関わった人などが該当します。
一度不許可になると、許可は二度とでないのか?
不許可になった理由にもよりますが、「再申請」をすることで許可を得られる可能性は十分にあります。
不許可になった場合の流れ
不許可になった場合、入管から「お知らせ」が届きます。行政書士などの代理受取が不可で、本人が来るように書かれている「お知らせ」は不許可の可能性が高いです。
よく言われていることとして、絶対ではありませんが「はがき」で来るお知らせは「許可」の可能性が高く、「封筒」で来るお知らせは「不許可」の可能性が高いものになります。
在留期限が残っている場合
在留期限内であれば在留は可能であり、再申請をすることは可能です。
在留期限内に申請し、その後在留期限が到来した場合は自動的に2か月間の特例期間に入ります。この特例期間内に必ずビザ申請の結果は出ます。
もし、学生の場合で日本の大学や専門学校を卒業した場合で、就職活動が再度必要な場合には就職活動のための「特定活動」に変更するというのも一つの手です。この「特例活動」の場合、就職活動をしながら資格外活動許可を取ればアルバイトを行うこともできます。
在留期限が残っていない場合
特例期間中に不許可になってしまった場合、不許可の理由を聞いたその場で「特定活動(出国準備)」に変更をすることになります。「特定活動(出国準備)」の場合、在留期限内に申請できる場合とできない場合があります。申請ができない場合は、帰国をせざるを得ません。
「特定活動(出国準備)」中に申請を行った場合、在留期限経過後は自動的に2か月の特例期間に入る場合とそうでない場合があります(場合によって対応が異なります)。もし特例期間に入る場合には、この期間内に必ずビザ申請の結果は出ます。不許可の理由を払しょくできていれば、許可になる可能性はあります。もし、また不許可になってしまった場合は「特定活動(出国準備)」を再度もらうことになります(これも場合によります。必ず入管の指示に従ってください)。
ここで帰国をすることになった場合、呼び寄せるための「在留資格認定証明書交付申請」を行うことができます。2回不許可になった後、一度帰国し、3回目の認定申請で許可になるような事例もたくさんあります。
再申請が可能な場合とは
再申請が可能な場合というのは「不許可の理由を払しょくできるかどうか」にかかってきます。言い換えると、何度不許可になっていても、不許可の理由が無くなれば許可を得られる可能性があるということです。
この再申請が可能かどうかを見極める大事な機会が「不許可を言い渡される場」になります。ここでは不許可の理由を聞くことができ、また質問をすることができる貴重な機会です。
再申請をして許可を得るポイントは、この不許可の聴き取りにあります。不許可の聴き取りで必ず聞くべき点は以下の3点です。
- よくなかった部分や説明が足りなかった部分を聞く
- 具体的にどの部分を改善すれば再申請が可能かを聞く
- 再申請をすることが可能かを聞く (←この部分が最も大事です)
特に、「再申請をすることが可能かどうか」を尋ねると、審査官は「一度帰国し、その後申請をしたほうがよいのか」、「在留期限内に再申請をして許可の可能性があるのか」を教えてもらえます。不許可の理由次第では、一度帰国することが望ましい場合もあります。まずはこの見極めが大事です。
不許可となってしまった場合、よくなかった部分や説明が足りなかった部分を確認し、基本的にはその部分を改善することができれば許可を得ることができます。そのため、不許可の理由の聞き取りでは「よくない部分・説明不足の部分」を聞き、「どうすればよいのか」をしっかり聞きましょう。
逆に再申請ができない場合については、3つの不許可の大きな理由である「在留資格の要件を満たしていない」場合、「今までの在留状況に問題がある」場合、「そもそも入国が許可されない」場合のうち、「今までの在留状況に問題がある」場合、「そもそも入国が許可されない」場合に該当する場合は、帰国をせざるを得ないケースがほとんどになります。
不許可を極力出さないために申請前にできること
不許可を極力出さないようにするためのポイントは以下です。
- 要件を満たしているかをしっかりと確認する
- 要件を満たしていることをしっかりとアピールする
この2点に尽きるのではないでしょうか。要件を満たしていない場合は、在留資格の申請の場合は許可は絶対に得られません。また、要件を満たしているかどうかをは申請者に説明する義務があります。入管のHPに掲載されている必要書類のリストは最低限のものです。場合によっては、要件を満たすことを示すために大量の添付資料を提出しなければならないこともあります。
特に就労ビザにおいては、不許可を減らすために申請前に在留資格についてよく理解をする必要があると言えます。
まとめ
以上、不許可になってしまった場合の対応方法について解説致しました。
不許可が出てしまっても、理由次第では再申請が可能です。不許可の多くの場合に「要件を満たしていることを入管に伝えられなかった」ということが挙げられます。不許可の理由を聴くと「申請の足りなかった部分、悪かった部分」を教えてもらうことができます。まずはこの理由をきちんと把握し、冷静に対応すれば許可を得られることは十分にあり得ます。