外国人ITエンジニア採用、面接でこれを聞けばビザ申請がスムーズになる質問リスト

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優秀な外国人ITエンジニアの採用面接。技術スキルやカルチャーフィットは申し分ないのに、後日、在留資格(ビザ)の要件を満たさないことが判明し、採用を断念…。こうした採用活動の「手戻り」は、多くの企業が経験する悩みの一つです。この種の問題は、面接段階での少しの工夫で未然に防ぐことができます。

本記事では、採用後のビザ申請をスムーズに進めるために、面接で確認すべきポイントを具体的な「質問リスト」としてまとめました。「国内新卒」「国内転職者」「海外在住者」といった状況別に、何を・なぜ聞くべきか、そして質問する際のコンプライアンス上の注意点までを解説します。

なぜ面接の段階で「ビザ(在留資格)の確認」が必要なのか?

採用面接は、候補者の技術スキルや人柄を見極める重要な場です。しかし、外国人ITエンジニアの採用においては、それだけでは不十分と言えます。なぜなら、面接は後の在留資格申請へと続く一連の法的手続きの、まさに「第一歩」だからです。この初期段階でビザに関する情報を適切に把握しておくことが、採用活動全体を成功に導く鍵となります。具体的には、以下の3つの大きなメリットがあります。

① 採用ミスマッチの防止と迅速な判断

面接段階で、在留資格取得の前提となる学歴・職歴要件などを確認することで、「スキルは高いが在留資格が取得できない」という最も避けたい採用ミスマッチを防ぎます。これにより、企業と候補者双方の貴重な時間を無駄にすることがなくなります。

② 内定後の申請準備の効率化

内定を出してから慌てて書類の準備を始めるのではなく、面接で事前に必要な情報をヒアリングしておくことで、その後の申請準備が格段にスムーズになります。特に海外在住者の場合、書類の取り寄せに時間がかかるため、早期の把握が不可欠です。

③ 候補者との信頼関係の構築

企業側が在留資格に関する手続きを熟知し、サポートする姿勢を明確に示すことは、候補者に大きな安心感を与えます。手続きへの不安が解消されることで、候補者は選考に集中でき、企業への信頼、そして入社意欲も自然と高まるでしょう。外国人の場合、企業に期待する項目に「ビザサポート」が必ず挙がってきます。内定辞退率を下げるポイントにもなってきます。

次章では、具体的にどのような点を確認すべきか、状況別の質問リストを詳しく見ていきましょう。

【状況別】外国人ITエンジニア面接での確認事項・質問リスト

採用面接は、候補者のスキルや人柄を見極めるだけでなく、その後のビザ手続きを円滑に進めるための重要な情報収集の場です。ここでは「国内新卒」「国内転職者」「海外在住者」の3つのケースに分け、面接で確認すべき具体的なポイントと質問例を解説します。「なぜこの質問が必要なのか」という意図も併せてご理解いただくことで、より効果的な面接が可能になります。

<ケースA> 国内新卒者を採用する場合

新卒採用の場合、候補者が日本で学生として真面目に生活してきたか、その「在留状況」がビザ変更の許可に大きく影響します。学業への専念度やルール遵守の姿勢が、社会人としての適性にも繋がると判断されるためです。

① 最終学歴(大卒か専門卒か)

  • 質問例: 「ご卒業予定の学校名と、学部・専攻について教えていただけますか?」
  • 確認のポイント: これは「技術・人文知識・国際業務」ビザの最も基本的な要件を確認する質問です。
    • 大卒(または大学院卒)の場合: 学歴要件はクリアしやすいため、専攻と入社後の業務内容との関連性を大まかに確認します。文系学部出身者であっても、IT関連科目の履修があれば十分に可能性があります。
    • 専門卒の場合: より注意が必要です。専門学校での専攻内容と、入社後の業務内容との間に「強い関連性」が求められます。IT系の専門課程を修了し、「専門士」または「高度専門士」の称号を得られる見込みがあるかが極めて重要になります。

② 在留状況(学業への専念度)

  • 質問例: 「学生生活についてお伺いしたいのですが、学業にはしっかり専念できていましたか?例えば、学校の出席率などは良好でしたでしょうか。(※個人情報ですので、差し支えなければで結構です)」
  • 確認のポイント: 留学生としての本文は学業です。出席率が著しく低い(目安として80%未満)、頻繁に留年を繰り返しているといった状況がある場合、「在留不良」と見なされ、ビザ変更が不許可となる大きなリスク要因となります。真面目に学業に取り組んできたかを確認する、重要な質問です。

③ 資格外活動(アルバイト)の状況

  • 質問例: 「アルバイトはされていますか?留学生の場合、法律で週28時間というルールがあると聞いていますが、そちらは守れていますでしょうか?」
  • 確認のポイント: 留学生のアルバイトは、資格外活動許可の範囲内(原則として週28時間、長期休暇中は週40時間)と厳格に定められています。これを超えて働く「オーバーワーク」は重大なルール違反であり、発覚した場合はビザ変更が不許可になる決定的な要因となります。候補者がコンプライアンスを遵守できる人物かを見極める意味でも、確認は不可欠です。

<ケースB> 国内転職者を採用する場合

中途採用で最も重要なのは、候補者が現在保有している在留資格の状況を正確に把握し、転職に伴いどのような手続きが必要になるかを判断することです。

① 現在の在留資格の種類と在留期限

  • 質問例: 「現在の在留資格の種類(例:『技術・人文知識・国際業務』など)と、在留カードの有効期限を教えていただけますか?」
  • 確認のポイント:
    • 身分系の在留資格(永住者、日本人の配偶者等など)の場合: 就労に制限がないため、ビザに関する特別な手続きは不要です。この後の確認は必要ありません。
    • 就労系の在留資格の場合: 以下のポイントに進みます。在留期限が迫っている場合は、採用スケジュールを急ぐ必要があるため、期限の確認も重要です。

② 転職に伴う手続きへの理解度と業務内容の関連性

就労系の在留資格の場合、「技術・人文知識・国際業務」かそれ以外かで入社前の必要な手続きが変わってきます。

  • 質問例: 「転職に伴う在留資格の手続きについて、何かご不明な点やご心配な点はございますか?また、前職(現職)での業務内容と、今回弊社でご担当いただく業務は、関連があるとお考えでしょうか?」
  • 確認のポイント: この質問を通じて、候補者が自身の状況と必要な手続きをどの程度理解しているかを確認し、企業として適切なサポートができるように準備します。
    • 保有ビザが「技術・人文知識・国際業務」の場合: 前職と同じ職種のITエンジニアとして転職する場合、新たに変更申請をする必要はなく、入管への「所属機関に関する届出」で済むことがほとんどです。この場合、業務内容の関連性を確認することが重要になります。
    • 保有ビザが「高度専門職1号」や「特定活動46号」などの場合: これらのビザは就職先企業を指定して許可されているため、転職する際は必ず「在留資格変更許可申請」が必要です。この点を候補者が認識しているか、さりげなく確認できると良いでしょう。

③ 納税義務の履行状況(副業の有無など)

既に働いている外国人が在留期間を更新したり、別の就労ビザへ変更する場合、学歴等の経歴以外に許可されるために重要なポイントとして「納税」があります。特に更新申請では住民税の納税が必ず確認されています。

  • 質問例: 「差し支えなければ、副業の経験や、それに伴う確定申告などについてお伺いしてもよろしいでしょうか?(※公的な義務を果たしているかの確認のためです)」
  • 確認のポイント: 近年、住民税などの納税義務を適切に果たしているかが厳しく審査されます。副業で得た所得を申告せず、納税を怠っている場合などは、ビザの更新や変更が不許可になるリスクがあります。企業のコンプライアンスの観点からも、確認しておきたいポイントです。

<ケースC> 海外在住者(新卒・転職者)を採用する場合

海外から直接採用する場合、候補者本人の経歴がビザ要件を満たしているかが全てであり、提出書類ベースで厳密に審査されます。

① 最終学歴と職歴

  • 質問例: 「ご経歴についてお伺いします。最終学歴(大学名、専攻)と、これまでの職務経歴(会社名、期間、担当業務)を詳しく教えてください。」
  • 確認のポイント: 「技術・人文知識・国際業務」ビザの学歴・職歴要件(大学卒業以上、または10年以上の関連実務経験)を満たしているかを判断する最重要項目です。この証明ができないと、採用は進められません。卒業証明書や在職証明書といった客観的な書類を後日提出してもらえるか、という点も念頭に置いておきましょう。

② 来日・就業開始の希望時期

  • 質問例: 「もし弊社にご入社いただけることになった場合、来日して業務を開始できるのは、いつ頃を想定されていますか?」
  • 確認のポイント: 海外からの呼び寄せ手続き(在留資格認定証明書交付申請)は、申請から許可まで数ヶ月単位の時間がかかります。候補者がこのタイムラグを理解しているか、そして企業の採用計画と候補者の希望時期が合致するか、双方のスケジュール感をすり合わせるために不可欠な質問です。

このほかにも企業ごとに特有の課題や確認事項があるかと思いますが、面接時の質問リストに必ず「在留資格」に関するセクションを加え、実際に起きたケースなどを追記して御社仕様にカスタマイズしていくことをお勧めします。

面接で質問する際の3つの注意点(コンプライアンスの側面から)

前章で挙げた質問は、在留資格の申請手続きを円滑に進める上で非常に有効ですが、一歩間違えると候補者に不信感を与えかねないデリケートな情報でもあります。ここでは、質問する際に企業として遵守すべき、3つの重要な注意点を解説します。

注意点①:質問の意図を丁寧に伝える

まず最も重要なのは、なぜビザに関する質問をするのか、その意図を冒頭で丁寧に伝えることです。「採用選考そのもののためではなく、もしご縁があった際に、後の在留資格手続きを私たちが万全にサポートさせていただくために、いくつか確認させてください」といった前置きをすることで、候補者は安心して質問に答えることができます。この一言が、候補者との信頼関係を築く土台となり、オープンなコミュニケーションを促します。

注意点②:差別と受け取られない配慮

在留資格に関する質問は、あくまで「日本の法律で定められた就労要件を満たすか」を確認するためだけのものです。国籍や人種、出身地などを理由に採否を判断していると誤解されるような言動は、決してあってはなりません。 質問の目的が、候補者のスキルや適性の評価とは別次元の、「入社後の法的手続きのため」であることを一貫して示す誠実な姿勢が、企業のコンプライアンス意識の高さを示し、候補者の不安を取り除きます。

注意点③:その場での安易な断言は避ける

面接官は、候補者の経歴を聞いた上で「あなたの経歴ならビザは大丈夫でしょう」といった安易な断言をすべきではありません。面接官の役割は、あくまで後の手続きのための情報収集です。 ビザ取得の最終的な見込み判断は、社内の専門部署や、私たちのような外部の専門家に委ねるべきです。面接の場での安易な発言は、万が一、後日ビザが不許可となった際に大きなトラブルの原因となりかねないため、厳に慎みましょう。あくまで「いただいた情報を基に、社内で確認させていただきます」と伝えるに留めるのが賢明です。

まとめ

外国人ITエンジニアの採用面接は、単にスキルを見極めるだけでなく、その後のビザ手続きを見据えた重要な情報収集の場です。面接段階での適切なヒアリングが、採用後のミスマッチや手続きの遅延といったリスクを減らし、円滑な入社を実現する鍵となります。本記事の質問リストと注意点を参考に、自信を持って採用活動に臨んでいただければ幸いです。 個別のケースの判断や、面接での聞き方に不安がある場合は、採用を決定する前に、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。

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