日本で就労ビザで働く外国人の家族は、在留資格『家族滞在』などで日本に呼び寄せることができます。高度専門職の場合には、配偶者がフルタイムの就労をすることや、一定の要件を満たせば親も呼び寄せることができます。家族を呼び寄せる際の基本的なビザ申請のポイントと手続きについて解説をします。
外国籍従業員の家族を呼び寄せるための要件について
就労ビザで働く外国人の扶養を受けて日本で生活する家族(配偶者や子)に与えられる在留資格には『家族滞在』や『特定活動』(告示46号の家族や特定技能の家族)があります。これらは、在留資格名は異なりますが、許可を得るための基本的なポイントは同じです。このポイントについて確認してみましょう。
家族を呼べる範囲について
就労ビザで働く外国人の「配偶者(妻・夫)」や「子」を、日本に呼び寄せて一緒に暮らすことができます。
配偶者は婚姻中である必要があります。離婚した場合や死去した場合は含まれません。また内縁の配偶者も認められません。「子」については養子(普通養子及びと特別養子)も認められます。また、婚姻する前に生まれた子どもや、婚姻後まもなくの間に生まれた子(非嫡出子といいます)も認知をしていれば「子」として認められます。また、成年していても認められます。
※在留資格『高度専門職1号・2号』の場合のみ、一定の要件を満たせば親を日本に呼ぶことができますが、代表的な家族のビザである在留資格『家族滞在』では親や祖父母を日本に呼ぶことはできません。(他の在留資格にて、両親を日本に呼んで一緒に暮らすことが認められる場合もありますが、在留資格『家族滞在』やここで解説する家族のビザは原則は該当しません。)
家族滞在を申請するときのの3つのポイント
『家族滞在』や『特定活動』(告示46号やEPAの家族や特定技能の家族)の要件の中でも絶対に外せない特に重要な3つポイントがあります。
ポイント① 結婚が成立していること(配偶者の場合)
『家族滞在』や『特定活動』(告示46号やEPAの家族や特定技能の家族)の申請の際には、結婚が成立していることが条件となります。内縁関係、婚約状態では認められません。婚姻関係が法律上有効に存続していることが必要です。
結婚の手続きは、有効に成立していれば外国のみでも日本のみでも構いません(それぞれの国の法律によります)。例えば、母国にいる家族を招聘する場合に、わざわざ日本の役所で結婚届を出すことは必要なく、母国で結婚が成立していればそれを以って招へいすることは可能です。
また、逆に日本に在留中に結婚をした場合には、日本の役所に婚姻届けを提出し受理されていれば、母国の行政機関に提出がまだの場合についても問題ありません。
ポイント② 扶養をする能力があること/扶養を受けること
『家族滞在』や『特定活動』(告示46号やEPAの家族や特定技能の家族)では、就労ビザで働く方の“扶養”を受けることが要件となります。つまり、「扶養する能力がある」ことと、「扶養を受ける意思がありその状態で在留する」ことが必要です。
よく、「どのぐらいの給料があれば許可されますか?」とお問合せをいただきますが、明確な基準はありません。それは、家族の人数や資産の状況等によって変わってくるからです。今現在の給料で日本で家族と問題なく生活できるだけの収入があれば問題ありません。
よって、言い換えると「月給25万円は必要」と言った情報は根拠のない情報と言えます。家族構成によっては「月給20万円」でも許可される場合もあれば、「月給30万円」でも不許可になる場合もあります。
また、これらの在留資格で在留する人は「資格外活動許可」を得られれば、週28時間までのアルバイトが可能です。このアルバイトの結果、就労ビザで働く扶養者の給料を超えるようなことがあれば「扶養の範囲」を超えてしまっており、「扶養を受けていない」という評価を受けてしまいます。
これは入管によって評価が異なるポイントになりますが、年収130万円を超えると住民税の課税者となったり社会保険などの基準の「扶養の範囲」を超えることになり、更新が困難になる場合も起きています。週28時間だけを守っていても、「扶養の範囲」を超える場合には『家族滞在』や『特定活動』(告示46号やEPAの家族や特定技能の家族)は認められません。
逆に、夫婦ともに既に就労ビザで在留している場合、退職などが無ければ結婚を理由に在留資格を変更しなければならないというルールはありません。現在の在留資格でそのまま継続して在留が可能な場合であれば変更は不要です。就労ビザのままで在留を継続して問題ありません。
ポイント③ 同居をすること
特に夫婦の場合には、同居をしていることが原則となります。
日本の入管は「婚姻関係」の判断基準の一つに「同居」に着目をします。同居をしていない場合には、事情を説明する必要があります。
想定される例としては、子どもを転校させることができないなどの理由で単身赴任をする場合や、大学進学のために子供が一人暮らしを始めることなどが想定されます。特に夫婦間の別居に対してはしっかりとした説明が必要になるため注意が必要です。
外国籍従業員の就労ビザに対応した家族のビザの早見表
就労する外国人の家族の呼べる範囲と、許可を得るための基本的な要件は共通をしていますが、それぞれの扶養者(就労ビザで働く外国人)の在留資格によって、それに対応する被扶養者(扶養を受けて生活する家族)の在留資格や特徴が変わる場合があります。
対応表と補足についてまとめました。
家族の呼べる範囲と在留資格(ビザ)の早見表
就労ビザで在留する外国人の家族は、基本的には扶養の範囲内で生活をします。一方で、活動制限のない身分系の在留資格や日本人の配偶者や子どもの場合は、配偶者も活動制限がありません。
外国籍従業員の就労ビザに対応した家族の在留資格(ビザ)と特徴
就労ビザで在留する多くの外国人の家族は『家族滞在』で在留することになりますが、『特定技能1号』『特定活動(46号・本邦の大学卒業者)』や就労を希望する『高度専門職1号・2号』の配偶者の場合は、選択する在留資格が変わってきます。
扶養者の在留資格 | 家族の在留資格 | 補足 |
---|---|---|
「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」、 「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、 「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、 「企業内転勤」、「介護」、「興行」、「技能」、 「文化活動」、「留学」(基準省令第1号イ又はロに該当するものに限る | 「家族滞在」 | |
「高度専門職1号」 「高度専門職2号」 | ・「家族滞在」 ・「特定活動(33号)」 ・「特定活動(34号)」 | ・特定活動(33号・高度専門職外国人の就労する配偶者)は就労を希望する配偶者が取得可能 ・特定活動(34号・高度専門職外国人又はその配偶者の親)は一定の要件下で親が取得可能 |
「特定活動(16号、17号、19号、20号、21号、22号、27号、28号、2 9号・EPA関係)」 | 「特定活動(18号、19号、23号、24号、30号31号)」 ※それぞれ対応するものを選択 | 基本的な考え方は「家族滞在」と同じ |
「特定活動(46号・本邦の大学卒業者)」 | 「特定活動(47号)」 | 基本的な考え方は「家族滞在」と同じ |
「特定技能1号」 | 「特定活動」 | 特定技能1号になる前から家族で在留していることが条件。 海外からの呼び寄せは原則不可 その他は、基本的な考え方は「家族滞在」と同じ |
「特定技能2号」 | 「家族滞在」 |
補足:身分系の在留資格や日本人や家族の在留資格(ビザ)と特徴
身分系の在留資格(永住者や定住者)や日本人の配偶者の家族の場合で、「永住者の配偶者等」や「日本人の配偶者等」「定住者」の在留資格を持つ人の場合は、活動制限はありません。このため、扶養の範囲を超える就業をしても、在留資格制度的には問題ありません。
扶養者の在留資格 | 家族の在留資格 | 補足 |
---|---|---|
永住者 | 永住者/永住者の配偶者 | 状況によります |
定住者 | 定住者 等 | 状況によります |
※日本人 | 日本人の配偶者等 |
補足① 特定技能について
特定技能の場合は、呼べる場合とそうでない場合があります。特に『特定技能1号』の場合は、既に家族として日本で生活している場合には、引き続き、日本での在留が認められる場合がありますが、新しく日本に招へいすることはできません。
一方、『特定技能2号』の場合は、その他の就労ビザ同様に家族の帯同は認められています。
在留資格『特定技能1号』の場合
特定技能1号の場合は家族の帯同は基本的には認められません。しかし、一定の条件の場合には認められる場合もあります。例えば、既に家族として在留していた場合などには、在留が認められる場合があります。
家族の帯同が認められるような場合は、下記のケースが該当します。
・中長期在留者として本邦に在留していた者が特定技能1号の在留資格に変更する以前から既に身分関係が成立しており、中期在留者として在留している同人の配偶者や子
特定技能 審査要領
・特定技能外国人同士の間に生まれた子
つまり、特定技能外国人になる前から日本に在留していて、かつ、家族で在留資格を以って在留していた場合が該当します。例えば、在留資格「家族滞在」や「留学」、「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格で夫婦ともに日本に在留していた場合に、扶養者が特定技能外国人になるタイミングで配偶者の申請を変更する場合などが挙げられます。
また、夫婦ともに特定技能外国人として働いていて、その間に生まれた子どもも帯同が認められます。
この場合は、「特定活動(告示外特定活動)」が認められます。(※在留資格『家族滞在』ではありません。)
在留資格『特定技能2号』の場合
在留資格『特定技能2号』の場合は、家族の帯同・在留は認められます。また、その場合の在留資格も1号とは異なり在留資格『家族滞在』で認められています。
在留資格『特定技能2号』の場合には、母国にいる家族であっても、特定技能外国人になってから結婚した家族であっても、帯同・在留が認められます。
補足② 高度専門職について
『高度専門職1号・2号』の場合は、優遇措置の適用によって、家族が呼べる範囲や活動可能な範囲が変わってきます。
配偶者が選択可能な在留資格は2種類
配偶者(妻・夫)の場合は、在留資格『家族滞在』と在留資格『特定活動(33号・高度専門職外国人の就労する配偶者)』の2つの選択肢があります。
在留資格『高度専門職』は、日本に積極的に来ていただき定住してもらうために優遇措置が設けられています。その優遇措置の一つに、配偶者の就労が挙げられます。もし、企業に就職する場合などでフルタイムで働くことを検討している場合には在留資格『特定活動(33号・高度専門職外国人の就労する配偶者)』を取得することでフルタイムの就労が可能になります。
この在留資格では、無制限に職種を選べるわけではありませんが、1週間の週28時間の資格外活動許可の制限無くフルタイムで就労することが可能です。在留資格『家族滞在』のように、扶養の範囲内であることも求められません。
フルタイムでの就労を希望しない場合は、その他の在留資格同様に『家族滞在』で在留することももちろん可能です。
高度専門職の場合は、一定の要件を満たせば親も呼べる
在留資格『高度専門職』の別の優遇措置に”親”の在留が認められる場合があります。“親”は一定の条件の下で、在留資格『特定活動(34号・高度専門職外国人又はその配偶者の親)』を取得することで日本で一緒に暮らすことができる場合があります。
この在留資格で親を招へいすることができる場合は、「高度専門職」で在留する者又はその配偶者の7歳未満の子(連れ子や養子を含む)を養育する場合や、「高度専門職」で在留する者の妊娠中の配偶者又は妊娠中の「高度専門職」で味流するもの本人の介助、家事その他の必要な支援を行う場合になります。また加えて、下記の要件をクリアしている必要があります。
1,「高度専門職」で在留する者の世帯年収が800万円以上であること
2,「高度専門職」で在留する者と同居する者
3,「高度専門職」で在留する者又はその配偶者のどちらかの親に限ること
「高度専門職」で在留する人やその配偶者(妻・夫)の両親を、子どもが7歳になるまで子育てを支援してもらうために日本に呼ぶことができます。この制度の注意点として、子どもが7歳になった場合には親は帰国することになります。
世帯年収は、基本的には就職している企業や、経営している企業から得る報酬(給料)が対象となります。報酬には、ボーナスや役職手当などの労働に対する対価にあたる内容は含みますが、通勤手当や住宅手当、扶養手当などは含みません。配偶者の給料は、就労資格等を取得して就労する場合に受ける報酬の年額を合算したになります。
一方で、投資などで得た利益は世帯年収には含めないため注意が必要です。
▶参考:法務省『高度人材ポイント制 Q&A』
在留資格の申請について
『家族滞在』や『特定活動』(告示46号の家族や特定技能の家族)は申請できる人やタイミングがあります。また、家族全員が海外にいる場合でも、扶養者の所属予定の企業が代理人になることで家族全員を呼び寄せることが可能です。
いつから申請できるのか
申請のタイミングは、国内にいる場合は、夫婦であれば結婚成立後、子どもであれば出生後速やかに行います。現在、海外にいる場合は、結婚成立・出生後~入国までに行います。
ちなみに、扶養者も海外にいて家族全員で同時入国するような場合でも申請は可能です(特定技能1号を除く)。日本での就労実績がなくても、扶養者の就労ビザが許可が出ていて、予定の収入から生活が十分に可能と見込まれる場合には許可は出ます。
どこでする申請なのか
基本的に申請は申請人の居所を管轄する入管、もしくは扶養者がまだ海外にいて家族同時に入国する場合には、受入れ予定の企業の所在地を管轄する入管で行います。
申請先については下記の通り 決まりがあります。
居住予定地もしくは受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署
【在留資格変更許可申請 or 在留期間更新許可申請】
住居地を管轄する地方出入国在留管理官署
地方出入国在留管理官署 | 管轄する区域 |
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札幌出入国在留管理局 | 北海道 |
仙台出入国在留管理局 | 宮城県、福島県、山形県、岩手県、秋田県、青森県 |
東京出入国在留管理局 | 東京都、神奈川県(横浜支局が管轄)、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、 群馬県、山梨県、長野県、新潟県 |
名古屋出入国在留管理局 | 愛知県、三重県、静岡県、岐阜県、福井県、富山県、石川県 |
大阪出入国在留管理局 | 大阪府、京都府、兵庫県(神戸支局が管轄)、奈良県、滋賀県、和歌山県 |
広島出入国在留管理局 | 広島県、山口県、岡山県、鳥取県、島根県 |
福岡出入国在留管理局 | 福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、 沖縄県(那覇支局が管轄) |
分局が近くにない場合には、最寄りの支局や出張所での申請も可能です。ただし、支局や出張所次第では在留資格の申請を受け付けていない場合もあるため確認が必要です。
▶出入国在留管理庁:管轄について
誰がする申請なのか
基本的には、申請人(外国人)本人が申請人の住居地を管轄する入管に申請に行きます。申請人が16歳未満の子どもの場合は、法定代理人(父母等)が代理人として申請することができます。
呼び寄せたい家族が海外にいる場合には、扶養者が扶養者の住居地を管轄する入管に申請に行くことで申請が可能です。また、申請人と扶養者が両方とも海外にいる場合には、扶養者を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者が、代理人として申請を行うことになります。
届け出を行っている「取次者」であれば、申請を代わって行うことができます。
「取次者」の例として、雇用されている・所属している機関の職員、行政書士、弁護士、 登録支援機関の職員がなることができますが、一定の研修を受けて登録された人のみになります。
申請書類・必要書類について
申請書類については、入管のホームページにも記載されています。申請書類についてもそこでダウンロードすることが可能です。
申請書類について
申請書類はこちら(認定申請・変更申請)からダウンロードできます。
必要書類について ~在留資格『家族滞在』編~
『家族滞在』の在留資格の申請する際の添付資料は以下になります。
ただし、在留状況によっていかに追加して別の書類を提出したほうがよい場合もあるため、参考程度にして下さい。
在留資格『家族滞在』の必要書類 |
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1 在留資格認定証明書交付申請書/在留資格変更許可申請 2 写真(縦4cm×横3cm) ※申請前3か月以内に正面から撮影された無帽,無背景で鮮明なもの。 ※写真の裏面に申請人の氏名を記載し,申請書の写真欄に貼付して下さい。 3 次のいずれかで、申請人と扶養者との身分関係を証する文書 (1) 戸籍謄本 (2) 婚姻届受理証明書 (3) 結婚証明書(写し) (4) 出生証明書(写し) (5) 上記(1)~(4)までに準ずる文書 適宜 4 扶養者の在留カード(在留カードとみなされる外国人登録証明書を含む。)又は旅券の写し 5 扶養者の職業及び収入を証する文書 (1) 扶養者が収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行っている場合 a. 在職証明書又は営業許可書の写し等 ※扶養者の職業がわかる証明書を提出してください。 b. 住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの) (2) 扶養者が上記(1)以外の活動を行っている場合 a. 扶養者名義の預金残高証明書又は給付金額及び給付期間を明示した奨学金給付に関する証明書 適宜 b. 上記aに準ずるもので、申請人の生活費用を支弁することができることを証するもの 【在留資格認定証明書の場合】 返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上、404円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの) |
▶参考:出入国在留管理局のHPはこちら
※高度専門職の就労を希望する配偶者や親の場合は、入管HPにて必要書類をご確認下さい。
まとめ
以上、就労ビザで在留する外国人の家族の帯同について解説しました。
扶養者の在留資格によって、家族が選択する在留資格の名前が変わる事がありますが、基本的な考え方は同じです。一部、『高度専門職1号・2号』や『特定技能1号』の場合は呼べる家族の範囲が変わることがあります。
ご自身や従業員の方が結婚された場合などに、一緒に日本で住むことができるかやビザ申請の際のポイとについての参考にしてみてください。