上記の質問について詳しく解説します。
日本で働くための2つの許可
日本で働くためには、上陸の許可と就労内容にあった在留資格(ステータス)の許可が必要です。
査証と在留資格について
まず、日本に適法に在留するためには2つの許可が必要です。
- 日本に入国をさせてもよいかの許可(上陸許可)
- 上陸後の活動内容や身分が適法であるかのステータス(在留資格)の許可
日本で生活をするためには、「上陸許可」と「在留資格の許可」が必要です。「上陸審査」は空港のイミグレーションで行われているので想像がつくかと思います。そこ(「上陸」)をパスした先に「在留」が続いていくわけでは、日本の場合、入国ができればどんな活動をしてもよいわけではなく、すでに認められている29の在留資格(ステータス)に当てはまる場合にのみ在留ができるということになります。
基本的な流れとして、先に「在留資格認定証明書交付申請」を行ってステータスの許可をもらってから、査証の申請をするというものになります。
日本で行うのが「認定証明書交付申請」
ややこしい話になりますが、「在留資格認定証明書交付申請」というものは、やらなくても査証申請することは可能です。査証申請は、在外の日本国領事館等で行う手続きになりますが、その時にステータス(在留資格)についての説明をして査証申請を行うことになります。しかし、上記の通り、査証は外務省、ステータス(在留資格)は法務省管轄で、国をまたぎ、行政官庁をまたぎ審査されること位なるので、とても複雑で時間のかかる手続きになります。
このため、先に日本でできる審査をしてしまいましょう、という考えで「在留資格認定証明書交付申請」を入管に対して行い、日本側で許可(在留資格認定証明書の交付)がされれば、在外の日本国領事館等で行う査証申請はとても楽な手続きになる、というものになります。
内定から入社までの流れ
整理をすると、先に日本で「在留資格認定証明書交付申請」を行い、許可(在留資格認定証明書の交付)がされたら、それを査証発給予定地に送り、在外の日本国領事館で査証発給を受け入国をする、という流れになります。実際の入国の条件は、さらに有効な旅券(パスポート)を所持し、その旅券に査証を受けていることになります。
在留資格の申請を行うタイミングは内定出しをしてから入社(入国)までの間になります。
例えば、短期滞在(いわゆる観光ビザ)で入国し、審査の結果が出る前に就労をさせると資格外活動違反になるため気を付けてください。また、審査期間も3週間~数カ月に及ぶ場合もあるため、申請は計画的に行わなければなりません。
上記の通り、この「在留資格認定証明書交付申請」については、(就労ビザで招へいする場合には)就労場所や条件が確定し労働契約を締結してから「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
▶参考:出入国在留管理庁『入国・帰国手続き<査証・在留資格認定証明書>』
就労ビザの「在留資格認定証明書交付申請」を申請する
就労ビザの場合、特にその中でもサラリーマンの代表的な在留資格である「技術・人文知識・国際業務」の場合で、在留資格認定証明書交付申請のための手続きの流れを説明します
まずは在留資格を確認する
「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2023年9月現在、数え方にもよりますが29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。
在留資格の一覧は下記になりますが、言い換えると以下に当てはまるものがない場合は、日本での滞在はできないということになります。
上記の就労が認められている在留資格の中から、就業条件に合った在留資格を選択することになります。よくあるサラリーマンの在留資格のなかでも、代表的な就労ビザは下記になります。
- 技術・人文知識・国際業務
- 高度専門職
- 特定活動(46号)
- 特定技能
これらの在留資格で可能な業務内容は以下になります。
また、それぞれの在留資格に該当する要件は以下の通りです。
どの在留資格も、『学歴要件』『技能試験合格の要件』『日本語能力の要件』のいずれかが課せられます。ここから【在留資格的に】要件を満たしている(=採用していい人材)かどうかを確認します。
必要書類について ~「技術・人文知識・国際業務」の場合~
わゆる高度人材・ホワイトワーカーや翻訳通訳の人材を招聘するためには在留資格『技術・人文知識・国際業務』の申請を行います。海外から招聘する際の必要書類は下記の通りです。
※下記の書類は一例になります。
必要書類 |
---|
・在留資格認定証明書交付申請書 ・写真(4cm×3cm) ・パスポートの写し ・カテゴリーを証明する書類 →前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計票等 ・登記事項証明書 ・直近年度の決算文書の写し ・申請人の学歴・職歴を示す書類(履歴書、学校の卒業証明書、成績証明書等) ・労働条件通知書 ・履歴書 ・採用理由書(業務内容を説明した書類) ・返信用封筒(404円の切手(簡易書留用)を貼付) |
▶出入国在留管理庁『日本での活動内容に応じた資料【在留資格認定証明書交付申請】』
理由書には何を書けばよい?
在留資格『技術・人文知識・国際業務』の場合、業務内容の説明を「理由書」内で説明することになりますが、要件の中でも特に審査官に伝わりにくいと言われているのが下記のポイントです。
No | 審査官に伝えにくいポイント |
---|---|
1 | 学術的素養を背景した業務であるか |
2 | 業務内容が十分にあるか |
3 | 勉強内容と業務の関連性があるか |
4 | 申請人を採用した背景について(業務を遂行するだけの能力、語学力等を持っているか) |
5 | 再申請の場合、前回の不許可理由は払拭されたか |
在留資格の審査は書面審査が原則であり、上記の内容を出された書類から判断します。
例えば、「内定通知書」や「雇用条件書」などを見て、申請人が従事する業務が「学術的素養を背景にした業務」に該当するかどうか、判断できるかというと困難な場合が多いです。このような場合には、何か補足する資料が必要になります。
「理由書」では疎明資料だけでは伝えにくいポイントを説明していくイメージになります。そして、そのポイントこそが審査官が知りたい内容になります。可能であれば、理由書の他に別途疎明資料などを添付する場合はその細く説明を書くことでより説得力が増します。
No | 理由書に書く内容 | 審査官に伝えにくいポイント |
---|---|---|
1 | 申請人について | ・どういう経歴を経たのか(学歴の説明) ・学校でどのようなことを専攻したのか(業務内容との関連性) ・保有しているスキルについて ・日本語能力について (業務内容に日本語能力が必要な場合は、従事可能であることをアピール) |
2 | 業務内容について | ・具体的にどのような業務を行うのか -1日、1週間、1年単位等の軸で分析 ・学術的素養とした業務内容がどの程度あるか ・研修計画やキャリアアップ計画について |
3 | 再申請の場合、前回の申請について | ・再申請の場合、前回の不許可理由は払拭されたか -何を指摘され、どのように解決したのか |
『理由書』は長く書けばよいものではありません。文章の上手い下手というよりも、審査官が知りたいと思うポイントを伝えることが大事です。
申請書類について
申請書類はこちら(認定申請)からダウンロードできます。
どこで申請するのか
基本的に申請は申請人の居所を管轄する入管、もしくは受入れ予定の企業の所在地を管轄する入管で行います。
申請先については下記の通り 決まりがあります。
居住予定地もしくは受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署
【在留資格変更許可申請 or 在留期間更新許可申請】
住居地を管轄する地方出入国在留管理官署
地方出入国在留管理官署 | 管轄する区域 |
---|---|
札幌出入国在留管理局 | 北海道 |
仙台出入国在留管理局 | 宮城県、福島県、山形県、岩手県、秋田県、青森県 |
東京出入国在留管理局 | 東京都、神奈川県(横浜支局が管轄)、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、 群馬県、山梨県、長野県、新潟県 |
名古屋出入国在留管理局 | 愛知県、三重県、静岡県、岐阜県、福井県、富山県、石川県 |
大阪出入国在留管理局 | 大阪府、京都府、兵庫県(神戸支局が管轄)、奈良県、滋賀県、和歌山県 |
広島出入国在留管理局 | 広島県、山口県、岡山県、鳥取県、島根県 |
福岡出入国在留管理局 | 福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、 沖縄県(那覇支局が管轄) |
分局が近くにない場合には、最寄りの支局や出張所での申請も可能です。ただし、支局や出張所次第では在留資格の申請を受け付けていない場合もあるため確認が必要です。
▶出入国在留管理庁:管轄について
誰が申請ができるのか
基本的には、申請人(外国人)本人が申請人の住居地を管轄する入管に申請に行きます。
申請人が海外にいる場合には、申請人(外国人)を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者が、代理人として申請を行うことができます。
この場合、代理人は申請書に名前を記載する代表取締役などに限らず、受け入れる機関の「職員」であれば問題ありません。また、グループ会社の人事関連業務を行う会社の職員も含みます。
一方、届け出を行っている「取次者」であれば、申請を代わって行うことができます。
「取次者」の例として、雇用されている・所属している機関の職員、行政書士、弁護士、 登録支援機関の職員がなることができますが、一定の研修を受けて登録された人のみになります。
許可が出たら
在留資格認定証明書が交付されたら、それは外国人がいる国に送り、その国の日本国領事館等で「査証申請」を行います。査証が発給されたら、飛行機で来日し、一番初めに説明した上陸審査を経て、在留がスタートすることになります。
空港や港次第になりますが、例えば成田や羽田の場合は、空港で「在留カード」をもらいます。住む場所が決まったら、居住地を管轄する市区町村役場に転入届をします。
まとめ
海外にいる外国人を日本で雇用するために呼び寄せる手続きを「在留資格認定証明書交付申請」といいます。この手続きは、入国前に受ける査証申請の手続きをとても簡単にするために、あらかじめ日本側で審査できることはしてしまおう、という意図で行われるものです。
許可がもらえると「在留資格認定証明書」が交付されますが、それを申請人(雇用したい外国人)に送り、今度は海外の日本領事館等で申請人本人が査証申請を行うことになります。その査証申請の際に、「在留資格認定証明書」を添付することで、スムーズに査証が発給を受けることができます。それから日本に入国、生活・就労が始まるという流れになります。