【質問⑤】学校で学んだことと業務内容の関連性が低い場合にも許可は出ますか?(技術・人文知識・国際業務)

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内定者の大学の専攻と、当社での勤務内容に関連性が無いのですが、これでも在留資格(技術・人文知識・国際業務)は許可出ますか?
学校で学んだ内容と業務内容の関係性は、強く関連が無ければ難しい場合とそうでない場合があります。

上記の質問について詳しく解説します。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは

「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2023年3月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。その中でも、在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、就労ビザのうちの一つになります。

「技術・人文知識・国際業務」はこういう在留資格(ビザ)

「技術・人文知識・国際業務「という少し長い在留資格名ですが、もともとは『技術』と『人文知識・国際業務』と分かれていました。日本の企業では部門をまたぐ配置転換も多々想定されることもあり、今では「技術・人文知識・国際業務」とひとつの在留資格になっています。(例えば、研究者→マーケティング部への異動や、エンジニア→セールスエンジニア(法人営業)などの異動です。)

「技術・人文知識・国際業務」で認められる活動範囲は下記のように定められております。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野もしくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動

出入国在留管理及び難民認定法

もっとざっくりに説明をすると、「技術・人文知識・国際業務」はこのような在留資格になります。

会社等において 学校等で学んだこと/実務経験を活かした 知識や国際的な背景(言語や外国の感性等)を要する(「単純作業」、「訓練で習得する業務」、「マニュアルがあれば遂行可能務」等を除く)仕事をすることを目的とした在留資格(ビザ)

勉強との関連性が必要な「技術・人文知識」/実務経験が必要な「国際業務」

そもそも、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格(ビザ)を申請できる人は、以下の条件を満たした人になります。

<「技術」・「人文知識」の業務を行う場合>
  • 従事しようとする業務について次のいずれかに該当し、必要な知識を修得していること
    • 当該知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと
    • 当該知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該終了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと
    • 10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。

「技術・人文知識・国際業務」では、大学(短大・大学院)卒業以上か、日本の専門学校を卒業した場合や従事する業務に関連する実務経験が10年以上ある場合になります。多くの方が、学歴の要件を満たしてこの在留資格を取られますが、上記の通り、「当該知識に関連する科目」でなければなりません(のように見えます。)。

<「国際業務」の業務を行う場合>
  • 申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は、感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれかに該当していること
    • 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。
    • 翻訳、通訳又は語学の指導にかかる業務に従事する場合は、大学を卒業しているもの

翻訳通訳業務の場合は、3年の実務経験もしくは大学卒業者になります通訳技法を専攻していない専門卒による未経験の翻訳通訳業務は原則NGです。

一方で、「国際業務」のカテゴリーに該当する場合は、実務経験が3年以上が必要です。もしくは、大学(短大)卒業以上であれば、実務経験は不要ですがこの場合は、外国語学部(例えば日本語学科)を卒業している必要は無く、大卒者で有れあ要件を満たします。

上記を見ていただければ分かるように、申請できる人は「大学を卒業している」・「日本の専門学校を卒業している」・「10年の実務経験がある」方になります。翻訳通訳業務の場合は、その実務経験が「3年以上」もしくは「大学卒業」以上になります。
そして、勉強したことと業務内容がリンクしている必要があります。しかし、実際には大卒以上の場合は比較的緩やかに見られている、一方で、専門学校卒業の場合は厳しく関連性を審査されています。
専門卒の方は実務経験なく「翻訳通訳業務」をすることができないため注意が必要です。

実際のところ、勉強内容や実務経験の関係性はどのぐらい必要なのか?

勉強内容や実務経験の関連性については出入国在留管理局からガイドラインが発表されています。こちらもご確認下さい。

留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン
ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について

学校での勉強内容について

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格においては、従事しようとする業務内容と大学等または専修学校において専攻した科目とが関連している必要があります。ただし、専攻科目と従事しようとする業務内容が一致していることまでは必要ではなく、関連していればよいとされています。
そしてこのルールは、大卒者と日本の専門卒者では扱いが変わってきます。

大学(短大・院)の場合

大学(短大・院)卒業の場合、勉強内容と業務内容については比較的緩やかに審査をされます。出入国在留管理庁の「入国・在留審査要領」にも下記のように記載されています。

大学を卒業した者については、大学が学術の中心として広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とし、またその目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与されていることを踏まえると(学校教育法第83条第1項、第2項)、大学における専攻科目と従事しようとする業務の関係性については、比較的緩やかに判断されることとなる。

出入国在留管理庁:「入国・在留審査要領」

繰り返しですが、翻訳通訳業務がメインの場合は大学(短大・院)卒業の場合はそれ自体で要件を満たすことになるため、理系・文系関係ありません。弊所が数多くの案件に携わる中で、大卒者の場合は「理系」「文系」のくくり程度で問題無く、場合によってもさらに幅広く関連性を認めてもらっている印象を受けます。
ただし、全く気にする必要がないわけでもないため注意が必要です。緩やかとは言え、個別審査の上、関連性が求められます。

専門学校の場合

専門学校卒業の場合は、厳密に確認がされます。
専門学校で学んだ科目で業務内容のうち関連する科目数が1,2科目では「専攻科目と従事しようとする業務内容が関連している」とはみなしてもらえません。具体的な割合までは公表されていませんがそれなりの割合の科目が関連している必要があります。

専門学校で翻訳通訳技法を中心に学んだ場合は、専門学校卒業であっても翻訳通訳業務に従事することができます。しかし、例えば国際ビジネス専門学科で学んだ科目に「日本語」とあってもその内容が日本語の会話、読解、聴解、漢字等、日本語の基礎能力を向上させるレベルにとどまるものである場合は、通訳翻訳業務に必要な日本語を専攻した者と言えないため注意が必要です。

以下はガイドラインから抜粋した「専攻科目と業務内容に関連性が認められずに不許可になった例」になります。ここからも、「文系」「理系」の枠だけでは足りず、かなり厳密に審査されることが分かります。

国際ビジネス学科において、英語科目を中心に,パソコン演習,簿記,通関業務,貿易実務,国際物流,経営基礎等を履修した者が,不動産業(アパート賃貸等)を営む企業において,営業部に配属され,販売営業業務に従事するとして申請があったが,専攻した中心科目は英語であり,不動産及び販売営業の知識に係る履修はごくわずかであり,専攻した科目との関連性が認められず不許可となったもの。

国際コミュニケーション学科において,接遇,外国語学習,異文化コミュニケーション,観光サービス論等を履修した者が,飲食店を運営する企業において,店舗管理,商品開発,店舗開発,販促企画,フランチャイズ開発等を行うとして申請があったが,当該業務は経営理論,マーケティング等の知識を要するものであるとして,専攻した科目との関連性が認められず不許可となったもの。

国際コミュニケーション学科において,接遇,外国語学習,異文化コミュニケーション,観光サービス論等を履修した者が,飲食店を運営する企業において,店舗管理,商品開発,店舗開発,販促企画,フランチャイズ開発等を行うとして申請があったが,当該業務は経営理論,マーケティング等の知識を要するものであるとして,専攻した科目との関連性が認められず不許可となったもの。留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン

専門学校の卒業生の申請の場合は、卒業証明書や成績証明書の提出だけでは足りず、業務内容との関連を証明するためにシラバス等の一歩踏み込んだ書類の提出したほうがよい場合もあります。

勉強との関連性以上に、業務内容そのものも重要

では、大学や専門学校で業務に関連する内容を学んでいれば、どんな業務でも従事できるのかというとそうではありません。
例えば、大学で調理について学んでいる場合であっても、料理人は「技術・人文知識・国際業務」の範囲外になりますし、同様に美容師の専門学校を卒業している場合に美容師になることはできません(特定活動・外国人美容師では可能性があります)。
この様に業務内容が「技能的」であったり、単純労働に該当するような業務の場合には、勉強内容と業務に関連性があっても許可を得られない場合があります。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で最も判断が難しいのはこの部分になります。この在留資格で可能な活動は「学術的素養を背景にした、一定水準以上の専門的知識を要する活動」とされていますが、非常に抽象的な表現をしています。
分かりやすく表現すると「単純作業」であったり、「マニュアルを読み訓練をすれば習得できる業務」はできません。例えば、工場で生産ラインに入って行うような単純作業、飲食店での配膳・接客・調理の業務、伝票整理などの事務作業や農作業はできません。また、一見すると高度な業務内容に見えるものでも技能的な業務(訓練によって習得できる業務)で、例えば自動車整備(自動車整備士3級レベル)や、フライス盤の操作による金属加工、精密機器の保守メンテナンスも該当しない場合があります。(※ただし、業務の本質によっては一概に技能とみなされるわけではありません)

「技術・人文知識・国際業務」で従事可能な業務としては、以下のようなものが代表例となります。

<技術>
  • システムエンジニア
  • 航空宇宙工学等の技術・知識を必要とする航空機の整備
  • 精密機械器具や土木・建設機械等の設計・開発
  • 生産管理
  • CADオペレーター
  • 研究者
<人文知識>
  • 法人営業
  • マーケティング
  • 企画・広報
  • 経理や金融、会計などの紺たる譚と業務
  • 組織のマネージャー
<国際業務>
  • 翻訳通訳
  • 語学の指導
  • 海外取引業務
  • 海外の感性を活かしたデザイン
  • 商品開発

大卒者の場合、上記に該当するような業務に従事する場合には、勉強内容と関連性がほとんど無くても許可される可能性は十分にあります。一方で、専門卒の場合は関連性をしっかりと確認されることになります。

まとめ

以上、「技術・人文知識・国際業務」で従事可能な業務内容の範囲と、勉強との関連性についてまとめました。大卒者の場合は、比較的緩やかに審査がされるなっている一方で、専門卒の場合は業務と勉強内容の関連性は求められます。
しかし、そもそも業務内容自体が「技術・人文知識・国際業務」の範囲内でなければ、例え勉強した内容に関連があった場合であったとしても、許可は得られません。

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