ワイン鑑定を行うソムリエは、在留資格『技能』を取得することで、日本で働くことができます。在留資格『技能』は熟練した人材のみが取得できる在留資格であり、実務経験や公的な資格・コンクールの出場・受賞経験などが求められます。特に実務経験の説明は気を付けるポイントが多くあります。本編では、在留資格『技能』の解説をします。
在留資格(ビザ)とは
「在留資格」とは、外国人が合法的に日本に上陸・滞在し、活動することのできる範囲を示したものです。2021年10月現在29種類の在留資格があります。在留資格は「ビザ」という名称で呼ばれることが多いです。
在留資格は、活動内容や身分(配偶者・子など)によって割り当てられています。日本に滞在するすべての外国人が、何かしらの在留資格を持っているということになります。よって、外国人は活動内容や身分(ライフスタイル)に合わせて、在留資格を変更しながら日本に滞在することになります。
例えば、上記の方の場合、日本語学校の学生の間は「留学」ビザで活動します。その後、料理しになった場合は「技能」というビザに切り替えなければなりません。また、独立開業してレストランの経営者になった場合は「経営・管理」ビザを取得します。もし、将来、日本への永住を決意し一定の要件を満たしているようであれば、「永住者」ビザを取得することもできます。
在留資格の一覧は下記になりますが、言い換えると以下に当てはまるものがない場合は、日本での滞在はできないということになります。
在留資格は、大きく3つのポイントから構成されています。就労ビザでは、この3つのポイントがリンクをしていないと許可されません。
- 誰が
- どこで
- どのような業務内容をおこなうのか
ソムリエ(ワイン鑑定等)として働くことができる在留資格
料理人として就業できる在留資格について説明します。
在留資格『技能』(ソムリエ・ ワイン鑑定等)
在留資格『技能』は、外国に特有の産業分類、外国の技能レベルが日本よりも高い産業分類での熟練技能者が取得できる在留資格です。料理人の他、外国で考案された住宅の建築、宝石・貴金属・毛皮の加工、動物の調教、外国特有のガラス製品、絨毯等の製作・修理、パイロット、ソムリエ(ワイン鑑定等)、スポーツの指導のそれぞれのスペシャリストが取得できます。
在留資格『技能』でソムリエとして業務を行う場合、下記の活動内容が認められます。
ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供に係る技能を必要とする業務
・ワインテイスティング
・ワイン選定
・仕入
・保管
・販売
・管理 等
※従事する業務は上記の一部のみでもよい
在留資格『技能』とは
在留資格『技能』がどのような在留資格であるかをこの3つのポイントから説明していきます。
ポイント①「誰が」:どのような人が申請できるのか
在留資格『技能』(ソムリエ)は、ワイン鑑定について熟練した技能を有する外国人が取得することができます。
ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供(=ワイン鑑定等)に係る技能についての5年以上の実務経験(外国の教育機関においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、次のいずれかに該当する者
出所:『審査要領』
イ)ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な規模で開催される競技会(国際ソムリエコンクール・代表例:国際ソムリエ協会主催)において優秀な成績を収めたことがある者
ロ)国際ソムリエコンクール(出場者が一国につき一名に制限差ているものに限る。)に出場したことがある者
ハ)ワイン鑑定等に係る技能に関して国もしくは地方公共団体又はこれらに準ずる公私の期間が認定する資格で法務大臣が告示をもって定める者を有する者
5年の実務経験が存在することを証明する書類は「在職証明書」になります。例えば就職先の廃業によって取得できない場合、ソムリエとして働いていたことが事実であっても、実務経験として認められない場合があります。また、必要な技能は「 ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供 」のすべてです。一部の技能しかない場合や、在職証明書からその活動を行っていたことが読み取れない場合は、ソムリエとしての実務経験に含まれない場合もあります。
ワイン鑑定等を大学等の教育機関で学んでいた期間は実務経験に含みます。この場合は、在籍期間が分かる書類と卒業証書等を提出します。
在職証明書に記載された店名や住所、電話番号等には入管から在籍確認が入ります。ここで実際と申請書の間に齟齬があれば、不許可になります。
レストラン等で、ソムリエとして5年以上勤務していたということをしっかりと申請の際にはアピールしなければなりません。
ポイント②「どこで」:どのような場所で働くのか
在留資格『技能(ソムリエ)』では、”ソムリエ”として業務ができる就業環境であることが求められます。就業場所について求められる要素について確認してみましょう。
就業環境について
抽象的な言い方にはなりますが、10年以上の“ソムリエ”による料理の提供があることが想像できるような就業環境である必要があります。最低限、飲食関連事業を行っていることが必要になります
在留資格『技能』を持つ人材を雇用するための組織について
冒頭にも説明した通り、在留資格ごとに活動できる範囲が決まっています。このため、在留資格『技能』で働く人材は“ソムリエ”として十分に活動できる環境であることが求められます。
つまり、オーナーソムリエのような経営活動を中心に行う場合や、接客や配膳も行うような特定技能人材に近い活動もできません。在留資格『技能(ソムリエ)』を持つ料理人を雇用する場合、組織にはオーナー、フロアでの接客担当が別にいることが求められます。料理を提供するレストランの場合は、調理師も別にいる必要があります。
ポイント③「何をするのか」:どのような業務ができるのか
在留資格『技能』では、「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を有する業務に従事する」ことができます。料理人の場合は、「 ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供に係る技能を必要とする業務 」になります。在留資格『技能』では、前述の通りオーナーとして経営することや配膳や会計などの活動を専ら行うことを中心に業務を行うことはできません。
在留資格『技能(ソムリエ)』のビザ申請のポイントは“ココ”!
在留資格『技能』の審査は非常に難しくなっています。理由は「熟練ソムリエ」ということを書面を以ってアピールをしなければならないからです。よって、資料が揃わなければ実際に5年の実務経験あったとしても、許可を得ることが難しくなります。
また、実務経験だけでは足りず、国際ソムリエコンクールに出場や受賞の記録又は公的なソムリエに関する資格の保持などの客観的に分かる「技能レベル」を示す資料が必要です。
アピールするポイント | 説明・立証方法 | 注意点 |
---|---|---|
申請人の過去の経歴 | ・在職証明書(5年分) ・過去の職場環境の写真 ・メニュー表 | ・見習いやアシスタント期間は含まない ・外国語の場合は日本語に和訳 |
これからの就業環境 | ・従事する事業所がどのような商売をしているのかが分かる資料 ・店舗の見取り図 ・職場環境の写真 ・提供する料理のメニュー表 | ・ソムリエとして勤務することが可能であることを十分にアピール ・既にソムリエがいる場合は、業務量のアピールも必要 |
再申請の場合、前回の申請について | ・指摘事項に対しての回答(疎明資料の提出) | ・再申請の場合、前回の不許可理由は払拭されたか -何を指摘され、どのように解決したのか |
採用から就業開始までの流れ
在留資格『技能』を持つ熟練料理人を雇用するまでの流れについて確認します。
採用~ビザ申請~就業開始までの流れについて
雇用する人材が海外にいるか、国内にいるかでフローが変わってきます。いずれの場合も、採用活動を終えて内定出し・内定承諾があった後に、在留資格(ビザ)の申請を行います。
ソムリエが海外にいる場合
まずは採用活動を行います。日本に招聘したい人材が確定したら、「在留資格認定証明書交付申請」を行います。在留資格の申請を行うタイミングは内定出し(雇用契約締結)をしてから入社(入国)までの間になります。例えば、短期滞在(いわゆる観光ビザ)で入国し、審査の結果が出る前に就労をさせると資格外活動違反になるため気を付けてください。また、審査期間も3週間~数カ月に及ぶ場合もあるため、申請は計画的に行わなければなりません。
上記の通り、就労場所や条件が確定し労働契約を締結してから「在留資格認定証明書交付申請」を行います。在留資格『技能』の場合、年々審査のハードルが高くなっています。余裕を持った申請を行いましょう。
ソムリエが国内にいる場合
国内にいる人材を採用した場合、在留資格の申請が必要な場合と不要な場合があります。
・在留資格の申請が不要な場合:採用時点で在留資格『技能』を既に持っている場合
熟練ソムリエの場合、既に在留資格『技能』を持っているケースが想定されます。この場合は、「在留資格変更許可申請」を行う必要はありません。日本人と同様の雇用の手続き(主に社会保険等)を行い、また外国人に関しては所属機関に変更に関する届け出を入管に対して行えば問題ありません。
一方、採用時点で在留資格『技能』を持っている場合は、内定(雇用契約の締結)から入社(就業開始日)までの間に「在留資格変更許可申請」を行い許可を得る必要があります。
在留資格(ビザ)の申請について
在留資格(ビザ)の申請手続きについて説明をします。
誰が・どこで行う申請なのか
外国人を招聘する場合は、申請人(外国人)本人か雇用をしようとしている機関の職員が申請人の居住予定地、受入機関の所在地を管轄する入管に申請に行きます。国内にいる人材の場合は、 申請人(外国人)本人 が 申請人の居住予定地、受入機関の所在地を管轄する入管に申請に行きます。
なお、届け出を行っている「取次者」についても、申請を代わって行うことができます。
「取次者」の例として、国人の円滑な受入れを図ることを目的とする公益法人の職員、行政書士、弁護士がなることができますが、一定の研修を受けて登録された人のみになります。
▶出入国在留管理庁:『管轄について』
必要書類
在留資格『技能』でソムリエを雇用する際に行うビザ申請で必要になる書類は下記の通りです。海外にいる人材を招聘する場合には「在留資格認定証明書交付申請」を行い、国内人材で『技能』以外の在留資格を持っている場合には「在留資格変更許可申請」を行います。
※下記の書類は一例になります。
必要書類 |
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・在留資格認定証明書交付申請書 ●/在留資格変更許可申請書 ★ ・写真(4cm×3cm) ・パスポート ★(の写し ●) ・在留カード ★ ・カテゴリーを証明する書類 →前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計票等 ・登記事項証明書 ・直近年度の決算文書の写し ・申請人の職歴を示す書類(履歴書、職務経歴書、在職証明書、過去の就業環境が分かる資料) ・就業場所のフロア図面、外観の写真、メニュー ・ワイン鑑定に関する国際コンクールの出場経験、受賞記録もしくは、ワイン鑑定等に係る技能に関して国や地方公共団体または公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるもの ・労働条件通知書 ・採用理由書(業務内容を説明した書類) ・返信用封筒(404円の切手(簡易書留用)を貼付) ● ※●=在留資格認定証明書の場合、★=在留資格変更許可申請の場合、印無し=認定・変更両方とも必要 |
▶出入国在留管理庁:『日本での活動内容に応じた資料(技能)』
まとめ
以上、在留資格『技能』のビザ申請におけるポイントを解説しました。
在留資格『技能』はソムリエとしての腕前が十分にあるだけでは足りず、実務経験5年以上、ソムリエコンクール出場や受賞などの実績のある人材を雇用しなければならず、またそのことを書面等で確認できる人材でなければなりません。採用時にはそのことも意識しなければなりません。また、雇用する環境もソムリエが腕を揮える状態である場所でなければなりません。
【行政書士からのアドバイス】
在留資格『技能』は就労ビザの中でも難易度が高い申請になります。特に重要なのが、過去の経歴の説明、これから就業する環境の説明が十分に行っていくことです。
当事務所では、ビザ申請の申請代行・サポートを行っています。お気軽にお問合せ下さい。