【質問③】外国籍社員から厚生年金への加入を拒まれました。加入させないことはできますか?

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外国籍の内定者に給与の説明をしたところ、日本に永住するつもりがないから、社会保険の加入したくないと言われました。加入しないということは可能でしょうか?
社会保険(厚生年金、健康保険)への加入は本人の意思にかかわらず、原則、必須となります。帰国後に支払った年金の一部が返ってくる「脱退一時金」についてはご存じですか?

上記の質問について詳しく解説します。

社会保険に関するご質問は当事務所では承っておりません。また、脱退一時金の請求手続きについてもお受けできません。年金事務所や社会保険労務士等にご相談ください。

“外国籍”を理由に年金を支払わないことは原則できない

国籍を理由に年金制度に加入しないことは原則できません。就職先が厚生年金の適用事業所であれば厚生年金に加入し、厚生年金に加入できない場合でも国民年金に加入をすることになります。

年金の支払いは必須

厚生年金の適用事業所に使用される70歳未満の者人は被保険者となります。20歳未満の人でも被保険者となります。
また、国籍や年齢、住所、報酬に関係なく被保険者となります。試用期間中の場合でも働いていれば被保険者となります。

年金に「加入する/加入しない」ということは、就業先が「適用事業所」かどうか、また「被保険者」に該当しうるかどうかで判断をします。「適用事業所」であるかどうかは事業の内容や規模によって決まり、「被保険者」であるかどうかは雇用の形態などによって決まります。
雇用者が適用事業である場合、事業主や労働者の意思に関係なく、事業が行われている限り法律上当然に厚生年金の保険関係が成立します。大前提として、社会保険は国籍問わず共通のルールであり、国籍によって加入するか否かが決まるものではありません。

勤め先が社会保険(厚生年金・健康保険)の適用事業所でない場合や、働く外国籍従業員の方が適用除外である場合は、「国民年金」「国民健康保険」に加入することになります。
手続きは、お住まいを管轄する市区町村の窓口でできます。

「国民年金」「国民健康保険」についても、国籍は関係なく日本に住む人であれば加入義務があります。

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社会保障協定によって例外はある

日本で働く外国籍の方は年々増えています。その背景も、海外企業からの転勤の場合や、日本で長期間働くことが目的の場合など様々です。基本的には、働いている国の社会保障制度に加入することになりますが、多くの国の年金制度では、一定期間その国の年金への加入が求められることが多いため、その国で負担した年金保険料が年金受給につながらないことがあります。
両国の年金制度への加入期間を通算することや、社会保険料の二重負担を防止することを目的に、社会保障協定を締結している場合には、特例により日本における年金を支払わなくても問題が無い場合があります。

日本は2022年6月1日時点で、社会保障協定の発効状況は、23か国と協定を署名済みで、うち22か国は発行済みです。制度の詳細については下記をご確認ください。
▶日本年金機構:社会保障協定

外国人に日本の年金制度を理解してもらう必要がある

そもそも年金制度自体がよく分からず「何故か分からないがお金を払わなければならない制度」と理解していることもよくあります。日本人にとっては当たり前でも、外国人にとっては当たり前で無いこともあります。まずは制度を理解してもらう必要があることと、もし年金受給者にならなかった場合には掛け金の一部が戻ってくる制度があることを説明をすると、理解を得やすくなります。

支払った年金が戻ってくる「脱退一時金」について

外国人は、日本国内に居住している間は、原則として、日本人と同様に年金制度に加入しなければなりません。しかし、在留期間が短い場合には、年金給付を受けるだけの保険料納付要件を満たさず、保険料が掛け捨てになってしまいます。何も給付を受けることなく帰国した場合には、「脱退一時金」を請求することができます。

脱退一時金を請求できる場合について
・日本国内に住所が無い場合
・障害年金等の給付の受給権を有したことが無い場合
・最後に年金の被保険者の資格を喪失した日から2年経過していない場合 ※要件は国民年金、厚生年金ともに概ね同じです。

支給金額については、被保険者であった期間に応じて支給されることになります。被保険者であった期間が最大60ヵ月まで計算の基礎となりますので、最大5年間の在留分について一時金がもらえるということになります。

外国人の場合、“住所が無い”という状態は、出国前に転出届を行ったり、また空港で在留カードを返却して出国(単純出国)することになります。単純出国をする場合は、職権で住民登録は無くなります。逆を言えば、社会保険を喪失した場合でも、一時帰国では住所は日本に残ったままになり、一時金の対象者とはなりません。単純出国をする場合というのは、在留を継続させないと言うことになりますので、再度、就労系の在留資格で入国をする場合には、在留資格認定証明書交付申請を行うことになります。

脱退一時金については、多言語で制度や申請についての説明がされております。
▶日本年金機構:脱退一時金(だったいいちじきん)/日本からはなれるときにもらうことができるお金/

年金を支払わないことのデメリットについて

「今」は日本で永住をするつもりが無くても、将来もしかしたら永住を検討する場合があるかもしれません。年金を支払わない、と言うことはそもそも制度によってできないことにはなりますが、もし支払わなかった場合は、永住許可の申請に大きな影響が出ます。
日本での適切な在留や、納税履行義務の審査項目には社会保険の加入や支払は必ず確認されます。永住をしない場合は脱退一時金で戻ってくるものですし、永住を全く検討しない場合には帰国後に脱退一時金を申請すればよく、永住を検討するのであれば許可のためにも社会保険の加入は必須になるので、支払う一択かと思います。

まとめ

日本では、永住するつもりが無い場合でも社会保険に加入をしなければなりません。掛け金の全額ではありませんが、「脱退一時金」という制度があり、年金の受給資格を得なかった場合には一時金を受け取ることができる制度もあります。また、年金の支払いについては日本で長く在留するためには大切なことになりますので、丁寧に説明を行ったうえで理解をいただく必要があります。

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