
在留カードの更新申請を済ませたにもかかわらず、銀行口座が凍結されてしまった——そんなご相談が近年増えています。特に生活費や給与の振込口座が使えなくなると、日常生活に大きな支障が出てしまいます。この記事では、その原因と対応策をわかりやすく解説します。本記事では、その概要と対応策、そして行政書士として支援できることについてご案内します。
在留期限が過ぎると銀行口座が一時的に使用できなくなります

最近では、在留期間満了後の外国人名義の口座が、詐欺等の犯罪に利用される事例が増加しています。これを受けて、金融機関ではリスク回避のために口座の利用を一時的に制限するケースが出てきています。
最近の相談事例と社会背景
在留期限の更新は期間満了日の3ヶ月前からできますが、在留期限までに審査が完了しないことがあります。審査が完了しない場合、結果が出る日または満了日から2ヶ月までは「特例期間」となり、従前の在留が問題なくできます。問題の無い在留にも関わらず、銀行口座が金融機関によって凍結されるということが起きています。
凍結されると、生活費の引き出しや、お給料の振込などができないといった生活に支障が出てしまっているのが現状です。
なぜ凍結されるのか?制度上の理由
在留期限が過ぎた外国人については、制度上「すでに日本を出国しているもの」とみなされるのが原則です。そのため、当人名義の口座で出金や振込などの取引が行われると、銀行側は「なりすましの可能性がある」と判断し、リスク回避のために口座を一時的に凍結することがあります。
これは、詐欺対策としての制度的な運用であり、必ずしも本人の違法行為を疑っての対応ではありません。
口座凍結の対応等について

口座凍結は外国人の中でも大きな問題となっています。この問題について警察の対応と、実際にできる対応についてまとめました。
警視庁からの通知の概要
2024年12月24日に警察庁が発出した通知では、在留期間が満了した外国人名義の銀行口座について、なりすましによる不正利用のリスクが高まっていることを踏まえ、金融機関に対し厳格な管理を求めています。具体的には、在留期限後に行われる取引については、原則として「なりすましの疑いがある取引」と見なし、本人確認ができない限り出金や振込などの取引を制限するよう要請しています。
ただし、在留期間の更新や在留資格変更の申請中であることが確認できる場合には、適法に在留していると判断され、こうした制限を解除できると明記されています。
入管の申請件数が増えたことによる混雑の影響で、在留期限までに審査が終わらないことが一部の入管では頻発しています。そのような背景を受けて、改めて警察庁が通知を出したものだと思われます。
口座凍結の対応等について
口座凍結の対応として、凍結前にできることと、凍結された後にできる対応方法について説明します。
凍結される前にできること
口座凍結を防ぐためには、まず在留期間の更新や在留資格変更の申請を早めに行うことが重要です。
申請を行ったら、在留カード裏面に申請受付印が押されているか、または(オンライン申請をした場合)には入管からの受付通知メールが届きます。これらは「申請中であること」の証拠となります。口座を開設している金融機関に対して、これらの資料を提示し、在留資格の更新手続き中である旨を伝えることで、口座凍結を回避できる可能性があります。事前にこうした準備をしておくことで、本人だけでなく、雇用主や支援機関の業務にも支障が出るリスクを軽減することができます。

【在留カード裏面の申請受付印】

【受付通知メール】
入管に申請した旨を金融機関に伝える
すでに口座が凍結されてしまった場合でも、在留期間更新や資格変更の申請を行ったことを証明する資料(在留カード裏面の申請受付印や入管からの受付通知メールなど)を準備し、口座を開設している金融機関に提示しましょう。本人確認がとれれば、取引制限が解除されるケースもあります。
また、警察庁から公式に審査中については「特段の事情」があるとして、各金融機関に対して、外国人が適法に我が国に在留していることが確認されたときは、他に特段の疑わしい事情がない限り、速やかに当該取引に応じていただくよう通知を出していることを示すのも有効かもしれません。
行政書士として支援できること

とにかくも、早めに在留期限更新や在留資格変更の手続きを行うのが第一です。
活動内容に変更がない場合で、在留期間を更新する場合には「在留期間更新許可申請」を行います。在留カード記載の「在留期限」の日の3ヶ月前から申請することが可能です。
例えば、2021年9月1日在留期限の方の場合、2021年6月15日に申請を行い2021年7月15日に「1年」延長の許可が出て新しい在留カードの交付を受けた場合、在留期限は「2022年9月1日」になります(2022年7月15日ではありません)。
つまり、早めに申請をして在留期限到来前に許可が出た場合でも、在留期限が短くなって損をするということはありません。余裕を持った対応が可能ですし、損をすることは無いため余裕を持った申請をお勧めします。
準備をどうしたらよいか分からない場合には、最寄りの入管に相談されるか、在留資格の申請手続きを行っている行政書士事務所等へご相談ください。弊所でも申請代行を行っておりますので、お気軽にお問合せ下さい。
まとめ

在留資格の変更や更新の手続き中に、在留期限が到来した場合に、銀行の口座が凍結されることがあります。こうしたトラブルは、外国人本人の生活だけでなく、雇用主にも大きな影響を及ぼします。制度を理解し、適切な対応を取ることで、多くの場合は未然に防ぐことが可能です。まずは早めの在留申請と情報共有を心がけましょう。